エリック・ロメール
エリック・ロメールという監督に対する僕の印象は複雑で、なかなかうまく説明できそうにない。「好き?」と聞かれると即座に否定するだろう。でもじゃあ「嫌い?」と聞かれると、即座に「うん」とは言えない何かがある。
今日は早稲田松竹で「海辺のポーリーヌ」と「レネットとミラベル/四つの冒険」を鑑賞してきた。どちらも過去に一度は観ている。
ちなみに初めて観たロメール監督作品は「パリのランデヴー」だった。めちゃくちゃ期待して観たのだけど、正直そのときはガッカリした。
その後、自分が働いていた映画館でロメール特集が何度か組まれたので、色んな作品を観た。「獅子座」から「恋の秋」までの作品はおそらく殆ど観ていると思う。しかし、どうにも好きになれない。話はどれもくそしょうもない恋愛のゴタゴタ。自分語りの雄弁なフランス人たちがああでもないこうでもないとネチョネチョと語り合う。ああ、なんて鬱陶しい映画ばかり撮る爺さんなんだろう。と僕は思っていた。(好きな人はごめんなさい)
でも中には「O公爵夫人」とか「緑の光線」とか「飛行士の妻」とか好きな作品もあって、特に「レネットとミラベル/四つの冒険」は初めて観たときに「いい映画だな」と素直に思った。もう一度観たいと思いながら幾年月。初めて観たときからおそらく20年以上は経過している。改めて観直してみて、僕は「ロメール作品が好きじゃない」というよりは「ロメール作品の登場人物が好きじゃない」ということに気づいた。「レネットとミラベル」は、主要登場人物の二人が(特にミラベル)が、珍しく好印象だったので、それで僕は気に入ったのかもしれない。でもやっぱり作品としてもすごく好きだな。
「海辺のポーリーヌ」も意外と面白かった。登場人物は揃いも揃って印象の悪い連中ばかりなのだけど、一方でどいつもこいつも身近に感じられる。そんな風に感じるのは、僕もあれから色んな人間と出会って、人間として成長したからなのだろうか。あとネストール・アルメンドロスの映像はやっぱり綺麗だ。
なんだかんだで DVD を見かけると買ってしまう。エリック・ロメールはいつまでも僕にとって「よくわからないけどつい観てしまう監督」なのかもしれない。