読書紹介25 「人魚の眠る家」
感想
犯人あてミステリーではなく、「臓器移植」「脳死」をテーマにした物語でした。
メインは、やはり包丁で自分の娘を刺そうとした場面。
「脳死状態」の娘が生きているのか、死んでいるのか。
それによって殺人罪になるかどうか…周りの訴え、問い詰めに迫力がありました。
自分もその場にいるかのように、胸に迫るものがりました。
最後、幻?が見えて、「自分が看取った」との確信する場面がありました。母親自身の心に、娘の死を受け入れる準備ができたことで見られた幻だったのではないか?と思いました。
最後の方で、毎年「遺影に使うつもりの写真を撮っていた」と明かしていたからです。
ちゃんと、そういう日が来ることは、母親自身でも分かっていた。
ただ、受け止めきれない、受け入れるまでに時間がかかったということだったのかなあと考させられました。
こうした「物語」になると、登場人物の会話などから受ける迫力が違うし、胸に迫って、考えさせられることが出てきます。
でも、これって実際に脳死判定を受けた家族が直面し、胸を痛めていることなのだろうと自分事として考えると、登場人物の母親の行動にも共感できるところが多いなあと感じました。
本文の中に、脳死や移植に関する説明もたくさん出てきました。
今現在(2023年)にも当てはまるのかどうか分かりませんが、こんなことが書かれていました。
東野圭吾さんは、世間で話題になる、騒がれる前から、現代社会の難しい問題を物語として語っているところもすごいなと思いました。これまでにも「天空の蜂」で原発について、「片思い」で性同一性障害やジェンダーについて、「分身」でクローンについてなどを書いていて、多岐にわたります。読むだけで、いろんな知識も得られます。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです