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連載「菌活ボーイがゆく」㉙ソックス大作戦
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ
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知人が入院した。
「動脈剝離。胸に稲妻が走った」
電話の向こうの彼女は、いつもより弱々しかった。
「ソックス2足お願い」
病室が北向きで寒いという。
気軽に承諾したけれど、ショッピングセンターで青ざめた。靴下売り場は下着売り場の隣だった。
ブラジャー。ショーツ。
見ていません。なのに視界に入ってくる。
辺りに男は僕だけ。どう見ても怪しい人物。
女性客がささやく。かなりまずいシチュエーション。
任務を放り出し、急いで脱出。
遠回りだが、まずは女性店員を探すしかない。
「姉が入院してしまって」
ウソまでついて、付き添いを頼んだ。
ウール、滑り止め付き、くるぶしひらひら。
なんでこんなに種類があるのかな。
「どれを買えばいいのでしょう」
「好みです」
救いの主はつれない返事。「サイズは?」とたたみかける。
考えたこともない、です。
気に入った生地や色があっても、同じデザインの2足セット。
なんで柄違いにしないのか。
それに、1足売りはどれも薄手なのはなぜだろう。
今度は、店員さんが考え込んだ。
一刻も早く逃亡したいのに、逃げ出せない。
聞かなきゃ良かった。
結局、値段が一番高いやつにした。
店の外でため息。
靴下選びが、こんなに過酷なミッションだったとは。
「で? どこが菌活にゃん?」
さっちー師匠が冷たい視線。
あのう。え~と。
僕の心臓は再びドキン、ど菌と脈打った。
(続く)