aikoを聴いている僕
「いつも、待ち合わせしてるときってイヤホンしてるよね」
「そうだね、いやだった?」
「ううん。ただ、何聴いてるのかなーって。ほら、そういう話ってしたことなかったじゃない?だからさ」
「aikoだよ。ほら、カブトムシの」
「ふーん。あたしはそれと花火しかしらないかな」
「そうだよね、有名どころっていったらそんな感じだよねぇ」
「どこがいいのさ?あんまりよく聴いたことないんだ」
「そうだね...aikoって、失恋曲を明るい曲調で作るんだよね」
「そうなんだ。私恋が実ってる曲しか聞いたことないかな」
「カブトムシと花火っていってたよね?あれも失恋曲だと思うけどな」
「え?どういうところが?」
「カブトムシは一見。素敵な恋愛をしています。私は今幸せです。って解釈されがちだけど。僕は、『長い人生にしてみれば一瞬のことだろうけど、それでも君のことは一生忘れないよ』っていうお別れの言葉の歌って感じがするかな。もしくは、『君と恋をしている今この瞬間はとっても幸せだけど、たとえさよならしたとしても、大好きだよ』ってことなのかなぁ...」
「いや、こっちがきいてるんだけど...っていうか一曲にそこまで考えるなんて、疲れない?」
「癖なのかな。べつに聴くたびにこんな考え込んでるわけじゃないよ。ただまぁ」
「ただ?」
「これもまた癖なのかもしれないけど、そうやって曲の中の登場人物に自分をついつい重ねちゃうっていうかさ...」
「そりゃきつねちゃんの恋がひどい過去だっていうのは知ってるけど」
「ごめん」
「べつに責めてるわけじゃないんだけどさ。でも、私と付き合ってるのも君とっては長い人生の一瞬て捉えられてるのかなって思ったら、ちょっと悲しくなっちゃった」
「君のことはきちんと見てるつもりだよ。つもりなだけじゃんって言われたら、そうでしかないけど」
「前の人のこと、まだ忘れられない?」
「...ごめん」
「いやーへこんじゃうなぁ。いま付き合ってるのは私なのにな」
「別に、まだ好きってわけじゃない」
「わかってるよ。ただ、私だけをみてくれないのは、力不足感否めないなぁーって」
「うん。君のことを好きなのには、変わりない。それは誓って本当だよ」
「そうかそうか。ま、それだけ聞ければよしとしますか」
「ありがと」
「べつに。あたしって、そんなに曲も聴かないし。きつねちゃんみたいに本もそんなに読まないから。あたしよりずっといろいろ考えて生きてるんだね」
「変人なのは自覚してるけど」
「個性って言いなよ。人にはないものなんだから」
「そっか。ごめん」
「ありがとうでしょ。そこは」
「うん、ありがとう」
「はぁ。あたしもaikoきいてみよっかな。そうすれば、君が何を考えてるのか、ちょっとはわかるかもね」
「お、おすすめのやついっぱいある!」
「じゃあ、やっぱりうちきなよ、そんで頭のなかのぞかせて」
「ハンニバルか」
「なにそれ?それも説明してよね」
「むずかしいな!!!」