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コスパ・タイパを疑う~豊かさは「無駄」の中にある?別の切り口からすれば、もったいないことをしているのではないか? 

 タイパ~タイムパフォーマンス(時間対効果)やコスパ~コストパフォーマンス(費用対効果)と言う言葉がよく使われるようになりました。どちらも底流に、「同じ時間を使う、費やすなら、より多くの効果や結果を得たい」という考え、思いがあります。
 
 そして、具体的に

「動画や録画した映画を倍速視聴する」
「睡眠時間を削って頑張る」
「オンライン会議や在宅勤務を推奨する」

等の行動につながります。
 しかし、これらの行動は、はたしてタイパやコスパを上げているのでしょうか?
 考察してみます。よかったお付き合いください。


1 倍速視聴で失うものは?

 録画したドラマや映画などを倍速視聴する方法を使えば、たしかに、2時間で映画を1本見られたものが2本見られるようになります。12話完結のドラマも4時間ぐらいで見終えることができます。

 時間だけで考えれば、たしかにタイパは良さそうです。

 しかし、実際に

私も倍速視聴を行ったことがありますが、一言でいえば、全く「面白くなった」「感動しなかった」です。

ストーリーを追うだけ、起承転結で結末だけおさえるという程度であれば、たしかに倍速で済むのですが、本当にそれで、貴重な時間を使って見るだけの価値があったかと言うと???です。

 「忙しくて、ゆっくり鑑賞する時間がない」状態であればあるほど、逆に、だからこそ、これぞという1本を選んで、じっくりと鑑賞した方がかえって、意識も高まりますし、集中してみることで「濃い時間」を過ごすことができます。
 
 また、

倍速で視聴すると、せっかくの俳優さんたちの表情、声の質、間の取り方などを理解できなくなります。つまりは、演技からそこに流れる感情や空気を読めなくなります。

 これは、日常生活にとってもマイナスだと思います。
 
 気づかないだけで、私たちは相手の声や表情、姿勢、態度など、あらゆることを「読解」して、気持ちを推し量ったり、対応したりしています。倍速視聴に慣れてしまうと、そういう、相手の様子を把握する力、「読解力」が落ちてしまいます。
 さらに、

背景に流れる音楽も、倍速視聴では台無しです。

 ドラマや映画などは、倍速視聴になじまないと思いますし、むしろ、時間を無駄してしまいます。
 
 では、映画やドラマではなく、情報番組はどうでしょうか?

 たしかに、出演する人の表情や演技は無視して、情報の中身だけを知るということであれば、得ることも多いです。

 しかし、ただ倍速で視聴するだけでは、すぐに忘れてしまいます。
 
 せめてメモをしたり、出てきた情報の真偽を確かめたりすることしないと、あまり生産性はないと思われます。

 そう考えると、

遠回りのようですが、関連する本をたくさん読んだ方が、自分で考えることも増え、内容を身につける、自分のものにするという意味ではプラスの効果が大きいと思います。

2 睡眠時間や睡眠の質がパフォーマンスを上げる

 「24時間闘えますか」
 昭和時代に聞いたCMの台詞です。
 
 猛烈に仕事をしようとしたり、あるいは忙しかったり、時間が足りないと言う時、睡眠時間を削って、それこそ徹夜して仕事を終わらせようとしたことがあります。

 たしかに、

睡眠時間を削ることで仕事時間を1,2時間増やすことはできるかもしれません。しかし、それで、パフォーマンスが上がるか、作業効率が上がるかは別問題です。むしろ、脳の状態で考えればマイナスが大きいです。

 実際、アメリカのペンシルベニア大学の研究によると、6時間以下の睡眠を2週間以上続けると、集中力や脳の作業効率が「徹夜明け」と同じぐらいの状態にまで落ちてしまうそうです。これは、ビール大びん1本程度を飲んだ時の状態と同じぐらいです。
 
 これでは、いくら睡眠時間を削って仕事に当てても、時間を無駄にしてしまうばかりです。勉強でも、仕事でも、睡眠時間を削ったり、睡眠の質を下げたりしてまで行うのは、コストの方が大きいです。

3 雑談からアイデアや新しい発想が生まれる

 コロナ禍の中で、在宅勤務やZoomなどによるオンライン会議などが増えました。実際、通勤時間、移動時間を考えれば、時間の節約、コスト削減になります。

 しかし、最近は、また、「対面式」に戻す会社も増えてきているそうです。
 
 どうしてでしょうか?
 
 必要事項の確認や事務的なやりとりだけであれば、オンライン会議でも十分です。しかし、

人が集まって起こる「雑談」にこそ、意味があるようです。雑談の中で、それぞれの体験や知識、思いもよらないアイデアが結びついて、新しい発想やビジネスの種やヒントになることがあります。

 また、人と会って話をすることは、最大の癒し効果があると言われています。実際に、脳の中で、オキシトシンと言われる幸せホルモンが分泌されるそうです。
 
 オンライン会議などでも雑談はできなくもないですが、実際に人が集まって話をした方が何倍も活発なやりとりが生まれます。
 
 効率化を追究して時間を区切ったり、無駄を削減したりする動きはあちこちで生まれていますが、

雑談のような「必要な無駄」まで、根こそぎ排除するようなやり方を行うと、むしろ新しい考えや発想、創造性が生まれるチャンスを阻む、有害なものにすらなります。

4 まとめ

 人は多くのかかわりの中で生きています。
 また、仕事ひとつにしてもたくさんの人の手が入っています。時間や費用だけを考えての節約は、確かにその視点だけで見れば、効果的かもしれませんが、別の何かを犠牲にしている事も多々あります。
 
 それこそ、別の人の力を削ったり、弱めたりすることも出てくるかもしれません。
 やる気を失ったり、働きがいをなくしたりするかもしれません。

 無駄と言って切り捨てたことの中に、実は豊かさがある。
 逆に言うと、豊かさとは「無駄なこと」をできる事ではないか?

 そんなことも感じます。
 
 コスパ、タイパの追求によって、何かおかしなことになっていないか、今一度、見直してもよさそうです。
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです

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