そこにはただ、傷ついた人がいるだけ
10年くらい前のことだろうか。
当時私は、学生の就職活動支援の仕事をしていた。
ある日のワークショップのこと。
某大学院で、「人生で大切にしたいこと」を語り合うカードワークをしていた。
「大胆かつ創造的であること」「ストレスの少ない環境であること」「富を得ること」「成長すること」などなど……「価値観」を表す文言が書いてある50枚ほどのトランプのようなカードから、自分が大切にしたいものを10に絞って、その背景やそれに対する考え・思いを語り合うというものだ。
とあるグループに近づいてみると、4人のうち3人が、トップ3の中に「国が安全であること」というカードをチョイスしていた。
「3人、同じカード選んでますね」
と声をかけた私に、そのうちの一人がこう返した。
「だって先生、もし戦争になったら、僕ら、兵隊にならなきゃいけないんで」
4人のうちの3人、そのカードを選んだのは男子学生ばかりだった。
ほかの2人も、冗談と本気が混じったような笑顔でうなづいた。
彼らは今、30代半ばになったはず。
この世界の状況を、どう観ているだろうか。
徴兵制度のある国は、国連加盟国の中では約60ヵ国あるという。
そのうち、男女ともに徴兵の対象としている国は、イスラエル・ノルウェー・スウェーデン・エリトリア(アフリカ北東部の共産国)・北朝鮮。
マレーシアも男女とも対象だが、「国防省の管理下での共同生活」なので兵役とは違う。
日本では、第二次世界大戦後の1945年、徴兵制(兵役法)が廃止されている。
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10月7日、パレスチナ・ガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾が発射され、音楽イベントに集う若者をはじめ多くの人たちが犠牲となった。
その日以降現在までも、犠牲者は増え続けている。
不勉強な私は、ニュース記事や動画などで調べるばかりで、刻々と変わる状況に胸を痛めること、微々たるものを寄付することくらいしかできていない。
※毎回こういったことがあると、最適なところを考えて寄付するのだけれど、今回はコチラにしました
その他、支援先のリストとして有効だと思ったものはコチラ↓
私ももう少し、このリストの中からチョイスして寄付する予定。とくに、イスラエルへの支援を何かしたいと思っているところ。
※イスラエルへの支援は、ガザ地区と比べて日本語の情報が圧倒的に少ないです(英語の支援窓口はいくつか見つかっています)。こちらのサイトを紹介したのは、情報の信頼性を考慮してのことです。過去に編集者をしていた人間として、記事にする前に情報の安全性を確認することが常識と知っているので、おそらく、不安なくアクセスできる情報ばかりかと想像しています
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現在、平和で幸せに暮らせている私にできることは、その環境だから稼げているお金を、少しでも分けていくことだと常に思っている。
とくに天災・戦争・子どもに関することは、なるべくできることをしたい。(毎月定期で寄付しているのは、子どもを支援している団体)
ただしできることは本当に少なくて、そのことばかりに人生を費やすこともできず、毎回その時には葛藤を抱える。
いつだって、辛い思いをするのは無辜の民だ。
本当に悲しい。
けれど、戦争の場合は、悲しいと同時に腹が立つ。
なぜなら、人間がやっていることだから。
やめることだってできるだろう、と、願ってしまうから。
襲撃を受けた集落に住む、イスラエルの平和活動家が行方不明というニュースも
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以前、トラウマに関するワークショップに出た時に、米国人のティーチャーが米兵のPTSDの話をしてくれた。
戦場で心に傷を負った元兵士が、戦後に、妻や子どもへ暴力をふるうようになってしまう。
暴力をふるわれた子どもは、心に傷を負い、また誰かを傷つけるようになる。と。
戦争は終わった。
けれど、戦争の亡霊は継承されていく。
「戦勝国」という言葉があるけれど、争いの末に勝ったとしても、本当に勝った、ということは無いのじゃないか、と、その時から思うようになった。
悲しく、腹が立つ。
そして、その後もう一度、悲しさがやってくる。
なぜならそこには、ただ、「傷ついた人たち」がいるだけなのだから。
ハマスと関係のないパレスチナ市民、襲撃を受けたイスラエル・キブツの人たち。だけでなく、今、イスラエル・パレスチナにいるすべての人たち。
戦闘をしている双方の兵士たちもすべて、傷ついている。
それを思うだけで、涙が出てしまう。
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※今回、数多くの記事や動画を観たのですが、参考までに少しだけ載せておきます。刻々と情報が増えるので、ごく一部にしますね
◎昨日アップされた、同志社大学大学院・内藤正典教授による解説。現代イスラム地域研究がご専門とあって、あのエリアの歴史に始まり「今」起こっていること、そして誤解されている通説の訂正などもあり。45分と長めですが、網羅的に理解できます。ビジネスパーソン向けのPIVOTだから最後に「今回のことをビジネスパーソンがとらえるなら……」と仰っていますが、ビジネス関係なく大事な話をされています。
(先述のパレスチナ人医師のツイート、「劣等民族の烙印」は、おそらくこの動画の中で語られていることだと想像します)
◎衝突開始翌日にアップされた古舘伊知郎さんの動画。ニュースキャスターやジャーナリストの動画ってほかにもあって、参考になるものや詳しいものもたくさんあるのですが。さすが実況中継でならした古館さん。YouTubeですが耳だけで充分理解でき、かつ臨場感があって、例えもわかりやすい。他国とのからみや思惑も紹介されており、おすすめです