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趣商店街

18歳最後の1日
行ったことも無い街へ自転車で飛び出した

太陽の光が痛いくらいだった
アスファルトに溜まった水溜まりが
無機質な空を映していた。

宙を舞うあの可愛らしい蝶々のサンバも
生ぬるい 風達も
なんだか今日はいつもより愛おしく感じた。

知らない街並み、知らない人達、

何処に向かっているのか

この先、何があるのか分からない

ただ私は
移りゆく景色に心を動かされた。

恵みの雨が降らないあの田んぼは
枯れて 無常観を感じた。

何も無い山の麓で
独り浮いていたあの有名な店の看板が
風景画に鮮やかな色を与えた。

色褪せたあの建物が
時の流れの愁いを伝えた。

何かが無いと私は 廃れてしまうようで

自分の目で何かを捉えないと
心が寂しくなる。

今、目の前で 形在るものたちの
愁いを感じなければ
心が寂しくて仕方がない。

人は 何かが無いと生きていけない。

便利すぎる世の中は
人を本当の意味で幸せにすることは出来ない

新しいものを求めすぎたり

背伸びをして繕ったりして

利益や目に見える形のものを求めるのは
とても寂しいことだ。

この街には 想いが溢れている。

建物にも 道に咲く花たちにも
誰かにとっては大切な存在で
誰かの心を潤すもので

そんな物事の裏に息を潜めている
憂いたちを 愛していくべきだ。

でも、私たちはそんなことすら
考える暇もないくらい
社会や時計に追われていて

いつしか
周りの人すら大切にできなくなっている。

誰かに届けたかった言葉も
いつの間にか思い出せない記憶となって
生きていた。

何か大切なものが欠けていた。

誰かの優しささえ、当たり前だと
思って大切にすら出来ない時代。

そんな世界が嫌いで
そんな私も嫌いだった。

いつも笑顔で幸せそうな人が
本当はとても孤独で寂しい人かもしれない

心は泣いているかもしれない…

私たちの目は、私たちの耳は
私たちの心は
そんな憂いたちを お互いに愛して、
救うためにあるんじゃないのか。

耳を澄ませば
誰かの高らかな笑い声が聞こえる

いつまでも彼らが笑えるように。

人の心の機微に寄り添う温かさを持ち、

物事の本質を見抜けるような
憂いを愛せるような寛大な人でありたい。

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