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読書紹介25 「人魚の眠る家」

あらすじ
「娘の小学校受験が終わったっ離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた・・・。「おそらく脳死」という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気ともいえる薫子の愛に周囲は翻弄されていく。

感想

犯人あてミステリーではなく、「臓器移植」「脳死」をテーマにした物語でした。

メインは、やはり包丁で自分の娘を刺そうとした場面。
「脳死状態」の娘が生きているのか、死んでいるのか。
それによって殺人罪になるかどうか
…周りの訴え、問い詰めに迫力がありました。
自分もその場にいるかのように、胸に迫るものがりました。

最後、幻?が見えて、「自分が看取った」との確信する場面がありました。母親自身の心に、娘の死を受け入れる準備ができたことで見られた幻だったのではないか?と思いました。
最後の方で、毎年「遺影に使うつもりの写真を撮っていた」と明かしていたからです。
ちゃんと、そういう日が来ることは、母親自身でも分かっていた。
ただ、受け止めきれない、受け入れるまでに時間がかかったということだったのかなあと考させられました。

こうした「物語」になると、登場人物の会話などから受ける迫力が違うし、胸に迫って、考えさせられることが出てきます。
でも、これって実際に脳死判定を受けた家族が直面し、胸を痛めていることなのだろうと自分事として考えると、登場人物の母親の行動にも共感できるところが多いなあと感じました。

本文の中に、脳死や移植に関する説明もたくさん出てきました。
今現在(2023年)にも当てはまるのかどうか分かりませんが、こんなことが書かれていました。

脳死判定
・外国は、脳死を人の死として認めている。よって、脳死していると確認された段階で、たとえ心臓が動いていても、すべての治療が打ち切られる。延命措置が施されるのは、臓器提供を表明した場合のみ。
・臓器提供に承諾しない場合は、心臓死をもって死とする日本。
 「心臓は動いているけど死んだ状態」の脳死。
・本人が臓器提供意思を表示していたら、受け入れやすい。
 本人の遺志を尊重したと考えられるから。

脳死
・脳死の定義は、脳の全機能停止です。判定基準は、それを確認するものとされています。しかし、それは建前にすぎません。なざなら、脳について我々は全てを知っているわけではないからです。どこにどんな機能が潜んでいるのか、まだ完全に分かっていません。それなのにどうやって全機能停止など確認できるでしょうか。
・脳死と言うのは臓器移植のために作られたようなものです。
 竹内基準は、人の死を定義づけるものではなく、臓器移植に踏み切れるかどうかを見極める境界を決めたもの。

東野圭吾さんは、世間で話題になる、騒がれる前から、現代社会の難しい問題を物語として語っているところもすごいなと思いました。これまでにも「天空の蜂」で原発について、「片思い」で性同一性障害やジェンダーについて、「分身」でクローンについてなどを書いていて、多岐にわたります。読むだけで、いろんな知識も得られます。

著書情報
「人魚の眠る家」
東野圭吾
発行所   幻冬舎
発行年月日 2015年11月18日
値段    869円

皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです

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