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情報との付き合い方、組織の中での立ち居振る舞いのヒント~「ヒートアップ」

➀「情報」に関連する次の文章を見つけました。

・突拍子もない話は常識的な話よりずっと人を惹きつける。予想外の成功を匂わせるせいだろう。だが、その匂いの元には常に危うさが付きまとう。

 人間の特性として、客観的に情報に向き合っているわけではなく、自分の都合の良いように受け止める傾向があります。確証バイアスと言われるものです。

自分の考えに似ている情報は、簡単に受け入れてしまいやすく、逆に、反対の情報は受け入れられず、排除しようとする傾向です。

 また、「事実」は、ある意味、地味で地に足の着いた内容がほとんどです。
 目新しさはありません。その分、見た人、読んだ人の「感情を揺さぶる」ことはあまりなく、淡々と受け止められると言えます。
 
 しかし、フェイクニュースの多くは、センセーショナルで、目新しいものが多くなるので、みんなの注目を集めやすくなります。
 そして、「みんなに知らせたい」という思いを大きくして、拡散が速まります。
 
 次の言葉も、なるほどと思いました。

・悪い情報ってのは上から下に流れる。なるべく上のポストから情報を吸い上げるのはリスクマネジメントの基本です。

 先ほどのフェイクニュースとの関連でいえば、「一次情報を確かめる」ことの大切さが問われると思いました。

自分が現場に行くこと、
直接本人に聞きに行くこと、
本であれば原典にあたること、
ネットの情報では情報の出所を当たり、信用できるかどうかの判断

も必要になります。
 
 「グループ内で人から人へ言葉を順に伝えて、正確に伝わらないさまを楽しむ遊び」としての伝言ゲームがあります。

 人を介することで、その人の受け止め方、解釈が加わったり、言葉の不正確さが増したりしていき、初めの言葉とは全然違う内容が、最後の人に届きます。
 その不正確さが、遊びとしては楽しいですが、実際の社会生活の中では、「うわさ」だったり、「仕事のミス」になったりして、「不信感」につながっていくので、笑ってばかりもいられません。
 
 最近は、本物か見分けのつかない映像など、フェイクニュースを見破る事すら難しい世の中です。

せめて、自分が、安易に拡散することだけは、ひかえようと思いました。

②この「ヒート・アップ」の主人公は、麻薬取締官であり、自分が所属する厚生労働省や別組織になる警察などの関係の中で、どう立ち居振る舞うかも一つの読みどころでした。

ちょっと「激しい言葉」ですが(だからこそ)、次のような言葉が胸に響きました。

・上司を上手く使え。なるべく自分の自由裁量で動き、責任だけは上司に取らせる。それが、組織を快適に泳ぎ回るコツだ
 ・・・責任をとることそこ彼らの高給の理由だからだ。

・有能な管理職とは、在任期間中に揉め事を起こさない人材である。

・今この瞬間にもたった0,1gの粉末で地獄を味わっている人がいるというのに、己の保身に汲々としている役人など死んだ方が世の中のためです。

・相手をどれだけ信用しても、全幅ではなく必ず疑念をもってチェックする。それもまたリスクマネジメントの鉄則ですよ。人的なミスというのは大抵相手を信用するところから発生します。

・組織内の勇名も他の組織に伝われば悪名に変わる。

・華々しい功績を挙げたものは、そうでない者から謂れのない反感を買うのは事実でしてね。それは一般人であろうと警察官であろうと変わりません。

・公務員の得意技というのは何だか知っていますか?まず、逃げることなん
ですよ。責任から逃げる。追及から逃げる。そして自分から逃げる。わたしたちの仕事は国家の仕事であって、わたしたちは国家の手足になって動いているに過ぎない。国家のミスをいちいち個人に向けられたのでは身が保たない。だから、逃げる。それはもう公務員の性のようなもので・・・。

 私には別世界、全然知らない世界の話ですが、間接的であっても、その世界で生きる人の息遣いや思い、どんな様子なのかを知れるのも、本を読む良さの一つだと思います。

 例えば、「半沢直樹シリーズ」を読んで、銀行の仕事や融資とは、何ぞやということを知ったり、「舟を編む」を読んで、辞書作りの裏側を知れたり。

 もちろん、経験したことがない組織や職種であっても、「人間の本質」が描かれているところは、共感したり、そうだよなあ、そうするわねと理解できたりするところ多かったです。
 
 特に、今回の「組織」の中で働くことについての描写は、読む人の多くが、自分の職場と「似ているな」と思い当たる内容が多いのではないかと思います。
  
③お話のあらすじは次の通りです。

七尾究一郎は、おとり捜査も許されている厚生労働省所属の優秀な麻薬取締官。製薬会社が兵士用に開発した特殊薬物「ヒート」が闇市場に流出し、それが原因で起こった高宗の捜査を進めていた。だがある日、殺人事件に使われた鉄パイプから、七尾の指紋が検出される・・・。誰が七尾を嵌めたのか!?誰も犯人を見抜けない、興奮必至の麻取ミステリー。

 ミステリー作品でもあるので、最終的に、指紋を使って主人公を陥れた黒幕が誰なのかを考える、犯人当ても楽しめる作品です。

 今回も、私は、まんまと作者の術中にはまり、最後まで、誰なのか分かりませんでした。というか、見事に騙された~という感じです。そして、読み終わった後に、自分が職業と性別に対する固定観念がいかに強いのか、ステレオタイプ的に捉えているということも思い知らされました。
 
 作者の中山七里さんは、「さよならドビュッシー」で2010年にデビューしましたが、青春音楽ミステリーからパニック小説、リーガルサスペンス・・・とバラエティに富んだ作品を短い期間に次々と生み出しています。
 次は、どの本を読もうかな? ワクワクしています。

 
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心に残る一言・学びがあれば幸いです
 

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