著者自ら、本のPVを作った話。
『京都東山「お悩み相談」人力車』という本を11月にだした。
「写真家の夢を諦めたショーケンは、車夫のアルバイトで暮らす冴えない日々。彼女にも愛想を尽かされ、面倒な新人の教育係を押しつけられた。そんな時に限って乗ってきたのは、仏頂面の令嬢や、忍ぶ恋を抱えた老婦人、人力車での告白を目論む女子と、訳ありのお客様ばかりで…。自らの将来に迷走しつつも、全力でお客様と向き合い都大路を疾走する、ちょっぴりお節介な男の奮闘を描いた青春ラプソディ。文庫オリジナル。」(あらすじより)
さて、観光人力車の車夫が主人公の小説です。観光地にいくと、威勢のよかったり、人当たりのいいお兄さんお姉さんが声をかけてきますよね、あれですあれ。京都を舞台に、観光業に従事している若者の青春を描きたかったわけです。
でも、なかなか手に取ってもらうのが難しい、と発売当初から思っておりました。面白いものは宣伝しないでも売れる、ということはあるのかもしれないけど、見つからなくてはどうにもこうにもいかない。しかもこれ、二冊目で作者に知名度がない。悲しい〜。なのでどうにかこうにかPRしなければならん、と思ったのです。
文庫っていうのは毎月のようにばんばん出るので、よっぽど目立つものやパンチのあるものでないと、翌月の新発売の本に追いやられてしまう。そうなると、うまくいったら棚に一冊差しておいてもらえるが、すべて返品だ。本屋でみかけることがなくなる……。
一昨年に初めての本『熊本くんの本棚』をだしたときのことだ。Twitterで「『熊本くんの本棚』気になるけど本屋にないから買ってない。ネットでは買わない主義」という呟きを見た。そうなんだよねえ、本屋にないとねえ、と同時に、「だったら本屋さんで注文してくださるとすぐにきますよ〜」と返信したくなったが、やめた。さすがに悪いしなあ、と思った。押し売りみたいになるし。まあこれは「本屋さんに注文してください〜、販売履歴つきますしありがたいです〜」というアピールである。世知辛くてすまない。
そして『京都東山』は発売三ヶ月を経過した。一部の本屋さんでおすすめをしていただき、面陳していただいている、が、ほとんどの本屋さん表紙を見かけることはない。このまんま、あまり読まれないのはなあ。続きを書きたいけれど、出版社だって慈善事業ではないので、売れない本の続きを書かせてもらえるようなことはない。というわけで、なにかしなければ、と焦ってきた。
いまさらだけれど、動画に興味を持ち出してきた。自分で動画をアップするために地味にいろいろなサイトをみていた。動画配信っていうのもかなり大変な世界であるということがわかった。なんとかチューブ(ってぼかしてもまんまだけど)、登録者数千人にならないと〜とかいろいろ広告収益を目指すのにもハードルがある。こりゃ大変だわい。まあ趣味でやるんだから気にしないでもいいけど、とかなんとか思っているとき、Twitterであるものを見た。
それは、売れ筋だか出版社一押しだかの作家さんの新刊のお知らせだった。
「PVを作りました!」
そこには表紙やらあらすじやらを動画にしたものが映っていた。いいなあ、こういうの。出版社さん作ってくれないかな。でもま、そこまで知名度のない作家に予算なんてかけられないだろう。そもそも発売から三ヶ月たち、このくらいの売れだった、と出版社側はわかっている。しかし、このまま策を講じないのはいけん、いけんぞ!
素材はいくらでもある。京都に取材に行きまくったのだ、この本を作るために。ざっくりいうと、印税分以上、取材に費やしている。つまり、PVを作るだけのものは、いま僕のスマホのなかにある。僕は決めた。自分でPVを作る、と。動画編集ソフトやアプリを購入しようと思ったとき、忘れていることに気づいた。アイフォンの中に「iMovie」があるではないか!? iMovieは動画編集をするのにちょっと物足りないといわれているが、そもそも僕は作ったことがない、たくさんの可能性があったとて、いまの自分では可能性が怯ませる。とくによくわからないまま、初めて僕はiMovieをタップした。そして、説明書も大して見ずに、動画編集を始めた。
こうしてできたのがこのPVである。勢いで最初に投稿したときに、ちょっとしたミスをしてしまったので、改めてあげました。最初のPVは1500再生、この決定版? は現在1000PVを超えた(2021年2月26日現在)。まあ多く見られているかといったらたいしたことはない。このPVを作るきっかけになった、出版社一押しの新刊なんて一万くらい見られてたし。でも、しろうと感丸出しの『京都東山』PV、これだけの方が見てくださったことにただただか感謝である。そしてこのnoteを読んでくださった方、Twitterやってらしたらリツイートお願いします! といいたい(おねだり)。
本の一番のCMとなるのは、読んでくださった方の感想である。面白かった、とSNSに呟いていただくと、それを見た人が興味を惹く。では読んでもらうために、どうしたらいいのか。やっぱり、見つけてもらうためにこちらも努力するしかない。
ちょっと面白い小説、ありますんで、どうか手にとっていただけたら嬉しいです。どうぞよろしく。
本屋さんでもネットでも、ぜひ。
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