木村緑夏

「ことば」の持つ力から想いが離れません。ひとのことば、書かれたことば、温かいことば、荒々しいことば、ことばはさまざまあって、刺さりもするし、力付けもする。わたしはことばを紡いで誰かを温めたいと思っています。

木村緑夏

「ことば」の持つ力から想いが離れません。ひとのことば、書かれたことば、温かいことば、荒々しいことば、ことばはさまざまあって、刺さりもするし、力付けもする。わたしはことばを紡いで誰かを温めたいと思っています。

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短い物語のページです。

自己紹介。 原稿用紙にすると30枚くらいの短い物語を書いています。3〜4回で読み切れるサイズ。時折、やむに止まれず、いたたまれず、どうにもならず、吐き出すように、(全部ダメですよね?)書いてしまうエッセイもあり。読んでくださったらうれしいです。

    • 優生思想の生まれるところ

      私は自分の父を、明治生まれにしては頭の捌けた方だととらえていた。まだ専業主婦が希少種になる前の世代の私にも職業を持つように勧めたり、結婚後、自分の仕事の手伝いにさせようという目論みがあったにせよ、若い妻を学校に通わせたりした男性である。 それでも私が夫と結婚する時、相手方に精神異常者はいないか、などと「はてな』と思うような質問が出た。母も当然のようにその質問を「大切なことだよ」と同意したし、部落出身者でないかとも尋ねた。明治38年生まれと大正13年生まれの人間としては、それ

      • 面倒くさいの話

        亡くなった母は施設に入るまでは一人暮らしをしていた。私は隣県に住んでいて、一人で、時には娘を伴って母の家に顔を出すのだが、その訪問が常にいくらか憂鬱だった。母に会うこと自体は楽しいことではあるし、老いた母のことは心配でもある。だが、彼女はいわゆる「片付けられない人」だったのだ。 現在はそれは症状として病的な分類に分けられ治療法も対処法もあるらしい。当時、そういう母の日常は親戚には「まだらボケ」と呼ばれていた。70代の母は会話は普通にできるし、火の始末や金銭の管理も自分ででき

        • いい気な野郎ども

          「女性は女性議員に投票しない。女性というものは女性が嫌いなんじゃないだろうか」という知人男性の嘆きがあった。我が国に女性政治家が少ないのは、女性立候補者が出ても当選しないからであり、それは女性が女性に投票すれば解決する、というのが彼の問いである。 うーむ、これはどうなんだろう。女性立候補者は数が少ないから、もしかしたら有権者の半数に当たる人々=女性がこぞって投票すれば可能性はあるかも知れない。彼は続けて言う。女性なら誰でもいいのだ、と。まずは女性議員が増えないことには変わら

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        短い物語のページです。

          誇りある動作

          最近友人から、思いもかけぬ良いことばをもらった。週末のカフェでいつもの近況報告からの流れで、路上駐車についてになった。 私や私の家族は基本的に路上駐車ができない。展覧会などを催す仕事柄、搬入搬出というものがある。店頭にちょっとの間、車を停めて積み込んだり下ろしたり、時間にして10分が関の山だろう。それにしても予めその場に近い駐車場を確保して、荷物をまとめておいてさっと済ませる。 一方、これが平気な人々もいる。よく見かけるのは我が家のそばの国道1号線の食料品店前と銀行前だ。

          誇りある動作

          快感を追いかける

          高齢者と言われる分類の年になって、やっとわかったことが結構色々あってなかなかに興味深い。そのひとつに「私は何をやって生きるべきか」というのがある。 具体的に言えば、仕事。何をやって生活の糧を得るか、というやつ。これの収まりが悪いともぞもぞして腹が決まらない。いつまでも自分探し的な迷路にはまり込んだような気分がとれない。 とは言え、若い人々には挑戦する権利も失敗する権利もあるし、近道に見えたとしても必ずしもそうでもなかったりするので、教訓を言うつもりはない。重なって存在する

          快感を追いかける

          「その話、ここでされるの、不快です」

          5月10日、金曜日。朝のテレビでは「男とか女とか、服装とか、関係ない世界で一番になりたい。そんな世界を作っていきましょうよ」と寅ちゃんが現状に怒りを込めて論じていたけれど、私はその前日からちょっとモヤモヤしていた。 夕方近く、年に数度の大切な機会である作品展をしているギャラリーに「見せてください」と言って入ってきた老年男性。 「いやぁ、すごいなぁ、女の人は」「この頃は活躍しているのは女の人ばかりだ」と女性を持ち上げる発言を10連発。この C市でもサーフィンで活躍している女子

          「その話、ここでされるの、不快です」

          やっと自分を生きられる

          ヘミシンク、という不思議なものに取り組んで一年が経った。 昨年は家庭内学習というCDをよく聴いて、日帰りの講習を受けたり、1週間の漬けこみ合宿的なものを受けてみた。今では家庭内学習CDを週末に聴く程度になった。ヘミシンクについての私のすごくざっくりした説明は過去の記事にあります。 ふと気づくと、当初のあの深いリラックス感が今のヘミシンク後には無い。無いと思ったら、実は深いリラックス感は日常化しているのだわ。なんて素晴らしい。 交感神経の説明でよく見かけるように、交感神経は

          やっと自分を生きられる

          イージーゴーイングな人々(台湾旅)

          台湾は男の人が怖くない。そう書くと、誤解を招きそうなので説明が必要だね。 日本ではかつて家うちの男性を表現するのに「嵩高い」という言い方をしたものだ。娘世代以降の方々は知らないことばかも知れない。父親、あるいは知人の夫というもののあの何となく大きくて邪魔くさく、しかし邪険にもできない軽くも扱えない、少々面倒な感じ、と付け加えると見当がつくだろうか。 例えば少女の頃、友人宅へ行った際に「今日お父さんいるんだ」と言われると「あっそうなんだ」と首をすくめるような。決して悪い人では

          イージーゴーイングな人々(台湾旅)

          帰ってきた猫、来ない猫、行った猫

          友人の猫ちゃんの一匹がもう一月近く行方が知れない。 短歌を書いて祈っているのをインスタグラムで知り、私がその昔書いた短歌を伝えてみた。ニケ、君のことだよ。 「瀬をはやみ岩にさかるる瀧川のわれても末に逢わんとぞ思う」飼い猫たちを室内から一歩も出さない今より、ずっとワイルドだった45年くらい前の東京の話。 車のほとんど入ってこない道の突き当たりにあった木造貸家、その一階に住んでいた私たちの猫、ニケはある時いなくなって随分心配した。諦めるということを知らない若い私は、全身全霊で探

          帰ってきた猫、来ない猫、行った猫

          基礎控除に文句があります!

          政策って言うと難しそうだし、予算とか法律とか、クリアしなければならないものがつきまとうものなんだろうな。でも、こうであって欲しいというアイディアを書き出していくのは、実際考えの道筋を作る役に立つし、もしかしたら友人知人や他の人たちだって、私ならこういうのがいいよ、と意見が生まれるかも知れない。 だから、ちょっとづつやってみようと思う。 さて、まず一番に声を大にして言いたいことがある。毎年2月の末頃、つまり確定申告をするたびに「くぅ〜っ」となることがある。確定申告をするように

          基礎控除に文句があります!

          エアポート成田の行方

          12月初頭に台湾旅行をした。リウマチを患った年の10月のプラハ、12月のアフリカ、ルワンダ行きが最後だったから海外に出るのは11年ぶりということになる。その間の私には2年間の激痛の日々に続いて5年間の車椅子暮らし、そして新型コロナ感染症期間があった。 久しぶりだし、旅元年ということにしようかしら。養う子もない境遇なので、時間をとって若い頃みたいな手作りの旅行をしようと思い立った。体力的に、貧乏旅行はできないまでも急がない旅がしたい。 湘南から成田空港へは成田エクスプレスが

          エアポート成田の行方

          30年ぶりのキリスト降誕劇(遠くの国で苦しむおともだちのこと)

          孫が娘と同様キリスト教系の保育園にお世話になっている。私はキリスト教ではないので全くの偶然だが、30年振りにクリスマスページェント(キリスト降誕劇)を鑑賞することになった。祖母として幸せなことではある。 登場人物はヨゼフ、マリア、天使達、羊飼い達、東方の賢者3名、宿屋の主人達と多く、おまけに今回はヨゼフもマリアも二人づついるという豪華版。数年前は人前で体を動かして披露することを飲み込めなくて、小さく丸まっていた彼も今日は元気に歌声を響かせていて、成長を感じさせられた。 幼

          30年ぶりのキリスト降誕劇(遠くの国で苦しむおともだちのこと)

          ストップ、 イスラエル

          パレスチナは遠い。フランスやらオランダやらのヨーロッパより実際の距離は近いのに、文化と情報が遠いのだ。いったいパレスチナとはどんな国で、ガザとはどんなところなんだろう?そう思って調べたのは10年にも満たない数年前なのを覚えている。 同僚が聴いているイギリスBBC放送は現地の様子を実況中継しているのだろうか、ものすごい緊迫感が伝わってきて、私はドキドキし過ぎて心のざわつきが治らず、イヤホンをつけてもらった。(日本の報道、どうなの?と思う) 現在の最右翼的なイスラエルの強硬な

          ストップ、 イスラエル

          わからないことをわからないままに

          森達也監督の映画「福田村事件」が封切った。少し前からこの事件を史実として調べ続けてきた辻野弥生さんの同名著書を読んでいた。 地球に起こる人類のもたらす災いのうち大規模なものの多くは「善人が善人を殺す」という形態をとっている事実を考える。アウシュビッツ然り、ルワンダの大虐殺も、この福田村事件に限らず関東大震災で起きた全国的な朝鮮人虐殺もそうだ。大きな括りで言えば戦争もその範疇に入るかも知れない。 私たちは扇動するものがあれば簡単に扇動され、勢いづく。これを止めるためには扇動

          わからないことをわからないままに

          緑で武装する(心の弱いまだ見ぬ友人へ)

          長いこと、人類の歴史を直視するのを避けてきた。歴史というよりは、人類がしでかしてきたこと、というべきか。なぜならそこにはいいものもあるが、悲惨なこともたくさんあるからだ。知るべきことがあることを感覚ではわかっていたからこそ、自分がそれを直視するのに耐えられないと思ってきた。 私は若い頃から同調する感情が強すぎて、遠くの話でも平常心に戻るのに数日を要することがある。新聞もテレビも見ないのはそのせいで、マスコミに対する批判からくる意識高い系だからなんかじゃなく、つまりは逃げてい

          緑で武装する(心の弱いまだ見ぬ友人へ)