【どうぶつほらばなし】浦島(『ねこにまつわる10のはなし』より)
浦島
箱の中から吹き出す白煙に全身を包まれた太郎。
すっかり煙が去った後そこに立っていたのは、腰の曲がった白髪の老人だった。
太郎が亀を助けたあの日から、百年の月日がたっていた。
これは、なんの罰なのだろう。
この罰に見合う罪を、私が犯したということなのか__。
にわかに遠くなった目で呆然と海原を見つめていた太郎の手がふいに重くなる。視線を手元の箱に移せば猫。どこからか走ってきた猫が空箱の形に四角く収まり、だまってこちらを見上げていた。
何故猫が玉手箱に入ってきたか。