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小学生に生成AIを教える授業-AIリテラシー教育の最前線-
こんばんは!
最近は教育と生成AIについて書いています。
前回、前々回はこんなことを書きました!
前回までのあらすじ
・生成AIを使うと学習効率が何倍にもなる
・でも子どもの教育に関しては、ただAIを使えばいいわけじゃない
・AIとの付き合い方を間違えると、AIの使い方は上達するが、子どもの思考力は育たない
・AIの使い方が上達すると、思考しなくても提出物の完成度が上がるので快感を感じる
・AIの使い方ではなく、AIとの向き合い方を子どもに教えることが重要
今まで(AIが開発される前まで)の勉強は、
・生徒の思考力=提出物の完成度=成績
という関係でした。でもこれからは、
・生徒の思考力+生成AIのスキル=提出物の完成度=成績
という関係になります。
学校でAIを禁止しても、バレずに使う方法はいくらでもあるので、この流れは変えられません。
そして…AIの使い方は簡単に身につきますが、思考力を鍛えるには読解をしたり文章を書いたり、地味で負荷の高いトレーニングが必要です。
ということは、AIの使い方ばかりうまくなって、自分の頭で考えなくなる子が増えるのが自然だよね…というのが、前回までに書いた内容です。
教育現場の危機感
この危機感は他の教員の方たちも持っていて、生成AIを学校でどう教るべきかの議論が少しずつ始まっています。
その中で最先端の実践をされているのが、東京学芸大学附属小金井小学校の国語教諭である鈴木秀樹先生です。
今日は、鈴木先生の実践の中で、教育関係以外の方にも分かりやすそうな授業を紹介します!
小4の授業:生成AIに感想文を書かせる
この授業の流れはこうです。
1.AIに「ハイキングに行く時の注意点」を書かせる
2.AIに、児童が知らない文章(海辺のカフカ)の感想文を書かせる
3.AIに、児童が知っている文章(国語の教科書の文章)の感想文を書かせる
この授業の何がすごいのか、次の章で解説します。
体験を通して・感覚で、AIの仕組みを理解する
この授業のすごいところは、生成AIの仕組みを教えていないのに、仕組みが分かってしまうところです。
1→3の流れを通して、AIの仕組みが感覚的に理解できるようになっているんですね。
①AIの文章作成能力はすごい!
まず1と2で、児童は生成AIのすごさを実感します。
自分たちでは書けないような文章を、5秒くらいで作ってしまうからです。
②でも「考えている」わけではなさそう…?
でも、児童は3で疑問を感じます。
実はこの感想文、内容がめちゃくちゃなんです。
「白いぼうし」の主人公は女の子ではなくてタクシーの運転手ですし、夢を追いかけてもいません。
児童は授業で「白いぼうし」を読んでいます。
なので、
「この文章はめちゃくちゃだぞ!ということは、さっきの『海辺のカフカ』の感想文もすごそうに見えたけど、本当はデタラメなのかな…?」
のように、AIへの違和感を直感的に感じられる構成になっているんですね。
小学生にも生成AIを教えられる
実は、発達段階的に、小学4年生に生成AIの仕組みを理解させることは不可能なんです。
AIの仕組みを理解するために必須の「確率」の概念は、小学6年生で習います。これは文科省が定めたカリキュラムで、科学的な根拠があります。
つまり、脳の発達的に、小学5年生以下の平均的な子どもが生成AIの概念を理解することは、ほぼ不可能なんですね。
普通の方法では、小学生に生成AIを教えることはできない。
鈴木先生はこの問題を解決するために、理屈ではなく、体験を通してAIを教える方法を研究されています。
「生成AIってこんな奴なんだな。ということは、こういう距離感で付き合わないとな」
という、向き合い方を教えているんですね。
「使い方」ではなく「向き合い方」を教える。
これが子どもに生成AIを教える時のキーワードになると、私は思います。
次回の記事ではそのことについて書いて、この連載を終えようと思います!