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読書紹介75「ナイフをひねれば」~シリーズ作品の魅力、タイトルのつけ方にも学びあり

<要約>
「われわれの契約は、これで終わりだ」
彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは探偵ダニエル・ホーソーンにこう告げた。翌週、ロンドンの劇場でわたしの戯曲「マインド・ゲーム」の公演が始まる。初日の夜、劇評家の酷評を目にして落胆するわたし。翌朝、その劇評家の死体が発見された。凶器はなんと、わたしの短剣。かくして逮捕されたわたしにはわかっていた。自分を救ってくれるのは、あの男だけだと。ホーソーン&ホロヴィッツシリーズの新たな傑作。


1 シリーズとしての魅力

 これまでの話である「メインテーマは殺人」「その裁きは死」など、一つ一つに、ちゃんとしたなぞ解き、独自の展開が準備されたお話になっています。それに加えて、1作ごとに、主人公であるホーソーンの警察を辞めた過去、家族と離れて暮らす理由、数多くあるプラモデルや高級アパートの謎など、過去や背景が描写されていきます。
 
 話は変わりますが、現在、TBSで放送されているドラマ「アンチヒーロー」。脚本を4人が担当するというハリウッド方式を採用しているそうです。
 1クールの話全体の流れをみんなで練る、確認する一方で、1,2話ずつは個別で担当する方式。ちゃんと、話全体の伏線も回収しつつ、1話ずつの内容がワンパターンにならない。俳優さんや演出も影響しているとは思いますが、同じくらい、脚本に力を入れているところも受けて、視聴率もいいようです。
 
 ある意味、この「ホーソーン」シリーズも、同じ流れです。

 それぞれの1作ずつが、別のミステリ展開になっていて、それでいて、シリーズとして、少しずつ先のクライマックスに向けて、情報開示していく感じ。実際、作者によると、このホーソーンシリーズは10作ほどを考えているそうです。
 とはいえ、それぞれ1作ごとに質が高いミステリになっているので、ホロヴィッツさんの作家としての力を感じさせます。

2 現実とお話との境目の距離感

 よくテレビドラマや小説で

「この物語はフィクションです・・・」

と出てきますが、このホーソーンシリーズは、

「登場する人物や団体はフィクションとは限らず、かなり実在するものがあります」。

 まず、作家のホロヴィッツさん自らが物語の語り手になっています。そして、自分が手掛ける仕事や脚本、エージェントとのこと、実在する妻との生活についても紹介しています。そして、自身のこれまでの経歴や転機などもさりげなくアピールしていると感じました。
 さらに、実在する人物や団体、仕事に細部にわたる記述があるおかげで、創作された物語ではあると分かりつつも、メタフィクションに達している感じさえしました。

3 タイトルのつけ方のうまさ

 「ナイフをひねれば」は「嫌なことを思いださせる、古傷に触れる」という意味の慣用句だそうです。
 今回の話でいえば、ホロヴィッツさんの過去作の不評などに触れられていることや前前作での因縁を引きずるサディスティックな女性警部との再会などと同時に、ホーソーンの過去や家族との関係も少しずつ明かされ、順風満帆ではなかった様子がうかがわれます。まさにホーソーンにとっても「嫌なことを思い出させられた、古傷に触れられた」状態。
 二人の要素とタイトルがリンクしていて、改めて感心させられました。
 
 話は違いますが、このNOTEでたくさんの方と関わる機会が増えました。
 記事を読む機会も増えましたが、

 やはり、初めに目が行くのはタイトル。
 いろんなタイトルのつけ方はありますが、読むだけで内容が見えてくるものや、おや?どういう意味かな?などの意味深なタイトルだと、記事ページを開きたくなりますね。

 そんなタイトルのつけ方も勉強したいなあと思いました。

著書情報
・発行所   東京創元社(創元推理文庫)
・発行年月日 2023年 9月8日


 
 ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです

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