レゴシリアスプレイから伺えるデンマークの教育をテーマに話をさせてもらってきました
2024年10月26日(土)に、レゴシリアスプレイのファシリテーターコミュニティイベントが開かれました。テーマは、昨日、行われたグローバルミーティングの報告会でした。
当日は、会場には20名、オンラインでも18名の方々が参加されていたとのことです。私も、現地参加組の1人として25分程度で発表の時間をいただきました。
グローバルミーティングでの私の学びについては、下記のエントリーですでにいろいろと書いていたこともあり、ここからさらに25分も何を話すのがいいのだろうかと悩んだのですが。
声をかけてくれたレゴシリアスプレイのトレーナーであるローレンス佐藤さんから「せっかくなので、森本さんの北欧での体験を共有してください」という言葉をいただき、素直にその話をさせてもらうことにしました。
そこで、「私がデンマークから学ばせてもらったこと」と題してデンマークの社会の様子や、レゴシリアスプレイから垣間見えてくるデンマークの教育や文化についてお話をさせてもらってきました。
せっかくなので、私が話をした際の資料はこちらにおいておきました。
これだけでは何のことやらという部分もあるかと思いますので、少しだけ補足をしておきます。
また、これを読む方の中には、レゴシリアスプレイのファシリテーターではない方もいらっしゃるであろうということから、あまりレゴシリアスプレイに寄せすぎずに、デンマークの教育に興味があるであろう方をターゲットに書いてみようと思います。
私がデンマークから学ばせてもらったこと
当日、私が伝えたかったことをここでも改めて書くと以下のような内容になるかなと思います。
日本でもデンマークでもそうですが、その国で生活をする人たちが良い状態を維持していくためには、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが、自分がもっているニーズや状況、感情、意見を共有し合いながら、みんなが納得できる状態を話し合いによって生み出し、それに向かって進んでいく必要があります。
そのためには、教育やメディア、ジャーナリズムは極めて重要な役割を持っています。
一人一人のリテラシーを高めた上で、対話を通じて全員にとってのより良い未来を共に描きながら、時には、直接本人たちが、時には選挙を通じて代表に託し、適切な形で行動や規則をアップデートするための意思決定を行うということなしには社会の良い状態は出来得ません。
そういった観点で見てみると、日本の教育の実情については、悲しいかな、知識や答えのある問題の処理という観点ではとてもよく出来ていますが、正解のない問題に対してどのように納得感の高い答えを導くかや、異なる利害を持つ複数の人たちでの対話による合意形成を行うための教育というのは、まだまだ未熟な状態と言っていいでしょう。
また、教育と同様に、リテラシーを高めていく上でも重要な役割を担うメディアも問題は山積みです。
特にマスメディアがそうですが、残念ながら今報道されているものの大半が大谷翔平の活躍や裏金問題で。
本来であれば日本社会が向き合うべき課題に対してどのように取り組むことが良いのかという点では、重要な情報を適切に伝えることができていないと言って良いでしょう。
もちろん、これはメディアだけの問題ではなく、そういったことに興味関心を持っていない国民の問題でもあるため、一概にメディアだけを批判していればいいわけではないのですが。
この状態で、どれだけ選挙を行ったところで、良い社会を実現するために適切なアップデートができるとは思えないよなというのが私の実感です。
そういった観点から、デンマークを見ていくと日本とは対極と言っていいものがあります。
本を読んだり、現地で話を聞いたりしてきた中での見えてきたことですが、デンマークでは、小さい頃から以下のような教育を重要視し、学校に限らず、家庭や地域社会などありとあらゆる場面で行っているということです。
デンマークの教育の特徴
①異なる背景を持つメンバーでの対話による合意形成を大事にし、そのための対話力の重要視する
人は一人ひとり異なる価値観を持ち、異なる立場、状況に置かれている以上、メンバー全員が完全に納得することは難しく、現実的には、誰かが妥協しなければいけなくなります。
だからこそ、妥協をする前の対話の質が重要で、自分が望む意見が採用されなくとも、いかにその中で、少しでも納得度が高められるように話し合いを行うかを大事にします。
そのためには、時には妥協も必要で、いかにみんなで最高の妥協、セカンドベストを目指していくかを考えなさいと教わっていくのだそうです。
②対話を通じて、ルールを自分たちで作り、時代とともにアップデートしていくこと
以下の写真にあるように、時代に合わないルールや、新たに生まれてきた問題の周辺にあるものについては、みんなでその事象に批判的に向き合い、その営みとどうやってかかわっていくことが良いのかについて考えを持つための場が開かれ、そこで議論や対話を行なっていくということでした。
③一人一人が自分の特性、個性に合った形で豊かに生きていくための教育や労働に対する仕組みづくり
また日本の場合、学校空間においては、学校のカリキュラムや制度が出来上がっていて、そこに子供が入っていき、仕組みに合わされていくというやり方がとられますが。
デンマークでは、その逆で、一人一人の個性がまずあって、それに併せて、学習内容や学習のスピードが合わせられていくということです。
これは、学校だけでなく、労働環境においても同じで。「フレキシキュリティ=フレキシビリティ(柔軟性)と、セキュリティ(安全性)を掛け合わせた概念があるように、個性や状況に合わせて、一人一人が自分のキャリアを柔軟に、でも安心が保たれた状態で合わせることができるようにと社会制度を組んでいます。
そのあたりの様子は、この動画で見ることができるので、ぜひこちらも見てみてもらえたらと思います。
また、上記の動画とともに、昨日のエントリーでも紹介しましたが、私にいろいろなことを紹介してくださっているニールセン北村朋子さんの「デンマークそもそもラジオ」でいろいろと語られているため、ぜひこちらを聞いてみていただけたらと思います。
なお、こちらがニールセンさんに教えていただいたことを記事にしたもの。
デモクラシーのための認知能力を鍛える
実は上記のニールセンさんには、つい先日のグローバルミーティングの直後にもコペンハーゲン駅の中のカフェでいろいろなお話を聞かせていただきました。
その時には、これから彼女が力をいれて広げて行こうとしているデモクラシーフィットネスの話を聞かせてもらいました。
デモクラシーでフィットネスってどういうことなの?と思ったのですが、聞いてみたら、デモクラシー(民主主義)のために必要となる認知能力を高めるためのトレーニングであり、ワークだそう。
上記のnoteの中ほどにもありますが、そこで紹介されている認知能力が以下の8つ。
共感筋、深聴筋、意見筋、発言筋、反対表明筋、おとしどころ筋、まきこみ筋、行動筋
これらをみてみると、どれもこれもめちゃくちゃ重要な能力であることが容易に想像できます。これを考えた人、天才だなと思いました。また単に教育を行うだけでなく、
「きたえていきたい8つの筋肉」とし、フィットネスと表現されているのが本当に面白いですよね。
デモクラシーフィットネス、いつか私も習ってみたいなと思っています。
まとめ
ということで、日本社会には数多くの課題があるわけですが、レゴシリアスプレイは、そんな日本社会に参加する人たち誰もに、主体的であり、かつまた創造的な対話の場を生み出すことを可能とします。
いつものように呪術廻戦で言えば、日本社会を覆っている術式に対抗するための簡易領域、わかりやすくいうと特殊空間を展開することができると言っていいでしょう。まるで魔法のようなパワーを発揮する手法だなと思います。
※領域については、こちらの記事にあるので、こちらもよろしければぜひ。
また、あらためて、グローバルミーティングについてはこちらをご覧ください。
グローバルで活用されているレゴシリアスプレイは、世界中で、対話による創造的な合意形成の場を展開している素晴らしい手法であるのは間違いないのですが、その背景や前提には、デンマークの文化がかなり色濃くみて取れる点がとても面白いなと思っています。
レゴシリアスプレイが持つこのパワーを私ももっと高め広げていけるようにこれからもさらに学びを深めながら活動していけたらと思っています。
今回も長くなりましたが、最後までお読みくださってどうもありがとうございました。
参考文献、動画
デンマークの教育について、もっと知りたいという方は、ここらへんの本が参考になるので、よかったらこちらもぜひ。
あと、デンマークの話しを超えての内容になるのですが、これを読むと気になってくるかもなと思い、念の為紹介しておくと、北欧社会の特徴については、このコテンラジオがわかりやすいのでこちらも併せて紹介しておきます。
ということで、改めて、最後までお読みくださってどうもありがとうございました。
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