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smashing! たったままがおこのみ?

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。この病院の税理士・雲母春己は二人の先輩である理学療法士・伊達雅宗と付き合っていて、そして伊達の彼氏になった設楽泰司も一緒に、三人で暮らしている。

大学附属動物病院の昼休憩。伊達と設楽は近くにあるうどん屋で天ぷらうどん定食を食べながら、今週末に控えた雲母の誕生日を祝うための作戦会議をしていた。伊達はいつものように大きな海老天を設楽のさつまいも天と取り替えながら、とある提案をした。ハルちゃんが絶対行きそうにないとこでご飯を食べるサプライズ。そこで設楽はとある店を思いついた。

「ってことで、俺もそこがいいと思う」
「喜んでもらえるかと。オレ雲母さんに電話しておきます」
「そうねよろしく!」

果たしてその「店」とは。

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週末だというのに雲母は忙しく移動を余儀なくされていた。大邸宅に住まう貴人って一軒一軒があちこちに散らばってると思いませんか僕だけ?しかも門から玄関が遠。すげ遠。ようやく最後の顧客の仕事を済ませ、雲母は周りに田んぼくらいしかないコンビニの駐車場に車を止め一息ついていた。ふと気づけば携帯の着信音。独眼竜(伊達)でなくFのつくRPGに出てくる黄色くて大きな鳥のテーマ。設楽からである。

「……疲れ……で、今晩の……ですが」
「すみません設楽くん、ここほぼ圏外になっちゃってって」
「問題ありま……で、雲母さんを連れて皆……」
「!ひょっとして皆でお出かけですか?♡」
「はい……れで、立ったまま……する……ルなのですが……」
「……(ファ???)」

立ったまま……する……ル………?

思い切り混乱しそうになったがなんとか平静を保ち、待ち合わせ場所と時間を確認し雲母は通話を終えた。え待って立ったままで?する?「ル」?二人にメッセージやメールを送ろうとはしたが、いかんせんほぼ圏外。

「でもあとは現地で合流するだけですし。それにしても立ったまま……する……ル、考えただけで卒倒しそうですね」

思うに、立ったままで行為を行うマニアックなホテル。十中八九間違い無いでしょうこれで完璧。雲母はアクセルを踏み込むと、体感的に音速で(法定速度は厳守しておりますのでご心配なく♡)身支度を整えるため自宅へと向かった。

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今日は雲母の誕生日。とはいっても実際は立春の生まれなので、家族旅行中の事故で一人生き残った、いわば「この世に再生誕した」日である。

「ハルちゃんどうだった?来れそうかなあ」
「はい、ちょっと電波が悪かったんですが、ここの場所と時間は伝えられましたし」
「先呑んでよか、その方があの子も嬉しいと思うし」
「御意。ここベジョータランクのイベリコ豚が自慢らしくて」
「…お前ほんとコンシェルジュよねえ♡」

小一時間後。上気した頬に潤んだ眼差しで現れた雲母。なんでそうなった。そういうとこじゃないんだけど、思わず固まった二人は、雲母の解説を受け震えながら爆笑。ここは元立ち飲み屋がリニューアル。立ち飲み自体経験のなさそうな雲母にと、二人が考えた楽しいサプライズだったのだ。

ハルちここはねえ、実はね。

立ったまま「食事」する「バ」ル!


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