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『ぼけますから、よろしくお願いします。』と紀伊國屋


ずっと観たいと思っていた
信友直子監督のドキュメンタリー映画
『ボケますから、よろしくお願いします。』
を、今日やっと観ることができた。

あまりにもGardenerさんと重なる部分が多くて
涙が止まらなかった。


『ボケますから、よろしくお願いします』に出てくるお父さんとEngineer さんも似ている部分が多々あって、そこも重ね合わせながら観た。

去年までのGardenerさんの様子(認知症初期)と、
今年のGardenerさんの様子(おそらく中期)と、
そして
もしかしたら当てはまるであろう
そう遠くない未来のGardenerさんの姿をイメージしながら、
わたしはわたしとも対話しながら
映画を観ていた。

実はこの1か月くらい
わたしはGardenerさんに会いに行けていなかった。

行かなくても大丈夫だった理由は、
Gardenerさんが落ち着いていたということと
Engineerさんや周りの人達が支えていたということがあった。

それにわたしは
自分のことでこの1か月だいぶ忙しい日々だった。

でも、一方で
バカ正直に言うならば、
行けなかった理由が他にもあった。

それは
「ちょっと距離をとりたかった」
という気持ちがあったということ。

認知症が進行していくことを直視するというのは、(特に去年)わたしにとっては必要以上のエネルギーを使うことだった。

昨年末までは、
福祉のサービスを活用してみる、
医療機関へつなぐということを試みては、
そのことに肯定的なわたしたち周囲の者と、
受け入れ難い二人との間でいつも答えが出ないまま平行線で、
解決も進展もなく現状は悪化し、モヤモヤすることばかりだった。

そしてそのことに
昨年は長期に渡って向き合った結果、
最終的には「なるようにしかならない」
「今はまだ医療や福祉サービスを入れる時ではない」と、
わたしも周りも納得に至ったのだった。

それはそれでよく、
もはやそれ以上でも
それ以下でもなかった。

わたし達はみんなで十分な着地点に辿り着き、
そして2024年を迎えた。

1月はお正月休みもあり、
わたしも昨年とは違う感覚でGardenerさんとEngineerさんと向き合えるようになった感じがしていたので、
自分にできることとして
お弁当を作ったり、冷蔵庫を整理したりと
できることはできる範囲でしていた。

ただ、知らず知らずのうちに
それまでに蓄積されてきたと思われる精神的な疲労が、
その時からわたしの中で結構膨らんできていたのだ。

結果的にわたしは
気がつくと2月中
Gardenerさんに会いに行くことができなくなっていた。

なんとなくの罪悪感を抱えながら
わたしは昨日、おとといとGardenerさん会いに行き、久々に一緒に過ごした。

Gardenerさんは
寒い日なのにとても薄手の春物コート着て
わたしを最後まで見送り
「また顔出してね」と言ってくれた。

そして今日
『ボケますから、よろしくお願いします。』
を観た。
監督の信友さんのお話も伺えて、
信友監督も同じような時期を経ていたことを知り、
わたしは思った。

「去年の私も 2月の私も 今の私も これでいいのだ」と。

信友監督は
わたしの心に深く共感してくれる人だった。
悲喜交々の感情含め、認知症の捉え方、向き合い方、いろいろな点において
わたしにとってとても貴重な共感者だと感じた。

信友監督の映画は、
Gardenerさんが認知症と思われる状況になった初期から、
わたしが認知症ケアをする時に大事にしたいと思っていた気持ちである
「せっかく生まれてきたのだから、最後まで豊かに共に楽しく生きたい」
「時に悲しみを笑いに変えて、ユーモアのある認知症ケアをしたい」
「感謝を表現したい」
という気持ちを再度わたしに思い出させてくれた。

この映画通じて、
信友監督に出会って、
信友監督のお父様とお母様に出会って、
わたしはひとりじゃないんだと感じた。

認知症になったら
何だって起こる。
優先順位はガラガラと変わるし、
かなしいことも理解しがたいことも山ほど起こる。
でもわたしは、
できるだけそのことの中に含まれる
「人の生きる意味」や「よろこび」「豊かさ」に光を当て、
そこから生まれるユーモアで、一緒に生きていきたいと思っていたのだった。

そして
そうやって思っていた自分を
再びこの映画を通じて取り戻せた。

映画の帰り道
美味しいものが大好きなGardenerさんと昔、
青山の紀伊國屋に行くと買っていたツイストドーナッツを思い出し、
GardenerさんとEngineerさんのためにドーナツを買った。

明日はこのツイストドーナッツで
いろんな記憶の旅がGardenerさんに起こるかもしれない。

思い出し、
懐かしみ、
今日まで過ごしてきたことの美しさを、
このツイストドーナッツを食べながら
Gardenerさんと一緒に味わいたいと思う。













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