「自由」からの逃走
「あなたは今日から自由です!」
この言葉を聞いたとき、あなたはどのような未来を想像するだろうか。
学校や職場から解放され、好きなことをして過ごせる、そんな自由な日々を夢見る人も多いだろう。
しかし、私たちが手に入れた「自由」は、本当に「自由」なのだろうか。
心理学者エーリッヒ・フロムは、著書『自由からの逃走』で問いかける。
かつて、人間は集団の一員として生きていた。
個人の自由は制限されていたが、その分、安定した生活であった。
数々の革命や戦争を経た近代社会に生きるわたしたち。
集団や政府の圧力から解放され、「個人の自由」を手に入れた。
しかし、同時に孤独や不安を感じるようになった。
人間は1人で生きていけるほど強い生物ではない。
その結果、わたしたちは孤独や不安を解消するために、権威や集団にしばしば頼ろうとしてしまう。
例えば、特定の思想や価値観を持つコミュニティに属したり、特定のブランドの製品を消費したりすることで、自分自身を安心させようとするのだ。
このような状況をフロムは次のようにまとめている。
「近代的産業組織は個人を発展させたが、彼を一層無力なものにした。 それは自由を増大させたがーしかしー新しい依存を生み出した。」
では、孤独を解消しながらも自由に生きることはできるのか?
本来の自由とは、単に外部からの束縛から解放されることではない。
「自発的な愛と仕事」を通じて自己を実現することだと説いている。
自発的な愛とは、相手を所有物としてではなく、一人の人間として尊重し、共に成長していくような愛である。
自発的な仕事とは、単に生活のために働くのではなく、自分の能力や創造性を活かして、社会に貢献するような仕事である。
これらの活動を通じて、わたしたちは自我を犠牲にせず、人々や自然と能動的に関係を結び、自由に生きることができるという。
現代社会において、「自発的な愛と仕事」を実践することは容易ではない。 SNSの発達により、常に他者と比較され、孤独感を増幅させがちだ。
また、グローバル化が進み、競争が激化する中で、常に焦燥感を感じている人もいるだろう。
しかし、わたしたちは「自発的な愛と仕事」の実現に向けて努力する必要がある。
本来の自由を手に入れるために。
本当の自由とは、単に外部からの束縛から解放されることではない。
「自」という意味は、自他対立の意義を含まない、絶対性を持つ自である。
つまり、本来の自由は、「積極的に」「独自の立場で」「自分自身の創造性」をそのままにはたらかせることなのだ。
あなたにとって、「自由」とは何だろうか。
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