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〈三春町への旅2024〉八雲神社祭礼の荒獅子②獅子の魅力は比べるものではなくて

7月14日(日)の田村大元神社祭礼の長獅子に続き、7月26日(金)、福島県三春町の八雲神社祭礼に奉納される荒町の荒獅子を見に行きました!

同じ三春城下に伝わる獅子舞でも、雰囲気が違うのでしょうか? 新町の田村大元神社に参加されていた氏子と思しき方は、「長獅子の動きは俺たちのほうが激しいからね」とチラリとライバル心をのぞかせていましたが、果たして…?

観客をかき分けるようにして、荒獅子登場!

荒獅子の到着を待つ間、結構きつめの石段(段数はさほど多くはないのですが)を登り、八雲神社に参拝した後、露店が並ぶ商店街をぶらぶらと、お祭りスナップを撮影していたら、笛の音色がかすかに聞こえ、人びとのざわめきが大きくなってきました。

荒獅子キターーーーー!!!!!

若連の皆さんが荒獅子が観客に近づき過ぎないよう先導する中、体をくねらせ、人並みをかき分けるようにして、荒獅子登場!

観客との距離が近い!
やっぱり怖いお顔
獅子頭を高く掲げ、吼える荒獅子!
荒町の若連の祭り半纏

途中で、厄祓いのため、観客の頭を「カパッ」
中には、荒獅子の姿を見ただけで泣き出すお子さんも…(だって怖いもの)

私が感じた新町の長獅子との違い(あくまで印象)

田村大元神社の祭礼に奉納される長獅子を見に行ったとき、新町の氏子の方と思しき方は、「荒町の荒獅子より、新町の長獅子のほうが動きがある」とライバル心をちらつかせていましたが、どちらもすばらしかったです。

新町の長獅子の魅力は、激しい突進。
その場でぐるぐる回り、いななくように獅子頭を掲げ、「カパカパカパ!」と口を鳴らし、「カシラー!」と呼ぶ先導する若連に向かって、激しく突進していきます。それを若連が受け止めて、「まだまだまだー」と挑発する感じに見えました。

荒町の荒獅子もぐるぐる回り、周囲の若連目掛けて突進していきますが、動きが優雅だと感じました(これは周囲に観客が多かったせいもあるかも?)
それから、獅子頭を持つ人が舞うように中で太ももを高く上げて、ちょっとスキップのような感じの動きをしていました。ぐるぐるまわって、獅子頭を高く掲げて、カパカパするのは同じ(獅子頭は荒町のほうが高く上げているかも?)それを若連がなだめます。

印象的だったのは、荒獅子と観客との一体感。八雲神社の鳥居をくぐろうとする荒獅子を若連が何度も押しとどめ、観客も一緒に「まだまだまだー」と声をかけます。

荒獅子自身は鳥居をくぐりたいけれど、周囲の人に押し戻される感じ。

若連の中に盛り上げ上手な方がいて、拡声器を持って観客に「下がってください」と誘導したり、「今から鳥居をくぐります!」と盛り上げたりしていました。この方が一体感を作り出していたような気がします。

それに対して、新町の長獅子は……三春大神宮の祭礼に奉納されたものでしか見ていないのですが……大神宮の境内では、別火講中(新町の若連)に押しとどめられるのではなく、長獅子が暴れ、それを別火講中の皆さんに誘導されているように感じました。

どちらがすぐれているとか、好きとかではなく、それぞれのよさがあると思います。どっちもエネルギッシュで見応えがありました。

長獅子のはじまりは、八雲神社の荒獅子だった!

レポートをぶった切るようで申し訳ないのですが、ここでちょっと三春町に伝わる長獅子の歴史と、特徴についてご紹介します。

これを書くにあたり、八雲神社の荒獅子について調べたところ、旧三春城下に伝わる長獅子の中では、八雲神社の荒獅子が最も歴史が古いことが分かりました。

戦国時代・江戸時代に三春城下に疫病が侵入するのを防ぐため、その頃、八雲神社に祀られていた牛頭天王とともに城下を練り歩くようになったのだとか。もともとは田村大元神社の夏の例大祭で「露払い」として奉納されていたようです。

また、興味深かったのが、三春歴史民俗資料館の記事。
動きを見て、なんとなく「他の地域の獅子舞とはちょっと違うな」と感じていましたが、三春町に伝わる長獅子は全国的に見ても珍しいもののようです。
しかも、山岳信仰に由来する可能性もあるらしい……この部分も興味深い。

全国的に見られる獅子舞は、一人立ちといって、一人で頭(かしら)をつけて舞うものか、二人立ちといって、獅子の頭と体を担当する二人で舞うものであることが多いのです。

中には大獅子など、たくさんの人が入って演じるものもありますが、三春のように10人からの人が入って演じる、というのは珍しいものなのです。
さらに、八雲神社の長獅子が「荒獅子」と呼ばれることでわかるように、勇壮に舞いつつ、あの階段を上り下りして演じるようなことも、なかなか見られないことのようです。

もう一つおまけに、獅子に頭を食べてもらうと頭痛がしないとか、病気をしないと言いますが、この慣習は、東北地方に多いとも言います。

三春の長獅子の由来は不明ですが、もともと東北地方の獅子舞には、単なる芸能とは一線を画し、山岳信仰に由来して、神様の力で魔を払い、場を清めると考えられたものがあったそうです。
そうした獅子舞には、一人立ちの獅子を大勢で演じるものもあり、三春の場合、それが長獅子へと変貌を遂げた、とも考えられます。

三春町ホームページより

説明的な内容が長くなってしまいましたが、田村大元神社や八幡神社の長獅子は荒町の荒獅子から伝授され、それぞれの町内で個性を育んでいった……という感じなのかもしれません。
なんとなくですが、「荒町に負けねえぞ!」的な若連同士のライバル心が垣間見られる…と妄想してみたり。

荒獅子と若連と観客が一体となる鳥居前での攻防!

八雲神社祭礼のレポートの続きです。
前述しましたが、獅子頭を高く掲げる動きが印象的でした。

夜空に映える獅子頭。露店が多く、ある程度光量があって助かりましたが、ブレた写真多し…💦

鳥居をくぐろうとしているところを、若連に止められるシーンでしょうか?

観客からの「まだまだまだー」の声がアツイ!

なんとなくかわいい1枚。大型犬が飼い主に怒られているような?

鳥居前で石段を登ろうとする荒獅子と、それを押しとどめる若連、観客との攻防が繰り返されます。この掛け合い的な感じがおもしろかった。

この雰囲気は動画のほうが伝わるかもしれません。
YouTubeに動画をUPしましたので、よろしかったらご覧になってくださいm(_ _)m


何度かの攻防の末、荒獅子は無事石段を登り、踊り場へ。
獅子を操っていた(中の人などいないけれど💦)若連の皆さんも鳥居前へ。引き続き、神輿還御がおこなわれます。

若連の皆さんに担がれ、参道の石段を登る御神輿。

最後は観客に向かい、餅まきならぬ、何かがもらえる(何がもらえるのか忘れた!)札のようなものが撒かれます。

これもお祭りの醍醐味♪

今年(2024年)の三春大神宮では、荒獅子が神輿の先祓いを務め、町内を練り歩きます。こちらも機会があれば見に行きたい! 

それから、三春城下に伝わるもう一つの長獅子、八幡神社の長獅子もぜひ見てみたい! こちらは4月におこなわれる神社の祭礼で奉納されるそう。

以前、三春大神宮の祭礼レポートにも書きましたが、三春町の長獅子は観光資源として十分な魅力を持っています。だけど、それを観光化しないで、地元の祭礼として守り続けているところが、三春らしいというか(他の地域に比べると独立性が高いというか、城下町らしいある種の閉鎖性があるといいますか)、魅力の一つになっているような気がします。

そして、ちょっと疑問も浮かびあがります。
県内の他の地域にも、旧三春城下と同じような獅子舞が伝わる自治体があるのでしょうか? 調べたところ、ヒットするのは三匹獅子か、「一人立ち」(一人でカシラをつけて舞うもの)が多数でした。

三春と同様の獅子舞が伝わっていたけれども途絶えてしまったのか、最初からなかったのか…。

こうした民俗芸能がどのように派生し、どのように伝わり、その地でどのように変化していったのかも興味深いところです。

〈三春町への旅2024〉八雲神社の荒獅子②はこれにて終了!
……ですが、やっぱりちょっとエピローグ。ちょっとだけ続きます。

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