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ブランド・商品コンセプト案が持つポテンシャル(スケール)はどうやって判断できる?

前回(https://note.com/kirikuchi/n/nad4e4f7e8531) のインサイトの話で、『そのブランド・商品を愛用している、実在するユーザーの中の「外れ値」的な行動・考え方が、その商品・ブランドの魅力を新たに引き出すものにもなり得る』ということを書きました。

その実在するユーザー、N1の話をすると、
「そうは言っても、それってその人にしか響かない、スケールしないものなんじゃないの?」
というような疑問の声を聴くこともよくあります。

例えば、ボストンコンサルティンググループの元日本代表、早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏は2006年の「仮説思考」https://amzn.asia/d/cf70Sde という本の中で、仮説の検証方法として以下を挙げています:

  • 実験:実際に小規模で試してみる

  • ディスカッション:その仮説を社内外の人にぶつけ、反応を見て必要な修正をしていく

  • 分析:まず最小限の要素をざっくりとした形で「クイック&ダーティー」に、その後本格的に定量的に分析していく

ただこの本はコンサルの方が書いたもののため、企業全体の売上・収益改善やB2B企業の自社既存製品・サービスの販売改善、というようなことを主対象と想定しているようで、B2Cのメーカーでの新商品開発・リニューアルなどにこれを当てはめようとする場合には、以下のような課題が出てきます:

  • 実際にその商品を開発し販売できる形までにすることにはかなりの時間と労力と費用が発生する(「実験」とは言えないほどの投資が必要)
    ※新商品製造にそれほどの時間・費用が発生しない場合を除きます:
    例えばまるか食品の「ペヤング」の様々な味のバリエーション商品は、麺そのものや容器自体の変更を必要とせず、小袋のソースと容器を包むシュリンクパックのデザイン変更だけで済むので比較的に「新商品」を手掛けやすいと思われます

  • 自社で実験をしようと思ってもその商品を販売している流通側の同意を得て実施するのは簡単なことではない(=「なんで売れるかどうかわからないものに私らが協力しなければならないのか?」と言われる可能性)

  • 自社ECサイトを持っている場合、そこでテスト販売はできるものの実際に市場に出した時に同様の反応が得られるかはわからない(自社ECに来る人はファンが中心)

  • (「Makuakeに出品して実際に購入してくれる人がいるのかをみる」という手法はあるが、それでもいきなり実際の商品を小ロットで開発製造する必要があり、費用・投資的な課題は残る)

  • 社内外の人とディスカッションをしても、実際に消費者に受け入れられるのかに関しての結論は出ない

  • いまの状態のままで定量分析ができるのは経営や製品売上の問題点の分析、という視点でのもので、新商品やリニューアルには適さない

B2Cの新商品やリニューアルの場合、(実際に開発・製造する前の)初期段階での可能性の確認方法としてはその商品コンセプトを作成し、消費者に提示して興味・好意度・購買意向を聞く、という手法はよく用いられます。
ただその調査によって聞いた興味・好意度・購買意向と、実際の行動・購買とはギャップがある(調査では「絶対買う!」と言っている人の多くは実際には買わなかったりする)というのも事実で、この調査を行っても参考にならない、ということも多々あります。


そんな時におススメしているのが、
「(N1の考え方・行動にヒントを得た)ブランドや商品コンセプト数案と、既存の競合他社複数のブランド・商品コンセプト(※商品名は伏せる)を同時に定量調査にかけ、興味・関心や購買意向を聞く
ことです。

ある意味シンプルで当たり前の話なのですが、「既存商品のコンセプトと同じ条件で比較することで、実際に製造・販売した際の相対的なポテンシャルを判断することができる」というわけです。もちろん、この場合、以下の条件が大前提となります:

  • その商品コンセプトに沿った(消費者が「イメージした通り!」と思ってもらえる)商品が製造可能

  • 流通の配荷率・価格等はその競合商品と同等レベル

  • 商品のパッケージでもその「独自性のある便益」がしっかりと伝わる

ただしこの場合、それぞれの商品コンセプトは回答者には「読んだだけでその特徴や便益がわかる」もので、各コンセプトが同じ条件で作られていることが大切です。

「こっちのコンセプトの方がわかりやすいからこれを選んだ」とか「あれは色々いいことが書かれているけど、これは一つしか書かれていないからあれの方が魅力的」とかいうような異なる条件で書かれたコンセプトではフェアな比較とはならず、調査結果もそのバイアスがかかったものとなってしまいます。

ではそのような、複数の商品コンセプトをそれぞれわかりやすく、しかもフェアに書くためにはどうしたらいいのか?
これはまた次回のお楽しみ、とさせていただきます!