「君の感想を聞かせて」

読書好きの二人の高校生、深山蓮太郎(みやまれんたろう)と堀北明日葉(ほりきたあすは)。二人の読書家が、最近読んだ本について気ままに感想を語り合います。あなたが本を選ぶ一助になれば幸いです。

「君の感想を聞かせて」

読書好きの二人の高校生、深山蓮太郎(みやまれんたろう)と堀北明日葉(ほりきたあすは)。二人の読書家が、最近読んだ本について気ままに感想を語り合います。あなたが本を選ぶ一助になれば幸いです。

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プロローグ ~二人の読書家の出会い~

 高校生の深山蓮太郎には、いま気になっている女子がいる。朝の通学電車で見かける、他校の女子高生だ。  肩まで伸びる艶やかな黒髪や、泣きぼくろのある涼やかな目元は、クールで大人びた雰囲気を漂わせる。だが、制服に合わせたピンクのカーディガンや手首のシュシュなど、今どきで結構派手な印象もある。男友達しかいない蓮太郎のような人間とは、クラスが同じだったとしてもおそらく関わることのないような存在だ。  だが、そんなことはどうでもいい。  蓮太郎が気になっているのは、彼女がいつも手に

    • 「トラペジウム」高山一実

      「堀北。アイドルになりたい、と思ったことあるか?」  蓮太郎に訊ねられ、明日葉は怪訝な顔で唸った。 「うーん……無い、って言ったら嘘になるのかな。そりゃ小さい頃はあった気がするけど、流石に今はないよ。大変なのも知ってるしね」 「まあ、そうだよな。でも、やっぱ女の子は一度はあるものなのか?」 「まあ、憧れの職業ではあるよね。でも意外だな」 「なにがだ?」 「深山くんもアイドルとか興味あるんだ。本にしか興味ないと思ってた」 「そんなことないから! 俺だって普通の男子

      • 「放課後探偵団」相沢沙呼ほか

        「俺たちってさ、高校生だよな?」  唐突に蓮太郎はそんなことを呟く。明日葉はそれを聞いて、やれやれと肩をすくめた。 「……深山くん、青春真っ盛りなこの高校生の時期に彼女どころか女の子の噂すらないからって、現実逃避しても意味ないよ。悲しいだけだよ」 「余計なお世話だ! でも言いたいことはほぼ当たってる!」 「当たってるんかい」  やぶれかぶれな蓮太郎に明日葉は失笑しながら、ごそごそと鞄を漁って一冊の本を取り出す。 「それに深山くん、高校生=青春、っていう図式そのもの

        • 「罪の声」塩田武士

          「深山くん、『罪の声』って読んだことある? あたし、この前読んだんだけど」 「そりゃあ読んでるさ。巷じゃ『塩田武士作品読んでなきゃ読書家は語れない』なんて言われてるぐらいだからな」 「それどこの巷かな、あたしは聞いたことないけど……。まあ、確かに最近すごく注目されてる作家さんだけどね」  ドライな反応を返す明日葉をよそに、蓮太郎はその作品を読んだ感動を思い出すように何度も頷く。 「あの本、めっちゃ面白かったよな。俺、あれ読んでジャーナリストになるのもいいかな、って思

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        プロローグ ~二人の読書家の出会い~

          「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦

          「堀北ってなんのシャンプー使ってるんだ?」 「えっ……」  蓮太郎の唐突な質問に、明日葉は怪訝な顔をした。隣に座る蓮太郎から、明日葉は微妙に距離をとる。 「なに、あたしの髪の匂い、嗅いでたの……?」 「は? い、いや、嗅いでないぞ!? ただ聞きたかっただけなんだよ」 「へえ……、なにを?」 「ヴィダルサスーン、使ってるのかなって」 「ああ、そういうこと……。深山くんも読んだんだね、『四畳半タイムマシンブルース』」 「……これだけで察してくれるあたり、堀北ってや

          「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦