楽園なんて無かった。
暗黒の空から滴りゆく雨粒。
手には溢れんばかりの寂しさ。
生暖かく私に降り注いだ雨に少しの優しさと皮肉を感じる。
大粒の雨が地面に零れ落ち、
潤いすぎた地はぬかるみ、やがて私を深く底へ沈める。
漆黒の雲居から朧気な月が私を見下ろす。
「君は今、幸せかい?」
雲にかき消されそうな眩い光の粒が
同情しているようだった。
「この世界の人間はね、真面目で優しい人ほど、苦しい。
優しい人は誰よりも我慢する、自分の羽をむしって
飛べなくなってもまだ笑顔で自分を繕う。
君が、限界になって泣いても多くの人はそれに気づくことが無い。
だから今、君は一人で泣いているんだろう?」
私は言い返す言葉もなく、足元に映る自分の姿を見つめた。
「君の優しさを当たり前だと思う人もいる、
君が苦しい時、寂しい時、手を差し伸べてくれる人は少ないかもしれない。
それでもきっと誰かが君の姿を見てくれている。
君は半透明なんかじゃない。」
その言葉を遺して彼は雲の中へ消えていった__
彼の言葉が私の心に宿り、
私の凍え切った憂いを優しく温めてくれた。
なにも悲しみきることはない。
降り続くこの雨もいつかは止む。
そう想えば 少しは救われるような気がした。
繕うことに慣れた、正直少し疲れてしまった。
紡いだ言葉にだけは嘘をつけない。
わたしの生み出す言葉には
隠しきれない想いで溢れている。
絵に書いた様な完璧な人でも
本当は繊細で 哀しみを抱えていたりする。
表面ばかりに囚われて 人は 深いところまで
目を向けなかったりする。
そんな世の中が寂しくて苦しくて
隠された物事の本質や深い海に葬られた想いを
拾い上げては 涙して…
どうか 私と同じ様な想いの人が
少しでも 救われるように、
少しでも 想いを紡ぐことができるように
私は想いを唄うのであった。
優しい想いで 人の憂いを愛してあげられるような
温かさをいつまでも忘れずに
綴っていたいものだ。
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