
読書紹介60「上達の法則」
表紙裏の言葉より
仕事でも趣味でも、たえず新しい知識や技術の習得が、人生を豊かにする。英会話、パソコン、ゴルフ、さらに、あらゆる資格や稽古ごと等々。
やる限りは上達したいものである。万年初心者ではつまらない。では、上達を極めた人と、そうでない人と、どこが違うのだろうか?
本書は、記憶と認知の心理学に基づき、上達の力学が<スキーマ><コード化>にあることを解明。その理論から、独自の精密練習法やスランプ脱出法を紹介する。努力が報われるために、本人、親、教育者、コーチ必読の書。
感想など
上達するには、もちろん、この本に書かれているような科学的な理論に基づいた効果的な練習方法や法則に基づいた行動が必要です。
しかし、根本にあるのは、その人の思い。
上手になりたい、できるようになりたいという強い願いです。
その願いや思いが、行動へのモチベーションになりますし、ちょっと辛い、退屈な練習も継続していけるようになります。
本の中では、「上達の法則」として、次のような紹介がありました。
<初心者から中級者へのステップ>
・まず始めてみる
・入門書読む
・練習や学習の頻度を決める
・学習の場を決める
・自分の得意を見つける
<中級者から上級者へのステップ>
・鳥瞰的認知を高める
ノートをとる
概論書を読む
・理論的思考を身に着ける
理論書を読む
・精密に学ぶ
ひとつのものを深める
対象を変えて精密練習を繰り返す
深い模倣や暗唱をする
・イメージ能力を高める
他者を見て、感情移入する
よい作品を見る
・達人の技に学ぶ
達人と直接会う、話す
達人のエラーに学ぶ
・広域コードと知識を拡大する
他者の個性を記述してみる
広域知識を獲得する
歴史的経緯を知る
<上級者になる特訓法>
1 反復練習をする
2 評論を読む
3 感情移入をする
4 大量の暗記暗唱をする
5 マラソン的な鍛錬をする
6 少し高い買い物をする
7 独自の訓練方法を考える
8 特殊な訓練法を着想するプロセス
9 独自の訓練から基本訓練に立ち返る
10 なにもしない時期を活かす
私は、「上達の秘訣」としてつぎの2つを実感しています。
1 量質転化
2 全体像をつかんでから、部分(ここ)へうつる
1 量質転化について
たくさんの量をこなすことで、あとで質が向上するということです。
何でも初歩の域を出るには、「百」ほどの練習量が必要です。
有段者では「千」、プロでは「万」ほどの練習量が必要です。
「1000本ノック」や「3年(1000日)働いて会社を辞めるか判断しろ」等と言われます。落語の修業では「小噺百回」。和裁の修業でも「まず百枚、縫え」といわれます。根性論ではなく、ある程度量をこなさないと急速な成長が訪れないことが経験則として分かっていたからこその言葉だと思います。
以前、ピアノを習っていました。
大人になってから始めたこともあり、なかなか左手が動かず、思うように弾けませんでした。バイエルが少し弾けるようになってきたところで、やめてしまいました。すると、基本的な練習量が足りなかったので、質的な向上もなく、あっという間に習う前と変わらない水準に戻ってしまいました。毎日のトレーニングの中で、目には見えなくても「努力の蓄積」があると、あるとき加速度的な成長につながっているのだと思います。
2 全体像をつかんでから、部分へうつる
とにかく目の前にあるものから手を付けて、やってみることも大切ですが、ある程度練習が進んだら、最終的な目標も含めて、「全体像の把握」が必要です。
今、自分がどこ辺りにいるかを知ることで、その後の計画を立てやすくなります。
あるいは、見通しをもつことで、モチベーションを維持しやすくなります。
私は、社会科の勉強が苦手でした。
とにかく、暗記することが多くて、多くて。そしてつまらなくて・・・いつも嫌々勉強していて、成績も上がりませんでした。
歴史の勉強では、とにかく教科書に出てきた順番通り、人物名や出来事を何回もノートに書いて、呪文のように唱えながら覚えていましたが、あまり効果はありませんでした。
そんな時、社会科の先生に「全体」を把握してから、因果関係、出来事のつながりを考えながら、ストーリとして読むといいアドバイスをもらい、勉強が楽しくなった覚えがあります。
例えば、江戸時代。
アドバイス後は、例えば次のように勉強が変わりました。
・江戸時代を一言で言うとどんな時代か
江戸時代は、戦国時代とは違い260年ぐらい平和な世の中になった時代。
・そのために、だれが何をしたか?
徳川家康・家光
「武家諸法度」「参勤交代」「大名の配置を工夫」・・・
「身分制度」「五人組・・・
・平和な世の中になってから、生活の中での楽しみが求められ、何が広まった?
文化~歌舞伎、浮世絵
こうすると、やみくもに覚えるより、意味がつながり、まとまりごとに関連づけて覚えやすくなりました。
また、「政治」「文化」「社会の様子」「外国との関係」など、江戸時代と言っても、どんな内容の勉強をすればいいか、自分には今、何が足りないか(わかっていないか)の把握もでき、勉強しやすくなりました。
たぶん、習い事や資格試験などでも同じで、何が必要か(どんな勉強内容があるのか)リストアップして、もれなく取り組んでいくと、勉強しないままテストにのぞむということは減ると思います。
私にとっては、量をこなすことと、全体像を把握することが上達の近道のようです。
それぞれの人にあった上達方法を見つけるのに、今回紹介した「上達の法則」の本は有効だと思いました。
発行所 PHP新書
発行年月日 2002年5月29日
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです