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クッキーと油脂のサクサクな関係 note食品学 2食目

同じ小麦粉を使う調理でも、うどんを作るときには、油を使わないのに、クッキーを作るときには、バターを使うのはなぜでしょうか?

自家製マヨネーズを作るときには、なぜ卵黄を加えるのでしょうか?

お菓子作りは「レシピ通り」にやるのが成功の秘訣!と思って、なぜ?を考えたことのなかった人は、

・クッキー作りで「バター」を使う理由
・マヨネーズ作りに「卵黄」を使う理由

をぜひ考えてみてください。

今回のnote食品学の中には、その答えのヒントが書かれています。今回は、「脂質」について学んでいきましょう!


脂質のPOINT

①脂質の定義と分類

②脂肪酸と油脂の関係

③複合脂質の性質

④油脂の性質


①脂質の定義と分類

食品成分を化学物質として捉え、化学的な定義をまず考えていきます。

脂質は、水に溶けずに、アルコールやクロロホルムなどの有機溶媒に溶ける有機化合物の総称と定義されています。ただ、この定義だとアルコールに溶けやすい性質を持つものは何でも「脂質」となってしまうので、もう少し狭い定義として、「長く連なった脂肪酸や炭化水素鎖を持つ生物由来の化合物、またはその誘導体」とする定義もあります。

分類はこんな感じ

note食品学 脂質-3

食品中の脂質の大部分を中性脂肪が占めています。

自分のからだの中性脂肪も気になるけれど、、、動物のからだに多く含まれる中性脂肪について知ることは、食品の脂質について理解を深めることに繋がりますね〜


②脂肪酸と油脂の関係

単純脂質に含まれるトリアシルグリセロールや複合脂質のリン脂質の構成成分として「脂肪酸」という物質があります。

魚には「EPA」や「DHA」が多いと聞いたことがあるかもしれません。あの「DHA」や「EPA」が脂肪酸です。

脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。

分子内の炭化水素鎖に二重結合がない脂肪酸を「飽和脂肪酸」、二重結合をもつ脂肪酸を「不飽和脂肪酸」といいます。

2個以上の二重結合を持つ不飽和脂肪酸は「多価不飽和脂肪酸」といいます。

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グリセロールに3個の脂肪酸がエステル結合したものをトリアシルグリセロールといいます。食品中の脂質の大部分をトリアシルグリセロールが占めています。


グリセロールにエステル結合する脂肪酸の組成によって、油脂の形態や性質が異なってきます。

動物性油脂と聞くと、どのようなイメージでしょうか?
バターや牛脂を思い浮かべるでしょうか?
動物性油脂では、長い炭素鎖を持つ飽和脂肪酸や一価の不飽和脂肪酸が多く、室温で固体です。

一方で、大豆油やオリーブ油などの植物性油脂では、分子内に二重結合を複数持つ多価不飽和脂肪酸が多く、室温で液体です。

飽和脂肪酸は、分子内に二重結合を含まないので分子が綺麗に真っ直ぐ伸びています。直鎖状の脂肪酸同士はきれいに整列し、密に集まることができます。そうすることで分子同士の分子間力が働き、固体的になります。

一方で不飽和脂肪酸では、分子内に二重結合があるため、そこからねじれる構造をしています。

折れ曲がった不飽和脂肪酸同士は、密に集まりにくく、分子間力が働きにくくなるため、固体を維持できず液体的になります。

それぞれの形態の違いから、室温で個体の油脂を「脂」、室温で液体の油脂を「油」と異なる漢字で表記する事もありますね。

サラダ油と書いても、サラダ脂とは書かないですし、牛油とは言わず、牛脂ですね。


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動物性油脂だけれども「脂」でない例外の食品があります。
魚の油「魚油」は、植物性油脂と同じ「油」を使います。

魚の油脂に多いのは、DHAやEPAといった多価不飽和脂肪酸です。

魚の油は、動物の中では珍しく不飽和脂肪酸を多く含む室温で液体の「油」なんですね。

魚油に含まれるEPAやDHAが注目されるきっかけになった疫学的調査があります。
グリーンランドに住むイヌイットは、野菜をほとんど食べない食生活にも関わらず、デンマーク人と比較して心筋梗塞になるリスクが極めて低いことがわかりました。

これは、イヌイットの人たちが魚やアザラシをよく食べていたことが関係しています。

魚やアザラシの脂質に多く含まれるDHAやEPA。
これらの脂肪酸は、食事から摂取し、血液中に高い濃度で存在することで、血液が固まりにくくなり、心臓疾患になるのを防いでいることが分かったのです。

油脂と聞くと、太る、摂り過ぎると体に悪いというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、体にとって良い油脂、良い脂肪酸というのが存在する良い例ですね。


③複合脂質の性質

複合脂質の代表選手は、リン脂質です。

体の中の細胞膜の構成成分として生物で習ったことがあるかもしれません。

皆さんの食生活で考えてもらうと、「マヨネーズ」を作るためにリン脂質が役立っています。

マヨネーズの材料は、酢と油と卵です。

水と油は混ざりにくいですが、マヨネーズは見事に混ざり合っています。

これは卵黄に含まれる「レシチン」というリン脂質が、水と油を細かい粒子で分散させて混ざり合った状態にする役割を持っているからです。この混ざり合う作用を「乳化」といい、乳化の目的で使うレシチンのことを「乳化剤」といいます。

最初の項目で、脂質は、水には溶けずに有機溶媒に溶ける物質と最初に定義しました。

しかし、リン脂質は分子内に、水に溶けやすい部分も持ち合わせているちょっと例外な脂質なんです。

水に溶けやすい部分と油に溶けやすい部分の両方の性質を持つ脂質だから、水と油を混ぜ合わせるのに役立つ「乳化剤」の役割を持つんですね。

脂質にも色んな役割があるんです。

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ちなみにレシチンは、大豆にも含まれています。

卵アレルギーの方でもマヨネーズが味わえるように、卵を使わずに大豆レシチンで乳化させた「大豆マヨネーズ」という商品があります。

ただし、卵を使わないものは、JAS規格から外れるためマヨネーズとは表記できずに、マヨネーズ風ドレッシングのような品名で販売されています。


④油脂の性質

なぜクッキーを作る時バターを入れるのでしょう?

同じ小麦粉を使う「うどん」をつくる時には、使わない油脂をお菓子作りではよく使います。

なぜでしょうか?

これには「グルテン」が関係しています。

グルテンは、小麦粉に水を加えて混ぜることで、小麦粉のなかの「グリアジン」と「グルテニン」というタンパク質同士が絡み合い、網目状の式を作り、粘着力と弾力を備えた「グルテン」となります。


小麦粉を使った調理では、グルテンを形成させることで、弾性や柔軟性が生まれ、食べた時のコシやもちもちとした食感に繋がります。

しかし、モチモチクッキーやのびーるビスケットというのをあまり見ないように、クッキーやビスケットでは、サクサクとした脆く、砕けやすい性質(ショートニング性)が好まれています。

焼き菓子のサクサク感には、グルテンの形成を調節することが重要です。

グルテンの形成を抑制する方法は様々ありますが、油脂を用いることもその一つです。

油脂は、小麦粉が水分と触れ合うのを防いで、グルテンが形成されるのを抑制します。

クッキーやビスケットを作る際には、小麦粉に対する油脂の割合を高くすることで、もろくサクサクとした仕上がりになります。

うどんではあまり使わない油脂をお菓子作りでよく使うのは、グルテンを制御して、焼き菓子のサクサク感を出すためだったんですね〜

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ちなみにうどんを作るときの「塩」はグルテンを網目構造を緻密にしてくれることから、めんのコシを強くしてくれます。また麺に塩味をつけることにも関係していますね。


油脂はそのほか、小麦粉生地の安定性や伸展性・弾力性を良くし、混ぜる間に生地に空気を取り入れて感触の柔らかいパンに仕上げることにも役立ちます。

また、バターを使うことで、よい風味や味をもたらしてくれるというのも、パンやお菓子作りに油脂を用いる利点ですね。


最後に

脂質について学んできた今回のnote。

クッキー作りで「バター」を使う理由
・マヨネーズ作りに「卵黄」を使う理由

を考えるヒントはありましたか?

食品学は、普段の生活の中に多くの学びが存在する学問です。ぜひ調理をしたり、お菓子を作ったりするとき、また食事や食材の買い出しの際に、「食品」に目を向けて、そこに含まれる成分や反応について少し考えてみてください。

自分の目で見て、頭で考え、作ってみて、そして食べてみる。この経験をどんどん積み重ねていくことが管理栄養士となった時のあなたにとって役に立つはずです。

それでは、ごちそうさまでした。


【参考文献】
食品学ー食品成分と機能性ー 久保田紀久枝・森光康次郎 東京化学同人
エッセンシャル食品化学 中村宜督・榊原啓之・室田 佳恵子 講談社
新版 調理と理論 山崎清子・島田キミエ・渋川祥子・下村道子 同文書院
J. Dyerberg and H. O. Bang, Lancet, 2 (8140), 433-435, 1979

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