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『イオン—地域とともに成長する“暮らし密着型”の巨人』調査ノート小売・流通シリーズ②全6話
「“イオンに行けば何でも揃う”なんて思っていませんか?でも、ただの便利なショッピングモールではありません。地域社会を支える取り組み、環境への配慮、そして世界進出を見据えた戦略…イオンの壮大なビジョンを知れば、きっと“推したくなる”理由がわかるはず!」
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小売・流通業界シリーズ
『買い物の進化—小売・流通業界の未来を探る』
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①『買い物の裏側へようこそ—日本の小売・流通業界を紐解く』
②『イオン—地域とともに成長する“暮らし密着型”の巨人』
③『セブン-イレブン—24時間の挑戦と革新』
④『ZOZOTOWN—ファッションECが描く“新しいクローゼット”』
⑤『ニトリ—お、ねだん以上の秘密を探る』
⑥『買い物の未来—小売・流通業界が切り拓く新時代』
全6話でお届けします!
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イオン—地域とともに歩む“生活密着型”リーダー
「イオンモールに行けば何でも揃う。だけど、その裏で地域社会と手を取り合う姿勢があることを知っているだろうか?」
私は「小売・流通編」の第2話として、イオンを取り上げることにした。なぜイオンなのかと言えば、全国津々浦々でショッピングモールやスーパーを展開し、地域とともに成長してきたリーダー的存在だからだ。巨大な流通グループでありながら、“お客さま第一主義”と呼ばれる経営理念を貫き、環境配慮や地域貢献に力を入れている。IT・通信業界のシリーズをまとめ終えた後、私はうさぎ先生(闇の組織によってウサギの姿に変えられた元大学教授)と雑談しているうちに、「イオンは大規模ショッピングモールの開発で、地方都市を支えるインフラになっているよね」という話題になり、それを機に本稿で深掘りすることを思い立った。
今回も私(ユキ)が「ビジネスモデル調査ノート」にまとめつつ、うさぎ先生と会話しながら、イオンという企業がどうやって成立・成長し、地域社会と共存し、さらに今後どんなDXを起こそうとしているかを見ていきたい。
1. 歴史:創業から全国規模への展開、そして地域密着型戦略へ
1.1 イオンのルーツ—ジャスコ時代
イオンは今でこそ流通大手として知られているが、その前身は「ジャスコ(JUSCO)」という名前だった。ジャスコは、岡田卓也氏(イオンの名誉会長であり創業者の一人)が率いる岡田屋、フタギ、シロといった小売チェーンが合併する形で1970年に誕生した企業である。先生に聞くと、「当時はGMS(総合スーパー)という業態が日本で急激に普及していた時代で、大手チェーンが次々と全国展開を進めていた。ジャスコもその波に乗り、地域のスーパーマーケットから大規模店へ発展していったんだ」と解説してくれた。
私自身は子どもの頃、「近所にジャスコができると、日用品や食料品がなんでも揃って便利」と親が喜んでいた記憶がある。地域住民が一箇所で買い物を済ませられる総合スーパーは画期的だったわけだ。ジャスコは効率的な仕入れ・管理を行い、低価格と品揃えの豊富さで支持を集め、全国的に店舗を増やしていく。
1.2 “イオン”への改称とさらなる拡大
ジャスコは2001年に「イオン」へ社名を変更し、グループ全体でイオンブランドを統一する路線をとった。先生いわく、「イオンはギリシャ語で‘永遠’を意味する言葉で、持続的な企業発展を象徴したかったらしい。ジャスコ時代から総合スーパーを核に、ディベロッパー(不動産開発)や金融、サービスなど多角化を進めていたから、社名変更を機にグループ経営を加速させた」と説明する。
イオンの展開はさらにモールディベロッパーとしての顔を強め、「イオンモール」という巨大ショッピングセンターを全国各地で開発し始める。これがいわゆる「イオンがある街」の原型であり、地方都市でもイオンが進出すると周辺が大きく変わる(商業集積が移動する)ほどの影響力を持つようになった。私もよく週末にイオンモールへ行き、映画館やフードコート、アパレルショップなどを楽しむことが多いし、駐車場も広いのでつい利用しがちだ。
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1.3 M&Aとグループ再編でさらに巨大化
イオンは2000年代以降、マイカル(旧サティ)やダイエー、マックスバリュなど多数のスーパーやGMSを吸収・合併して巨大流通グループを形成していった。地域スーパーとの提携も積極的で、「東北でのマックスバリュ展開」「中四国でのイオンタウン開発」など、地域ニーズに合わせたブランド配置を行う。先生は「イオンはM&Aを巧みに進め、国内流通トップクラスの売上高を獲得した。イオンモールを核としたエリア開発で地方経済に寄与しつつ、グループ内で仕入れ・物流を効率化するスケールメリットを得たんだね」と耳をぴょこんと動かしながら説明してくれる。
加えて海外にも進出し、中国や東南アジアでイオンモールを開業する事例が増えている。先生が「海外での成功例も多い。特に中国沿岸部やASEAN諸国では、日本のような大規模モールがまだ少ない地域にイオンが進出し、日本式の“安心・安全なスーパー”を提供している。現地の消費者に支持されれば、海外売上比率が伸びるだろうね」と解説し、私も「なるほど、グローバル展開も視野に入れているのか」と感心する。
2. 理念:『お客さま第一主義』を軸に、地域貢献や環境への配慮を推進
2.1 「お客さま第一主義」の背景
イオンの経営理念で頻繁に見かけるのが「お客さま第一主義」。これは創業期から続く基本方針であり、「常にお客さまにとって何が最適かを考え、行動する」という考え方だそうだ。先生は「ジャスコ時代に岡田卓也氏が掲げた『お客さまの立場で考えよ』という言葉が基になっていると言われている。大量仕入れ・低価格戦略に走るだけでなく、サービスや地域との関係性を大事にする姿勢が原点だね」と補足する。
私は以前、イオンの店内で店員さんに尋ねたとき、親切な対応をされた印象が強い。どこか“地域のお店”らしさを持ちつつ、大手チェーンのスケールメリットを両立している感じがする。先生は「ああ、それこそ“お客さま第一”が徹底されている証拠かもね。店舗スタッフの教育や接客マニュアルだけでなく、本部の方針としてもお客の声を吸い上げる仕組みがある。PB(プライベートブランド)商品の改良にも生かされているよ」と耳を立てて笑う。
2.2 地域社会との共生
イオンは単に店舗を出店するだけでなく、地域貢献や社会との共生に力を入れている。ショッピングモールを建設する際、地元の自治体や商工会と協力し、地域の特産品コーナーを設けたり、地元の人材を積極採用したりする。さらに災害時には避難所としてモールを開放したり、物資支援を行うなど、地域インフラの一部として機能することも多い。
「総合スーパーは地元商店街を壊すという批判もあるけれど、イオンモールはむしろ周辺に賑わいをもたらし、地方都市の若者が集う場所になる面もある。実際、東北や九州でイオンが地域経済を活性化させた例が少なくないんだ」と先生は耳をピンと立てて教えてくれる。私も「確かに地元にイオンが建つと、その周辺にファミレスや家電量販店が集まって“一大商業エリア”になることがありますよね」と思い当たる節がある。
2.3 環境への配慮と持続可能性
イオンは「環境保護」や「持続可能な社会」を目指す活動にも積極的だ。たとえばレジ袋削減(有料化)や店舗の省エネ、太陽光発電の導入などを進めている。「イオンで買い物すると、エコバッグ推奨やリサイクルボックスの設置が目につくよね。イオンは食品リサイクルにも取り組んでいて、廃棄物を堆肥や飼料にする循環型モデルを拡充中だし、海外店舗でも環境配慮をアピールしている」と先生が解説する。
私自身もレジ袋有料化のとき、近所のイオンで店員さんが「マイバッグをお持ちですか?」と聞いてくれるのをよく覚えている。プラ削減やCO₂削減をあくまで「地域とともに」実践している姿勢が、イオンのファンを増やしている要因かもしれない。
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3. 功績:地方活性化を目的としたショッピングモール展開や、PB(プライベートブランド)の充実
3.1 ショッピングモールの地方都市への影響
イオンの代表的な功績として挙げられるのが「イオンモール」の展開だろう。全国に300以上のモールを運営し、その多くが郊外や地方都市に立地している。私も大学時代、地方都市で過ごしたころイオンモールができたときには「これで映画もショッピングも食事も全部イオンで完結できる!」と盛り上がった思い出がある。先生は「イオンモールができると、近隣住民だけでなく隣接する市町村からも人が流れてくるから、一種の“商業ハブ”になるんだ」と耳を立てて言う。
地方における雇用創出や商業集積が進む反面、中心市街地や旧商店街がシャッター街になる懸念もある。しかしイオンは地域商店街との連携イベントや地場産品の販売コーナーを設けるなど、地元とwin-winを目指す事例が多い。先生は「例えば地元の祭りをイオンモール内で開催したり、野菜の直売所を入れるなど、地域の生産者を支援している。これがイオン流の地域密着戦略だね」と評価する。
3.2 PB(プライベートブランド)の充実
イオンのもう一つの強みが「プライベートブランド(PB)」の充実だ。トップバリュ(TOPVALU)が代表例で、食品から日用品、衣料品まで多彩な商品を展開し、品質と価格を両立する路線を打ち出している。「“トップバリュ”の食品、私もよく買います。普通のメーカー品より安いのに味やクオリティが悪くない、と感じるんですよね」と私が話すと、先生は「イオンは大規模な仕入れと独自の基準を活かしてPBを強化している。最近は“グリーンアイ”など環境や健康志向のラインもあり、差別化を図っているよ」と教えてくれる。
PBに力を入れる背景には、「メーカー品に依存せず、自社で商品を企画・調達することで利益率を高める」という戦略がある。さらにイオンは国際的な調達ルートを持ち、海外工場との直接取引やグループ内物流網を駆使してコスト削減を図っている。先生いわく、「ユニクロやニトリのSPAモデルには及ばないが、総合スーパーとしてはPBの充実で差別化を図るのが常套手段だね」と補足する。
4. 展望:DX(デジタルトランスフォーメーション)による顧客体験の向上、海外市場へのさらなる進出
4.1 DXとデジタル化の取り組み
イオンは巨大グループゆえにデジタル化が遅れているという指摘もあったが、近年は「イオンデジタル」や「イオンスタイルオンライン」、「イオンネットスーパー」などを強化し、DX推進に乗り出している。POSデータの一元管理やAIによる需要予測、キャッシュレス決済の拡充などを進めており、OMO(Online Merges with Offline)による顧客体験の向上を図っている。
先生は「イオンは店舗数が膨大なため、DXのスケールメリットも大きい。一方、既存システムが複雑化しているというハンデもあるが、クラウド活用やAI導入で在庫管理や接客を効率化しようとしている。たとえばスマホアプリで会員登録すれば、買い物履歴からおすすめクーポンが配信されるシステムを広げたり、フードデリバリーと連携したりと、まさに変革期だね」と耳を立てて語る。
4.2 海外市場へのさらなる進出
イオンは既に中国やアセアン諸国に進出し、モールやスーパーを展開しているが、これを一層拡大する動きがある。現地での成功には、“日本品質”を訴求した安全・安心な食料品や、地域密着型のモール開発が鍵となる。先生は「海外の消費者にとって日本式スーパーは衛生管理や接客態度が高評価になりやすい。イオンはその強みを活かしてブランドロイヤルティを高めようとしている。中国やASEANでも『イオン』というブランドが徐々に定着しているんだよ」と補足する。
ただ、現地企業との競争も厳しく、文化や法規制、物流インフラの違いに対応しなければならない。先生いわく、「それでもイオンは国内だけで飽和しているわけじゃないが、日本の人口減も考えると海外での成長が不可欠。ファストリテイリング(ユニクロ)が海外展開で成功したように、イオンもグローバルカンパニーを目指すだろうね。これからさらに店舗数を伸ばす見込みがある」と耳をピクピクさせながら説明する。
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うさぎ先生との夜更かし対話:イオンの地域密着に学ぶもの
夜も更け、私が「イオンまとめ」のメモを見直していると、うさぎ先生がそっとソファから近づいてくる。
「ユキくん、イオンのまとめはどうかな? 思っていたより巨大で多面性のある企業だと感じたんじゃないかい?」
「はい、正直驚いてます。単なる大型スーパーかと思っていたら、ディベロッパー機能や金融機能(イオン銀行など)も持ち、環境保護や地域コミュニティ形成にまで関わってるなんて……。」
先生は耳を柔らかく動かしながら微笑む。「そうさ。イオンは“お客さま第一”を掲げながら、地域経済を巻き込む形で店舗を展開している。ショッピングモールが地方の中心になり、雇用や住民サービスも生まれる。単なる流通を超えたインフラ企業とも言えるんだ。」
「しかも海外展開も進んでて、DXにもチャレンジしてるんですよね。店舗数や従業員数が膨大だから意思決定が大変そうだけど、その分スケールメリットも大きいわけで……本当に巨大企業だなあ」と私は感心を深める。
先生は「うん、イオンの事例から、小売・流通業界の面白さや大変さが垣間見えるだろう。リアル店舗に強みがあるが、EC化や少子高齢化への対応が課題だ。しかし、日本の流通大手としてはまだまだ成長の余地があると思うよ。海外市場やDX次第で、また大きく進化するかもしれない」と耳を立てる。
私が「なるほど、勉強になりました。今後はコンビニや百貨店、ECなど他のテーマも続けていくと、より業界全体を俯瞰できそうですね。イオンが地域に根付く事例を見て、他社はどう動いているか比較するのも楽しそう」と声を弾ませると、先生は「そうさ。次回は『セブン-イレブン—24時間の挑戦と革新』を取り上げる予定だろう? コンビニならではの戦略と、イオンの戦略を比べるとさらに視野が広がるはずだ」と答える。
専門用語の解説
GMS(General Merchandise Store)
総合スーパーと呼ばれる業態。衣料・食品・日用品・家電など幅広いカテゴリーを一つの店舗でカバーする。イオンやイトーヨーカドーが代表例。イオンモール
イオングループが開発・運営する大規模ショッピングセンター。映画館や専門店街、フードコートなど多彩なテナントを抱え、地域の商業拠点となる。トップバリュ(TOPVALU)
イオンのプライベートブランド(PB)。食品や日用品、衣料まで多岐にわたり、コスト削減と独自品質管理を強みに低価格かつ質の高い商品を展開している。マイカル・ダイエー
過去に国内流通をリードしていた大手スーパー。経営破綻や再編を経て、イオンに吸収されたり、グループ会社化されたりしている。OMO(Online Merges with Offline)
オンラインとオフラインの垣根をなくし、一体的な購買体験を提供する戦略。イオンもネットスーパーやデジタル活用でリアル店舗とECを連携している。DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を活用して、企業の業務やビジネスモデルを変革すること。イオンはPOSデータや在庫管理、ネットスーパー、顧客アプリなどを充実させDX推進を図っている。持続可能性(サステナビリティ)
環境保護や地域貢献を通じて、企業が長期的に経営を続けられる状態。イオンはレジ袋削減やフードリサイクル、地域との連携イベントなどで社会的責任を果たす。ディベロッパー
ショッピングモールや商業施設の開発を手がける事業者。イオンモールもイオングループのディベロッパー部門であり、不動産開発とテナント誘致を担っている。
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次回予告
これで「イオン—地域とともに歩む“生活密着型”リーダー」の回は一通りまとめられた。総合スーパーからモール開発へ、地域密着型戦略を軸に環境や地域貢献を重視しつつ、DXや海外展開にも積極的なイオンの姿が見えてきたと思う。小売・流通業界の大きなプレイヤーとして、今後も私たちの生活や地方都市の在り方に影響を与え続けるだろう。
次回は第3話、「セブン-イレブン—24時間の挑戦と革新」を取り上げる予定。日本全国の街角を埋め尽くすコンビニチェーンが、どのような歴史を経て世界6万店舗以上を展開するに至ったのか。24時間営業やPB開発、POSシステムの先駆けとなった革新的な取り組み、そして今なお変化を続けるコンビニという業態の未来を探る。大手流通チェーンとしてのイオンとの比較もしながら、小売・流通業界の多彩な顔をさらに深く掘り下げていきたい。
これからも先生と私の“ビジネスモデル調査ノート”は続く。うさぎ先生は夜が深まると、ソファの上で丸くなりながらも、まだ意欲的に本や資料を読んでいるようだ。「イオンでの買い物の仕組みを知ると、次はコンビニの戦略が気になって仕方ないな……」と思う私を横目に、先生は耳をぴこぴこさせつつ小さく笑っている。きっとこの先も、私たちの夜更かし対話は続くに違いない。
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◯マーケティング基礎編シリーズ
1週目:WEBマーケティング編
2週目:顧客心理編
3週目:SNS拡散編
4週目:コミュニティ編
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