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「AI依存症」が現実になる日


10/12追記:もう起きているAI依存症

キングコングの西野さんが面白い話をしていたので追記します!
3つ目のチャプター(白熱教室)で、「アートの分野では、すでに生成AI依存症が問題になってるよ」という話をされています。

・もともと絵が得意でなかった人が、生成AIの誕生ですごく上手い絵が描けるようになった

・でも今はAIで描いた絵は陳腐化したので、もう価値などない

・にも関わらず、生成AIで絵を描くことから抜け出せない人が増えている。これは「AIアートへの依存症」だ。

・AIアートは「手段」であって「アウトプット(成果物)」ではない。ハサミや包丁みたいな「道具」。

・「道具」を成果物として出しても意味はないのに、生成AIで絵を描き続けることから離れられない人が増えている。
これを西野さんは「AIゾンビ」と呼んでいる

アートの分野では、すでに生成AI依存症が問題になっているんですね。
この問題は教育の世界で、文章の分野でも確実に起こります。

どんなことが起こるのか、この記事を読めば分かります!


-ここからが本編です-

こんばんは!今日は前回の記事の続きです。
ちょっと怖いタイトルですみません!

前回の記事では、

・生成AIを使うと学習効率が何倍にもなる

・でも子どもの教育に関しては、ただAIを使えばいいわけじゃない

・AIのことを理解せず使い方ばかりうまくなると「どこまでが自分の力で、どこからがAIの力か」が分からなくなってしまう

という話をしました。
生成AIは使わないと学力格差が広がっていくけど、使い過ぎても弊害が大きいんですね。

具体的にどういうことなのか、中2で習う春はあけぼのを例に説明します。

宿題:「春はあけぼの」の感想を書きなさい

中学2年生に「『春はあけぼの』の感想を書きなさい」という宿題が出されたとします。
もしAIを使ってこの宿題をやったら、どうなるでしょうか?
実際にやってみます。

中学生: 「春はあけぼの」のあらすじを説明してください。

ChatGPT:「春はあけぼの」は、清少納言が四季の美しさを感じた瞬間を描いた有名な部分です。
(中略)
清少納言は四季の美しさをよく観察して、自分の感じたことを素直に書いているんです。

中学生:清少納言は宮中の政治争いに巻き込まれていましたよね。彼女の状況が、この随筆に影響を与えた可能性はありますか?
(↑授業で習った情報ををそのまま入力したとする)

清少納言は藤原定子に仕えていました。当時、宮中では藤原氏の権力争いが激しく、その中で定子の立場も危ういものでした。

清少納言の美的感覚や自然の描写は、こうした宮中の複雑な状況からくるストレスや不安からの逃避や、心の安らぎを求める一つの表現だったのかもしれません。

中学生:清少納言の立場と「春はあけぼの」の関係について、200字以内でまとめてください。

清少納言は藤原定子に仕え、政治争いに巻き込まれる緊張した環境にいました。このような宮中での厳しい現実から離れたくて、自然の美しさの中に心の平穏を求めたからこそ、彼女は鋭い感覚で自然をとらえることができたのかもしれないと思います。
このように、清少納言が独特で鋭い美的感覚を持っていた理由は、宮中での彼女の立場が影響しているのかもしれないと思いました。

↑ChatGPTの作った文章に少し手を加えたもの

10分で宿題が完了しました。
標準的な中学校なら、最高レベルの評価がつきそうです。

どこまでが自分の力で、どこからがAIの力か?

提出物としては上の文章ができあがったわけですが…これって、どこまでが本人の力で、どこからがAIの力で作ったものなんでしょうか?
よく分からないですよね。

これ、やってる自分としては、とても気持ちがいいんです。
「俺こんなに鋭い視点から文章が書けるんだ!すごい!」
みたいな感覚になるんですね。

でも…文章を書く時に一番頭を使うのは↓の「思考」の部分なんです。

情報①:清少納言は宮中の争いに巻き込まれていた
情報②:清少納言は独特の鋭い美意識を持っていた
情報③:「春はあけぼの」は、独特の視点から自然の美しさについて書かれている

思考:①~③の情報を関連付けて、いい感想文を書きたいな。
どう関連付けたらいいんだろう? 

↑ここで頭を使うことで、思考力が鍛えられる

今回の使い方だと、この「どう関連付けたらいいんだろう?」の部分をほとんどAIに任せちゃってるんですね。
子どもはAIに情報を与えただけです。

そのため、このようにAIを使っても、子どもの思考力はほぼ向上しません。

頭が良くなったと錯覚してしまう

でも、アウトプット(=出来上がる文章のレベル)という面で見ると、AIの使い方が上達するほどいい文章が書けるようになります。

AIスキルの上達とアウトプットの向上が結びつくので、子どもはどんどんAIを使いたくなります。

でも、これが進んでいくと…AIの「使い方」だけがうまくなっていきます。

つまり…

  • 思考力は育ってなくて、AIの使い方が上達してるだけなのに

  • 完成物の質は上がっていくので

  • 本人は思考力がついてると錯覚する

という状態なります。
大人ならここをいくらか自覚できますが、メタ認知の育っていない子どもがここを自覚するのは無理です。

結果的に、AIのサポートが無いとうまく思考できない状態…つまりAI依存症になってしまいます。

教育業界はAI化が進んでいます

私は一時期、ベネッセ学研ナガセ(←四谷大塚や東進ハイスクールの運営会社)など教育大手の株主向け資料を読み漁っていたんですが、どこの会社も「これからはAI活用に全力を注ぐ!」と宣言しています。

つまり、塾や予備校はこれからAIサービスをどんどんリリースし始めます。
そのため、お子さんがどのようにAIを使っているのか、保護者の方は細心の注意を払うべきだと思います。

おそらく5年後くらいには、子どものAI依存症が社会問題になっていると思います。

AIの使い方を教えても、依存症は解決しない

私は、小中学校の授業で生成AIを活用すべきだと思っています。

AIリテラシーの教育を各家庭に任せてしまうと、YouTubeやネットの「こうやって使うと成績が上がる!」のようなヤバい使い方をしてしまう子どもが、数十万人単位で出てきてしまうのが目に見えているからです。

これは、これまでの性教育やネットリテラシー教育の歴史を見ても明らかですよね…。


このことを友人の教員に話すと

「それって、学校で生成AIの『使い方』を教えるべきだってこと?」

という返事がよく返ってきます。

違います。
AIの「使い方」を教えても、この記事で書いたような依存症を生むだけです。

では、学校でAIの「何」を教えればいいのか?
次の記事では東京学芸大学附属小金井小学校 ※ の授業を紹介しながら、その答えを説明します!

※…文科省の「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン(2023年7月)」を改訂(2024年内の予定)するための委員会に、小中学校の教員としてただ一人(≒現場の先生たちの代表として)参加されている先生がいらっしゃる学校です。

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