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第9話:「公益法人と一般法人の違い」法人シリーズ全12話

同じ“社団法人”や“財団法人”でも、公益認定があるかどうかでこんなにちがう!? 行政の厳しい認定を受けるからこそ得られる税制優遇や信用力など、ユキが「公益法人ってすごい」と驚く回。逆に自由度の高い一般法人の魅力も押さえ、どんな活動なら最適かを考えさせられます。

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●法人紹介シリーズ

第1話:「法人とは何か? 基本概念と重要性」
第2話:「営利法人の基本 – 会社とは?」
第3話:「株式会社の仕組みと特徴」
第4話:「合同会社(LLC)とは? 特徴と活用法」
第5話:「合名会社・合資会社・持株会社」
第6話:「非営利法人の基本と種類」
第7話:「NPO法人の仕組みと運営」
第8話:「学校法人・医療法人・社会福祉法人の役割」
第9話:「公益法人と一般法人の違い」
第10話:「公法人(国・地方自治体・独立行政法人)」
第11話:「法人の税金と資金調達」
第12話:「法人設立の実務——会社を作る方法」

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違いを知れば見え方が変わるはず!

一般法人と公益法人ってどう違うの? ユキの新たな戸惑い

 朝のオフィスビル、エレベーターのドアが開き、ユキはエントランスを小走りに抜け、デスクへと向かう。ここ数週間、彼女は「法人編」の学習を進め、営利法人やNPO法人、学校法人・医療法人・社会福祉法人など、さまざまな形態を教わってきた。だが上司からの新指示は「一般法人と公益法人の違いを調べてまとめてほしい」というもの。ユキは「前に一般社団法人や公益社団法人って聞いたけど、なんか名前が似てるし、どこがどう違うんだろう?」と疑問を抱いていた。

 昼休み、社内のカフェスペースで同僚と雑談する中、「公益社団法人って、公益認定を受けてるから税制優遇があるとか? 一般社団法人との違いは公益性の有無だよね」と返されるが、詳細はみんな分からない。ユキは「やっぱりうさぎ先生に聞かなきゃ」と決心する。

 夜、アパートのドアを開けると、リビングのソファにはいつものように羊羹をかじるうさぎ先生の姿。靴を脱ぎながら「先生、ただいま! 今日から一般法人と公益法人を詳しく学びたいんですけど、『一般社団・一般財団法人』と『公益社団・公益財団法人』があって、何が違うんですか? 非営利法人ってことは同じっぽいですけど……」と問いかける。

 先生はテレビを消し、耳をぴんと立てて穏やかに振り向く。「おかえり、ユキくん。そうだね、一般社団法人や一般財団法人と、公益社団法人や公益財団法人は、公益認定の有無で大きく異なる。税制上の優遇も違うから、マーケティング視点でも信用度や活動内容のアピールに差が出るんだ。今日はそこを詳しく見ていこうか」

 ユキは笑顔で「お願いします! 企業とコラボする団体が一般社団法人だったり、公益法人を名乗る団体が助成金を受けたりするのを聞いたことあるし……それがどう運営や広報に影響するのか知りたいです。法人編もいよいよ終盤ですね」とソファの前に腰を下ろす。こうして「法人編 第9話:公益法人と一般法人の違い」が幕を上げることとなった。


一般法人と公益法人の違いを紐解く——認定基準と活動内容のリアル

 深夜のアパート、リビングの照明を落とし、ユキは床に座りノートPCを開く。ソファにはうさぎ先生が腰かけ、柔和な口調で話し始める。前回までに非営利法人の全体像をざっくり学び、NPO法人、学校法人、医療法人、社会福祉法人などを見てきた。

 今日はさらに「一般法人(一般社団・一般財団)」と「公益法人(公益社団・公益財団)」の違いを深掘りし、どうマーケティングと結びつくか探っていく。

資産かマンパワーか……

1. 一般社団法人・一般財団法人とは?

 先生はまず、「一般社団法人と一般財団法人をまとめて一般法人と呼ぶよ。2008年の一般社団・一般財団法人法で設立制度が大きく変わり、誰でも比較的簡単に社団・財団を設立できるようになった。非営利法人だけど、営利事業を行ってもいいし、利益を出しても分配せず組織内に再投資する形だね」と切り出す。

 ユキは首をかしげる。「へぇ、NPO法人みたいに設立の認証を受けるわけでもないんですか?」

 先生は「行政庁の許可を必要としないのが大きな特徴だ。公証人による定款認証は必要だけど、基本は書類さえ揃えば自由に作れる。NPO法人が所轄庁の認証を要するのと対照的だよ。その代わり、助成金や寄付を集めるときに ‘ちゃんと活動してるの?’ と疑われがち。だから透明性の確保が大切だね」と耳を動かす。

 ユキは「なるほど……法人格を得やすい反面、社会的信用は自分たちで高めないといけない、ってわけか。具体的にはどんな団体が一般社団法人になってるんでしょう?」

 先生は「たとえば業界団体や専門家協会、資格団体、研究会などが多いね。『〇〇協会』や『〇〇研究所』と名乗る一般社団法人がよくある。あとはイベント団体やコミュニティ支援団体など。事業範囲は広いし、社員(構成員)の出資や会費で運営する」と説明する。


1-1. 社団と財団の違い

 ユキは「社団と財団って何が違うんですか?」と素朴に問う。先生は「社団は人の集まり、財団は財産の集まりさ。社団法人は社員(構成員)が議決権を持ち、理事や評議員が法人運営をする。財団法人は特定の財産が目的のために拠出され、その運用で活動を続ける。文化振興財団奨学財団などが典型だよ」と解説する。

 ユキは「なるほど、財団は寄付された資金や不動産を使って活動し、人が集まる形じゃないんですね。奨学金財団とか、美術館運営財団とかも聞いたことあります。マーケティングだとどう違うのかな?」と疑問を深める。

 先生は「財団は寄付金や運用益で活動するから、継続的な資金確保が課題。社団は会員を増やすことが課題。マーケティングとしては、社団法人は新規会員獲得や会費のアップを狙った広報、財団法人は寄付者や助成金提供者へのアピールが重視される傾向がある」と耳を立てる。


1-2. 税制や監督のゆるさ

 先生は「一般社団・一般財団法人は、NPO法人のような所轄庁の認証は不要だから、設立も自由度が高い。ただ税制優遇はほとんどなく、営利活動を広く行える面がある。だから‘実質的に利益を得る疑似営利法人では?’と批判される例もある。そこをしっかり公益活動や社会的意義を打ち出さないと、『なんで法人化してるの?』と思われる可能性があるんだ」とまとめる。

 ユキは「なるほど……だから、一般社団法人で利益を出していても配分しないわけだけど、曖昧だと外部から疑いの目を向けられるかもしれませんね。マーケティングでどんな活動をしているか、会員にどう利益を還元しているかを発信するのが大事ってわけですね」とメモを取る。

美術館とかは公益性が高いですよね

2. 公益社団法人・公益財団法人とは?

 先生は「次は公益社団法人・公益財団法人に話を移そう。これらは一般法人が行政庁(内閣府や都道府県)から公益認定を受けた形だ。より公共性が高い活動を行い、かつ厳しい基準を満たすことで、税制優遇や社会的信用を得られる反面、行政の監視が強まる」と解説する。

 ユキは「へぇ……つまり一般社団法人が認定を受けて‘公益社団法人’になるとか、一般財団法人が公益認定されて‘公益財団法人’になるんですね。何が厳しいんですか?」

 先生は「公益目的事業比率などの要件があり、全収入の半分以上は公益的事業から得ることが求められる。また役員構成や財産の扱いにも細かい規定があって、定期的に報告を行い、審査をクリアし続けなければならない。公益性を裏付けるためさ」と耳を揺らす。


2-1. 公益認定のメリット

 ユキは「メリットはやっぱり税制優遇や社会的信用ですか?」と続ける。先生は「そうだね、たとえば寄付金控除の対象になり、寄付者が税の優遇を受けられる場合がある。公益法人は‘公に認められた団体’として、企業や個人の寄付を得やすいし、行政との連携もしやすい。マーケティング的にも『私たちは公益認定を受けてる』とアピールすれば信頼を得やすい」と応える。

 ユキは「なるほど……企業や人々が寄付をするなら、公益法人のほうが安心感があるわけですね。『行政のお墨付き』があると、詐欺的な団体じゃないって思われるし……。一方、手続きや報告が大変そうですけど、信用を得るためのコストとも言えますね」と納得する。


2-2. 公益法人の活動例:日本赤十字社や大手財団

 先生は「たとえば日本赤十字社は法令で特殊法人の扱いだけど、広義では公益性が非常に高い団体。あるいは多くの文化振興財団が公益財団法人として寄付を集め、美術館やホールを運営してる。これらは公益認定によって『公共の財産を預かり、社会に還元している』と示せる。マーケティング面では、ブランド力と公的支援を得やすい反面、自由度は低いかもしれない」と耳を立てる。

 ユキは「確かに、たとえば野村財団日本財団みたいな大きな公益財団がいろんなプロジェクトを助成してたりしますよね。寄付を集めやすいけど、活動内容も厳しく監視される。SNSや広報で成果を発信しないと『何やってるの?』と疑われるわけだ……。ここにマーケティングの余地が大きいですね」と書き留める。

自由か公共か?

3. 公益法人・一般法人の違いとマーケティング応用

 先生は「まとめとして、一般法人は設立しやすいが税制優遇は少なく、信用を高める努力が必要。公益法人は認定手続きが厳しいが税制優遇や社会的信用を得られる。これを踏まえ、マーケティング的に見るとどう活かせるか考えてみようか」と提案する。ユキは「お願いします!」と目を輝かせる。


3-1. 一般法人:柔軟性と信用確保の両立

 先生は「一般社団・一般財団法人は設立が容易だから、業界団体研究団体地域コミュニティなどが法人化しやすい。その結果、会員を増やして会費を集めたり、イベントを行うにも‘法人’として契約や資金管理ができる。だが公益認定がないので社会的信用はやや劣る。マーケティングで信頼と実績を示し、寄付や会員獲得を成功させる必要があるんだ」と耳を動かす。
 ユキは「なるほど……たとえば‘〇〇研究所’とか‘〇〇協会’って一般社団法人が多いけど、企業とのコラボを得るには活動をアピールして『ちゃんとした法人なんだ』と認識してもらわなきゃですね。そういう時にWEBサイトやSNSでの情報発信、イベント実績の公開が重要になる……マーケティングが必須だ」と理解を深める。


3-2. 公益法人:行政のお墨付きと公共性の訴求

 先生は「公益社団法人・公益財団法人になれば、行政のお墨付きで公共性が高い活動をしていると示せる。税制優遇で寄付者も得をするし、企業CSRのパートナーに選ばれやすい。**マーケターとしては‘公益認定’をアピールして、『公に認められた団体です』と信頼を強化できる反面、活動内容に厳しい監督があるから、自由度は低いかもしれない」と続ける。

 ユキは「確かに、公益認定を取り消されないように、活動報告や事業目的を常に公益に沿わせる必要がありますね。企業とのコラボでも、あまり儲け主義っぽく見えると公益認定を危うくするかもしれない……。でも信用を得やすいので資金調達が楽になる面があると。メリット・デメリットのバランスが難しそうだな」と頷く。


3-3. 法人形態の選択とマーケティング戦略

 先生は「最終的に、法人が一般か公益かをどう選ぶかは、活動の目的・規模・資金調達ニーズで変わる。一般法人でも成功しているところは多いし、公益法人でも行政の監督に耐えられず苦労する例もある。マーケティング視点ではどの法人形態であっても、価値や実績をアピールし、支援者や協力企業を募る必要がある。単に形態が違うだけでなく、運営方針とブランディングの一貫性が大切だね」と耳を立てる。

 ユキは「なるほど……‘公益認定を受けたい’なら、それなりの公共性と厳格な運営体制を整える必要があるし、‘自由度が欲しい’なら一般法人で自分たちの理念を示し、活動を展開すればいい。どちらにせよマーケティングで信頼を得るのがカギですね。企業が協賛する場合も、『公益法人だから支援しよう』ってなるかもしれないし」と笑う。

融合はお互いのメリットを活かす

日常へ戻るユキ、さらなるステップを見据える

 数日後、ユキは会社で「公益社団法人を名乗る団体とコラボする案」を提案する会議に出席していた。そこは環境保護を目的とした団体で、行政の監督を受けながら税制優遇を得ている。ユキは「あちらは公益認定を受けてるから企業や個人の寄付を集めやすいんです。ウチがスポンサーとなれば、企業イメージアップと同時に環境保護に貢献できる。相手も私たちの強い発信力を活かしてさらに寄付を募れます」と力説。上司は「それはいい。今の時代、環境への取り組みは重要だし、公益法人との連携は信頼を得やすい」と賛同してくれた。

 夜、アパートのリビングでユキはうさぎ先生に「先生、今回公益社団法人とのコラボがほぼ決まりそうです! 企業イメージ向上と環境保護支援を両立できるなんて、やっぱり‘公益認定’って響きが強いですよね。マーケティングの観点でも、寄付者から『あ、行政認定されてる団体か。なら安心』って思われる効果が大きいみたいです」と報告する。

 先生は「素晴らしいね、ユキくん。一般社団法人も悪くないけど、公益法人として認定を受けると確かに強いブランドになる。ここにメタ認知を活かせば、企業や市民が持つ『公共性への信頼』をマーケティング戦略に組み込むことができるわけだ。学んだことを実践してるようで何よりさ」と耳をぴんと立てる。

 ユキは「はい、本当に法人形態がマーケや信用に直結するんだと実感してます。どんな団体でも、誰にどんな価値を提供したいかで形が決まるし、そこに合わせた広報やPRが必要になるんですね」と笑顔になる。

 こうして「法人編 第9話:公益法人と一般法人の違い」は幕を下ろす。ユキは一般社団・財団法人と、公益社団・財団法人の相違点を学び、公益認定がもたらす税制優遇と社会的信用の意味を深く理解した。次回はさらに法人編を進め、「公法人(国・地方自治体・独立行政法人)」へと学びを広げることになるだろう。


それでは自由に用語のおさらいです!

用語解説

  1. 一般社団法人・一般財団法人

    • 2008年の法改正以降、自由に設立できる非営利法人。行政庁の許可は不要。活動に対する税制優遇は少なく、寄付や収益事業が可能だが、利益を構成員に分配しない。

  2. 公益社団法人・公益財団法人

    • 一般社団・財団法人のうち、公益認定(内閣府や都道府県)を受けて公共性が高いと認められた法人。税制優遇や社会的信用があるが、厳しい運営基準と行政監督がある。

  3. 公益認定

    • 公益法人認定法に基づき、事業の公益性(収入の一定割合が公益目的事業)や組織運営の厳格さを審査して認定。更新審査もあり、基準に満たないと認定取り消しのリスクもある。

  4. 社団と財団の違い

    • 社団法人は「人の集まり」、財団法人は「財産の集まり」。社団は社員・会員が意思決定を行う。財団は元となる財産の運用益で活動を行い、評議員会などが管理する。

  5. 税制優遇

    • 公益法人は寄付者に対する税額控除などが認められ、寄付を集めやすい。一方、一般法人は特別な優遇がない場合が多い。

  6. マーケティング上のポイント

    • 一般法人:設立しやすく柔軟だが社会的信用を得る努力が必要。会員拡大や寄付獲得には活動実績や透明性のアピールが肝心。

    • 公益法人:税制優遇や信用度は高いが運営ルールが厳しく、公益目的を維持する必要がある。行政認定を活かして企業や個人の寄付を獲得しやすい。

  7. 事例と活かし方

    • 一般社団法人:業界団体、協会、研究会などが中心。自由度を活かしてイベントやセミナーを開催し、収益や会員を増やす。

    • 公益法人:文化振興や環境保護など公益性が高い活動で行政認定を受け、寄付や助成金を得やすい。企業CSRとのコラボにも有利。


次回予告

次回はいよいよ「法人編 第10話:公法人(国・地方自治体・独立行政法人)」。ここまで私たちが学んできた営利法人と非営利法人は、どれも民間主体の法人でしたが、“公法人”は国や自治体そのものを法人格として扱うという特別な領域になります。独立行政法人や特殊法人も含め、公共サービスをどのように運営し、どうマーケティングと関わっているのか——ユキの学びはさらに幅を広げるでしょう。お楽しみに!


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