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国語教師が中学生に薦めた本10選、前編。

もうすぐ、今の学校に赴任してから初の夏休みを迎える。
なかなか担任している生徒とうまくいかず、へこたれそうになった時期もあった。

しかし、徐々に生徒との関係性はよくなってきた。
課題は山積しているけれど。

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教員4年目にして、勉強が必要だと感じる。
夏休みは存分にインプットしたいな。

さて、7月からReading Workshopを始めている。

RWを実施する前の準備段階として、4~6月の学年だよりにしつこく推薦図書を掲載し続けてきた。
学級文庫や図書室の中から、10代に薦める本をピックアップして紹介してきた。

ただ今のところ、朝読書の際に読んでいる生徒がいるくらい。
しかし、RWを始めてからが本番。

読書する習慣がすべてのベースになる。
読まなければ書けないので、WWへの接続のためにも粘り強くやっていきたい。

さて今回は、4~6月の学年だよりで紹介してきた10冊の本をまとめてみた。
夏休み中、読書感想文を書く中学生も多いと思うので、参考にしてほしい。
また、子どもに読書はしてほしいが、どのような本を中学生に薦めればよいか分からない教員・保護者の皆様にも、以下の10冊を提案したい。

『海の底』

四月。桜祭りでわく米軍横須賀基地を赤い巨大な甲殻類が襲った!次々と人が食われる中、潜水艦へ逃げ込んだ自衛官と少年少女の運命は!?ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント!(KADOKAWA公式サイトより)

前任校で人気のあった本(特に女子)。
有川浩の文体は、人によってはライトノベル的なくどさを感じるかもしれない。
しかし、それが若い世代に支持される理由でもあると思う。

『塩の街』『空の中』と並ぶ三部作で、「多少なら怖いシーンがあってもOK」という生徒には薦められる。
というか、中学生くらいだと怖いもの見たさもあるし、ちょうどいいかも。

「謎の赤い甲殻類」との戦闘はもちろん、潜水艦の中でも心理戦が繰り広げられる。
エンターテイメントとしての読書を体験するのにはもってこいで、先が気になる展開が魅力。
スリリングなストーリーが好きな人に。

『推し、燃ゆ』

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。(河出書房新社公式サイトより)

「推しが炎上した。」という一文から始まるこの作品。
タイトルや表紙の感じから「ポップな雰囲気かな?」と思いがちだけど、内容はその真逆。
目を背けたくなるような、鬱々とした描写も多い。

その一方で、10代の生徒には「分かる!」という場面も多々、出てくると思う(「推しが尊い」というフレーズを、教室で何回聞いたことか…)。
「推し」という若者文化をベースに、ヘビーな現実を見事な筆致で描き切っている。
読んで考えさせられる読書という経験を、是非とも積んでほしい。

同氏の『かか』は未読。
作者は22歳、しかもまだ『推し、燃ゆ』が2作目というから驚き。

『AとZ アンリアレイジのファッション』

パリコレで活躍する日本人トップデザイナー初の書き下ろし。「服は言葉を発することができない」「ファッションデザイナーは服の代わりに、服のことを伝えようとする」「テーマとコンセプトが服づくりの根幹」。そう言い切る著者の発想の源泉を明かす力作。ファッションで「世界と自分」を変えたいと願う人へのヒントと励ましがここにある。(早稲田新書公式Twitterより)

文庫本だけでなく、新書も読んでみる機会も設けてみては?
新書の中でも、こちらは行間が空いていて読みやすい。

ファッションって、何だろう。おしゃれって、何だろう。
友達と遊びに行くとき、「ダサいって思われたら嫌だな……」と思いながら、服を選んだことのある人も多いのでは。

ANREALAGE(アンリアレイジ)というファッションブランドは、ちょっと変わっている。
例えば、写真でフラッシュ撮影すると、色が変わる服(下に動画あり)。
そんな服をつくって、一体どうするのか。

「かっこいい」「かわいい」と見られるだけが、ファッションではないということ。それをこの本を読むことで知ってほしい。
興味のない人も、読んだらおしゃれに目覚めるかも……。

『コンビニ人間』

「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。(文藝春秋公式サイトより)

「36歳で未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目」。
身の周りにそういう人がいたら、「普通」の人はどう思うだろうか?
「早く結婚しろ」「フリーターなんかやめて、真っ当な職に就け」そんな言葉をかける人もいるのでは。
なぜそんな言葉をかけるのかというと、それが「普通」とされているから。

「普通」とは何か。
私たちは、「普通」でなければ生きていくことはできないのだろうか。
そんな問いをくれる本。

一晩で読めるくらい短いので、分厚い本に抵抗がある人にもおすすめ。

『世間とズレちゃうのはしょうがない』

世間からはじき出されないことを願う理論派・伊集院光と、最初から世間からはみ出している理論超越派・養老孟司。博覧強記でゲーム好きという共通点がある二人が、世間との折り合いのつけ方を探ります。
見た目が大きくて、子どものころから同級生との違いをひしひしと感じ、「世間からはじきだされることがこわかった」という伊集院さんは、不登校になった理由や落語の道に進んだわけを明かしつつ、「人間はそもそも群れの中で生きる動物。『他人に優しくなるほうが得』ということになるんじゃないかな」と語ります。
一方「自分ははじめから世間から外れていた」と語る養老さんは、「都市においては、意識で扱えないものは排除されます」という都市論・世間論を展開。さらに、たまには世間から外れて世の中をながめてもいいんじゃないか、と世間から抜け出す方法を提案します。
抱腹絶倒のトークから、世間とズレながら生きていくヒントが得られる一冊です。(PHP研究所公式サイトより)

中学生のとき、「みんなと同じは嫌だけど、ちょっとだけ目立ちたい」と思っていた。でも浮くのは嫌だった。
周りからズレていると思われるのが怖かった。

しかし、この2人の対談を読むと、なんだか世間とズレてしまうのが当たり前に思えてくる。
会話体で読みやすい。話はあちこちへ飛ぶ。伊集院さんが不登校になった理由、幽霊はいるよ、男と女が互いに理解できないところ……。

「周りに合わせるの、疲れた……」とか、「世間って辛い!」と思ったら、この本を開いて立ち止まってみてはどうでしょうか。
昆虫の写真が出てくるので、虫嫌いの人は要注意⚠

『オルタネート』

第42回吉川英治文学新人賞受賞作品、2021年本屋大賞ノミネート作品、第164回直木賞候補作品。
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった〈悲劇〉の後遺症に思い悩む蓉(いるる)。母との軋轢により、〈絶対真実の愛〉を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、〈亡霊の街〉から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志(なおし)。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる"とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体――。“あの頃"の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。(新潮社「オルタネート」公式サイトより)

県内にある実家に帰ったときのこと。
この本を見て、「あ、これ読ましてよ。アイドルの人でしょ?」と母。
作者である加藤シゲアキさんは、アイドル(NEWS)と作家、いわゆる「二足のわらじ」を履いている。

「初めて小説を書いたのは、2011年の2月から3月でした。あの頃、芸能活動が思い通りにいかず、それを他人のせいにばかりしており、そんな自分に嫌気が差して、なんでもいいから成し遂げなければと、小説を書き始めました。」

それで文学新人賞を獲り、本屋大賞にもノミネートされているからすごい。
序盤は正直、物足りなさがあるかもしれないけれど、右肩上がりに面白い展開になっていく。
10代らしい悩みや問いに溢れた一冊なので、共感しながら読めるのでは。

スマートフォンによって、いつでもどこでもつながっている状態。
皆さん(中学生)の青春は、そういう時代の中で過ごすことになる。
「オルタネート」のような、AIやビッグデータが相性のよい人を導き出してくれるアプリが、そのうち出てくるかもしれない。

恋愛でも、友情でも、自分にとっての運命の相手は誰が決めるのか。
自分を信じる?それとも、機械が算出した数値を信じる?

『友だち幻想』

「みんな仲良く」という重圧に苦しんでいる人へ。
人付き合いのルールを知り少しの作法を身に付けるだけで、複雑な人間関係の中で必要以上に傷つかず、しなやかに生きられるようになる処方箋のような本!友だちは何よりも大切。でも、なぜこんなに友だちとの関係で傷つき、悩むのだろう。人と人との距離感覚をみがいて、上手に“つながり"を築けるようになろう。
「みんな仲良く」という理念、「私を丸ごと受け入れてくれる人がきっといる」という幻想の中に真の親しさは得られない!人間関係を根本から見直す、実用的社会学の新定番書。これでもう、「みんな仲良く」のプレッシャーとはさようなら。(筑摩書房公式サイトより)

「みんな仲良く」とは、耳なじみのあるスローガン。
しかし、「みんな仲良く」とは、どのような状態が理想的なのだろうか?

筆者の主張は、大まかに説明するとこのようになる。人間関係は、お互いに適切な距離を取り合うことで、楽になる側面が大きいということ。もしかすると、大人になるとは、そういうことかもしれない。

この本は10年前に刊行されたものだけど、なぜか10年後の現在、再度ヒットを飛ばすという、まさに「異例」の本。
ちなみに、高校受験の入試問題として何度も採用されている。

中高生向けなので、国語の力をつけたいと思っている人、こうした説明的文章を日頃から読んでいると、知らず知らずのうちに成長が見込める。

『夢をかなえるゾウ』

お前なあ、このままやと2000%成功でけへんで。
ダメダメな僕のもとに突然現れたゾウの神様“ガネーシャ"。
なぜか関西弁で話し、甘いものが大好きな大食漢。そのくせ、ニュートン、孔子、ナポレオン、最近ではビル・ゲイツくんまで、歴史上の偉人は自分が育ててきたという……。しかも、その教えは「靴をみがく」とか「募金する」とか地味なものばかり。こんなので僕の夢は本当にかなうの!?(飛鳥新社公式サイトより)

私が中学生のとき、ベストセラーになっていた本。
当時は読書なんて、ほぼ興味なし。

しかし、書店でこの本を見かけたとき、何となく手に取って読んでみたくなり、父にねだって、買ってもらった。
とても読みやすく、あっという間に読み終えたのを覚えている。

「お金を稼ぎたい!地位や名誉がほしい!成功したい!」そんな人は、読んでみると学びがあるのでは。
どういう人になれば、お金と人材が集まるのか。ガネーシャが教えてくれる。

お金いうんはな、人を喜ばせて、幸せにした分だけもらうもんや。せやからお金持ちに『なる』んは、みんなをめっちゃ喜ばせたいて思てるやつやねん。(ガネーシャ)

『逆ソクラテス』

敵は、先入観。世界をひっくり返せ!伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負!
逆転劇なるか!?カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える――「逆ソクラテス」
足の速さだけが正義……ではない?運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが――「スロウではない」
最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも――「アンスポーツマンライク」
ほか、「非オプティマス」「逆ワシントン」――書き下ろしを含む、無上の短編全5編を収録。(集英社公式サイトより)

「超」がつくほど、小説界では有名なのが伊坂幸太郎。

大学時代の同期が愛を込めて「伊坂はね…」と語っていたのを覚えている。前の学校でも、伊坂ファンの先生がいた。

彼の作風は、「勧善懲悪」

悪い人が出てきて、懲らしめられたり、一泡ふかせられたり。
「あー、スカッとした!」という感覚が、病みつきになるのかもしれない。
日本人って、そういうの好きかも。桃太郎、水戸黄門、半沢直樹……。

舞台は学校、主人公は小学生という点は共通で、他にも4編の作品が収録されている。
1つ1つの作品が面白いのはもちろん、伏線も随所に張られている。

伏線のヒント。伊坂作品では登場人物が複数の話に出てくるのは珍しくない。
「あれ?この人、別の話で出てこなかったっけ」という瞬間もあるかも。

『何者』

想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。
就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。(新潮社公式サイトより)

就職活動の略称、「就活」
現代に生きる日本人のほぼ全員が経験する、自分の職業を決めるための一大イベント。

朝井リョウさんは、『桐島、部活やめるってよ』で注目され、この『何者』で一気にブレイクした作家。
なんといっても、大学生たちが直に交わす会話と、SNS上での発信(ツイートなど)の生々しさがすごい。

2015年の作品ですが、いま読んでも「いるいる、こういう学生……」とうならずにはいられない。
また、映画化もしていて、佐藤健や有村架純が出演したことでも有名。

ちなみに私は教員なので、就活は経験していない「例外」である(教員採用試験、通称「教採」を受験)。

夏休み、時間のあるときこそ読書を

以上の10冊。
夏休みは生徒も教員も、自己研鑽を積むための時間である。

私も読むことで学んできたし、この夏休み中に読みたい本がたくさんある。
この記事が、読むことの豊かさに気づくきっかけになってほしいと思う。

夏休みまでRWを継続して、どんな変化が訪れるか楽しみ。

前回の記事もよろしければ。

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