人の話に耳を傾ける〜異常気象の春に〜
春分の日を目前に控えて、サンパウロでは真夏日が続いていました。昨日の最高気温は34℃(最低気温は18℃)、真夏でも30℃を超える気温というのはなかなか珍しいというのに、もううんざりです。
でも、湿度が低く日本の夏のような蒸し暑さは感じられません。これを書いている夕方4時の湿度は32%とのことで、連日熱波や乾燥注意報が出ています。ちょうどメキシコシティ並みの気候なのではないでしょうか。昔駐在でシティに暮らしていた友人が「洗濯物がパリパリになる!」と言っていましたが、まさにそんな感じなのです。
外では直射日光を避けて日陰を移動、もしくは室内に居る限りは暑さが凌げることには救われています。真夏ではないので、雨が降った後や朝晩には気温が下がります。就寝時に窓を開け放して眠ろうとすれば肌寒いくらい。もちろん、エアコンを稼働させる必要はありません。サンパウロは夏冬の穏やかな気候のせいで、エアコンを設置していない家庭も多いです。(衣服の調節で凌ぐことができます。)
こんな気候が来週半ばまで続き(日曜日には最高気温37℃の予報が出ています!)、木曜日に降雨が予想され、その時は20℃くらいの気温に落ち着く見込みとか。雨降りは憂鬱なものですが、流石にひと雨欲しい今日この頃です。
昨日は朝市がある金曜日。先週は洗濯機修理の騒動があったので、遠くなってしまった馴染みの朝市に行くことは諦めて、近場で買い物を済ませていました。相変わらず晴れて暑そうではありましたが、頑張って急な坂道をのぼりあのバナナ屋さんにも会ってこよう、前夜からそう心に決めていました。
今のアパートのすぐ隣はスポーツクラブなのでその敷地を囲む長い塀が続いていて、教習車の駐車の練習にはもってこい。たくさんの教習車が縦列駐車の順番待ちをしていました。ブラジルの教習所には練習用の庭などないので、いきなり路上での練習からスタートします。
そんな光景を横目に、長い坂をやっとの思いでのぼり切ると、前のアパートがあった通りに出ます。そこから朝市までまた緩やかな坂を歩いて行きます。ふと前方に目をやると(坂道を歩くとついつい俯きがちになってしまいます)、懐かしいその人が坂をおりて来るのが見えました。私に手を振っています。階下に住んでいた長年の友人であり、度々こちらでも話題にした子供達の幼なじみ、クッキング男子のお母さん、日系3世のYちゃんでした。
彼女と最後に会ったのは2週間ほど前だったでしょうか。私たちの送別会ということで、日本食の居酒屋さんでの夕食に、家族全員を招待してくれたのでした。あちらも3人のお子さんたち、普段はお忙しい、医師であるご主人様も同席されて和やかな会となりました。
ご主人様はつい最近、実姉様を伴って米国西海岸(ご親戚が在住されているシリコンバレーを拠点に、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)を訪ねたばかりだったので、そのお話を興味深くうかがいました。レンタカーで3週間の旅。相当の走行距離となったそうです。
今をときめくスタートアップ(新興企業、ご親戚はその中のG社にお勤めとのことでした)の聖地ではEV車や日本車をたくさん見かけ、流石と思うことが多かったようです。ガソリンスタンドのセルフ給油は、(信頼面で)ブラジルで成り立たないかもね〜、とか。反面、光があれば陰もある、そう感じることも間々あったとか。
恵まれた職を得て高収入、生活が安定しているようでいて厳しい実力社会。きちんとした結果が伴わないと、いつその職を失うかも分からないという話をご親戚から聞いたそうです。治安は全体的には良いものの、中には地元民の方も足を踏み入れない地域もあり、カリフォルニア州では950ドル以下の窃盗は軽犯罪とみなされて、大きな罪には問われないという話でした。パンデミックを経て、貧富の差がますます拡大していったのは、この地も例外ではないのでしょう。
Yちゃんのご主人様は台湾出身でブラジル人に帰化された方。人生のある時期に5年ほど日本にも住まれていて、日本語も堪能。日本語能力試験一級も持っておられるとか。ポルトガル語と日本語を交えて、その他にもいろいろな話を聞かせて下さいました。年齢が近いこと、テニスという共通の趣味、今回の西海岸は夫も出張で度々訪れたことがあり、夫同士の話も弾んでいました。これは大人テーブルでの話題。
仕切りの向こう側の若者席でも大いに盛り上がっていたようです。あちらの2人の息子さんたちは見た目も性格も温和な草食男子。ついでにベジタリアンで、ベジタリアン定食を頼んでいたという話に妙に納得してしまいました。それでも年末のSão Silvestreマラソン大会(15km)に2人揃って出場するという硬派な面もあり。それはかつて陸上選手だったYちゃんのDNAなのかなぁと感心したのでした。普段聞けないような興味深いお話をたっぷりと楽しんで、2時間半ほどの時間はあっという間に過ぎていきました。
彼女とはそれ以来でした。私がわざわざ遠い方の朝市に、しかも歩いてやってきたことに少し驚いていたようでしたが、いつもと変わらず元気そうでした。情報通の彼女から、いつもどおりひと通り話を聞いて(彼女も、話題のNHKの朝ドラを楽しみに観ていたという話でした。私はただただ恐縮。。)私は朝市へ。やはり馴染みのある場所での買い物は気分的に楽です。先週はいかにも怪しげなおじさんに話しかけられたり、値段をふっかけて来たお姉さんに引いてしまったもので。
最後に寄ったバナナ屋さんでは、おじさんがやはり私用の包みを用意してくれていました。もう毎週来られるわけではないと言ってはありましたが、「先週は来られなくて......」という話をすると。
「大丈夫、さっき来たあなたの友達もそんなこと言ってたね。ほらあの小柄のジャポネーザ。。」
Yちゃんでした。ホントに彼女のネットワークはすごい。。
こちらの23日、土曜日は春分の日、並びに夫の誕生日です。1週間後は父の一周忌。色々なことがあり過ぎてこの一年は本当に早かったです。父とはもっともっと色々な話がしたかった......元気な頃の写真を見ては、ここのところそんなことばかり考えていました。
引き続き良いお彼岸をお過ごし下さい。