読み終えると精神が狂う本、ドグラ・マグラを読んだ。

ドグラ・マグラを読んだ。

読むと精神が狂うなどとよく言われている変な本だ。興味本位で読んだ。興味本位で読むものじゃなかった。

ドグラ・マグラについてはWikipediaが分かりやすいのでそちらの引用を。

『ドグラ・マグラ』は、探偵小説家夢野久作の代表作とされる小説で、構想・執筆に10年以上の歳月をかけて、1935年に刊行された。小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』と並んで、日本探偵小説三大奇書に数えられている。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドグラ・マグラ

日本探偵小説三代奇書に数えられている……この小説を表すのにこれ以上適切な言葉は見つからないだろう。

小説の内容としては、記憶を失った『私』が誰なのか……という話なのだが、なんにせよ寄り道が多い。
「今なんの話??」と思いながら読んでいるシーンがほとんどだった。
だが断片的なその文たちが徐々に繋がっていく快感は何物にも変え難い。

そんなドグラ・マグラの性質がよく分かる一文を引用させていただく。

「ムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャ  …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」

—『ドグラ・マグラ』夢野 久作著
https://a.co/bQCbaYd


なんだこれ。自分で引用して何だが、なんだこれ。
江戸川乱歩が「訳のわからぬ小説」と評したのもよく分かるし、読み終えて思うのだが、本当にそれ以上の感想が出てこない。

人間の本質について

こんなドグラ・マグラだが、人間の本質についてとても的確な事を書いている。
(的確と感じるのは私と夢野久作の意見が合うというだけだったりもする)

「所謂、紳士淑女連中が、自分のアタマと五十歩百歩の精神病患者を見るとヤタラに軽蔑したり、恐れたりする。自分だけは誰が何と云っても精神病的傾向をミジンも持たない、完全無欠なアタマの持主だと自惚れ切っているから、ツイ吾輩も冷やかしてみたくなるのだ。……」

—『ドグラ・マグラ』夢野 久作著
https://a.co/bFrnmi4

人間は皆精神異常を抱えているんだよ、というような話の流れからのこれだ。本当にその通りだし。ヤタラに軽蔑、ミジンも持たない、冷やかしてみたくなる、という表現も最高。
一言一言に皮肉がこもっている。

「この「自己恋着」と名づくるものの中にも亦、積極消極、両極端の合一せる変態あり。すなわち自己に対する極度の愛撫、粉飾等は進んで自己の虐待、自己の一部露出、もしくは覗見等の変態趣味に移り、一転して自己の軽視、冷遇、嘲笑、嫌忌もしくは自己恐怖等の心理を感ずるに到り、更に進んで自己虐殺の快適、もしくは自己の屍体幻視の快美感耽溺者となり来るものなり。」

—『ドグラ・マグラ』夢野 久作著
https://a.co/hrH82yD

これも好きだ。
ナルシズムが行き過ぎると自殺に走る……
よく分かる。落ち込んだ時に悲劇のヒロイン化する奴もこの辺りの心理だろう。

「応接間に聞えて来る小鳥の啼き声が、今の今まで真面目であった男女の間に、不倫な情緒を起させるキッカケになったり……」

—『ドグラ・マグラ』夢野 久作著
https://a.co/6ktu2lV

かと思えば、こんなにロマンチックな事も書いていたりする。
今まで見てきた恋物語よりも、このたった三行の方が遥かにロマンチックだと思う。
人間の愛を分析した結果、色々なものを削ぎ落としたこの文が、激しく私の心を動かす。

ドグラ・マグラが足りない

私はゆっくりドグラ・マグラを読んだ。一ヶ月程かけて読んだ。
何より長いのでとても時間がかかった。
仕事終わりにドグラ・マグラを読む事を習慣にしていたせいで、今仕事終わりにドグラ・マグラを読んでいないこの状況が気持ち悪い。
このままだともう一度この本を1ページ目から読み始めてしまう。
もう読みたく無いのに、読んでている時は早く終わらないかな……と思っていたのに。
またドグラ・マグラが読みたくてしょうがない。
記憶を消して気怠さに包まれながら嫌々ドグラ・マグラを読みたい。
人は好きな人の名前を呼びたくなると言うが、私もこの感想文の中で何度ドグラ・マグラとこの作品の名を呼んだだろう。
私は恋をしたのかもしれない。恋は精神異常か。
恋が精神異常だとすれば、私もドグラ・マグラを読んで狂った一人なのかもしれない。

また読みたい。同じように恋をしたい。

ドグラ・マグラはKindleで無料で読めるのでぜひ読んでみて下さい。

お目汚し失礼致しました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

#読書感想文 #ドグラ・マグラ  
#人生を変えた一冊


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