なぜ児童虐待はなくならないのか? 『ルポ 虐待の連鎖は止められるか』を読みました
概要
読書感想文
筆者は、複雑性PTSDです。
いろんな経緯でこの障害になる人がいますが、その多くが被虐待児です。これは、「虐待の後遺症」といえると思います。
虐待は心だけでなく体も傷つき、脳に障害を残す行為です。二度と私のような人を生まないためにも、社会がもっと児童虐待について考え、再発防止に向けて取り組むべきだと思います。
そのため、私は子ども食堂に寄付するなどのボランティア活動をしたり、こうして虐待に関する情報発信をしています。
今日は、『ルポ 虐待の連鎖は止められるか』の感想を綴っていきます。
虐待された過去のある親が、我が子へも同様に虐待してしまう。そんなことは、何年も前から言われていました。
確かに、私が何冊も読んできた虐待死事件を追うノンフィクションでも、そのようなことが指摘されています。全てが全て、そうでないにしても、自分がされたように育ててしまうことは事実です。
では、どうやったら、虐待は無くせるでしょうか?
我々が考えなくてはならないのは、「親となる人を苦しめる社会を形成していないか」ということです。
子どもは実の両親だけで育てるのではなく、国の宝として、地域全体で育てようという意識があっても良いのではないでしょうか?
子育ての責任を親にだけ押し付け、プレッシャーから虐待してしまう事件もあります。
例えば、「既製品の離乳食を使わずに、自分で作れ」と言われたことがあります。これは実際に私が体験した話です。
必ずしも、手作りでなくてはならないという決まりはありません。既製品を与えたって、本当は何の問題もないのに、少しでも楽をして育児をしていると怒る人というのが実在します。
あとは、「子どもは2人以上産むべきよ! 一人っ子なんてありえない!」と言われたこともあります。
育児を経験したことがある人はわかると思いますが、子育ては1人でも充分大変です。落ち着いてきたら2人目を考えられますが、この発言を受けた時はまだ新生児だったため、2人目を想定する精神的余裕はありませんでした。そういった親の心情を無視して、心無い言葉をかけることが、育児を頑張る親の心を追い詰めることになるのではないでしょうか?
そういったストレスから解放されるため、外食をすることもあります。今度は「外食するなんて贅沢よ!!!」と、耳を塞ぎたくなるほど大声で言われました。
息抜きすら許さない風潮はおかしいと思います。
先輩のママたちは、育児のことを教えているつもりなんだと思います。しかし、それが他の親たちを苦しめている場合もあるのです。
今はもう、そういう時代じゃありません。
子どもを産みにくい世の中を変える必要があります。そして、もっと育てやすい世の中に変えていきましょう。
そのためにやるべき行動は、「子育てに完璧はないよね」という事実を言い合うことです。
たまには身内に子供を預けて、遊びに出かけていいと思うし、料理がしんどかったら既製品を買えばいいし、外食したっていい。ブランドの子供服じゃなくていいし、床屋に行く費用を節約して自分で切ってもいい。
そして、精神がすりきれるほど育児にストレスを感じているなら、行政に相談するべきだと、意見を発信していくことが大切だと思います。
虐待を受けた過去のある人は、人に相談することを「恥ずべきこと」あるいは「相談しても助けてもらえない」という不信感を持っています。しかし、行政に助けを求めれば救ってもらえる。その事実を拡散し、今もどこかで苦しんでいる親御さんへ、届けるべきだと思います。
「虐待の連鎖は止められるか」
大事な問題です。明確な答えがあるわけではありませんが、少なくとも必要であると考えられることがあります。
血の繋がった家族でなくとも、社会全体で子育てをしていく。そういった意識を啓蒙し、みんなで支え合うことが、虐待を減らす第一歩ではないでしょうか?