優生思想の生まれるところ
私は自分の父を、明治生まれにしては頭の捌けた方だととらえていた。まだ専業主婦が希少種になる前の世代の私にも職業を持つように勧めたり、結婚後、自分の仕事の手伝いにさせようという目論みがあったにせよ、若い妻を学校に通わせたりした男性である。
それでも私が夫と結婚する時、相手方に精神異常者はいないか、などと「はてな』と思うような質問が出た。母も当然のようにその質問を「大切なことだよ」と同意したし、部落出身者でないかとも尋ねた。明治38年生まれと大正13年生まれの人間としては、それ