【感想文】「老人ホーム デスゲーム」(秋谷りんこさん作)を読んで
秋谷りんこさんの小説「老人ホーム デスゲーム」を読みました。
老人版バトルロワイヤル、とでも言いましょうか。
「殺すとその人の寿命を奪える」という設定が斬新でした。
語り部は職員のタロウ(犬)。
すみません……てっきり私、最初はヒトだと思っていました。佳境に入ったとき「あれ?」となりまして、一回目読破後すぐに再読してようやく腑に落としました。前の職場のことが語られていたので、ハルト達と同じだとばかり思い込んでいたんですね。
この小説はすごいところがあります。「読むと必ず浮かぶ疑問が出てくる」ところです。
私は「もしも人の寿命を奪いすぎたらどうなるんだろう?」と感じました。
作中では、殺めてしまった入所者さん達が若返っています。その影響で認知機能が改善していますし、本来であれば「殺した」罪悪感でいっぱいになるはずです。正当防衛だったとしても拭うことはそう簡単ではないでしょう。
ですがただ一人、殺しを止めなかった入所者さんがいます。トメさんです。
人生の半分を介護に捧げた苦労人は、何を思って仲間達を手にかけていったのでしょう?
若作りに欲張ってしまったから?
自らの運命を呪ったから?
一人ぼっちに堪えられなかったから?
生まれ変わりたかったから?
少なくとも私は、若さを欲したからではないと考えています。他の入所者さん同様に認知機能が回復したとするなら、彼女もまた何かしらの目的があったのではないかと推察します。
全体的な感想としては「どんな経験をしても衝動的な殺意は抑えられない」の一言に尽きます。
人の命を奪うことは決して許されることではありません。しかし、命より大切なものが危機的状況に陥ったとき……「命をかけなければならない」と結論付けるのかもと感じました。
結局みんな守るために命を軽視しがちになるのは「自分に対する殺意」も含まれているのかなぁとも思ったりしたんですよね。「対価」なのか「生命」なのか、単位次第で意味合いが大きく変わっていくのもなかなか興味深かったです。
余談ですが、ツムギさんのそそっかしさに親近感を覚えました。
マジで自分のことで手一杯になるので、その気持ちとても分かりますよ。本当に。
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