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地方の有名社長に怒られながら聞かされた「凡人」の成功法則。

札幌市というのは今から10年以上前からスイーツ王国で、有名どころだと『白い恋人』石屋製菓かと思うが、他にもたくさんのスイーツ会社が群雄割拠、戦国時代のようにしのぎを削っている。

札幌にはスイーツで天下を獲ろうとするスイーツ大名たちが沢山いて、札幌市民に「好きなスイーツ会社は?」と聞くと、さまざまな答えが返ってくるのである。


前職の人材コンサル時代、私が受注のきっかけを作ったスイーツ大名の企業があった。北海道内に10店舗以上を構え、北海道の就職したい企業ランキングでいつもランクインするような企業。


会長と社長、専務の3人で小さなお店からスタートしたその会社は、今ではそれはそれは有名な企業になっていた。

手前味噌だが、私がきっかけを作って受注したまではいいものの、当時の私の女性上司にその手柄を奪われ、私は不本意ながら、その企業の担当を外されることになった。そういうタイプの上司で、それはよくあることだったから気にしなかった。



しばらく経ってから、
その企業からクレームが来た。

(…案の定だなぁ)


と私は思っていたが、上司は狼狽していた。

どうやらフォローが弱いらしい。

メールのレスポンスが遅く、電話に出ない、スピード感が求めているレベルに達していない、などのクレームで、その企業の社長が烈火の如く怒っているらしいのだ。スイーツ大名がブチギレている…。そりゃ怒るよ。

社長じきじきにその会社に呼ばれ、後がない上司はなぜか、私と私の部下も同席させ、計3人で怒られに行くことになった。部下関係ないじゃん…という気持ちは引っ込めた。誠意が大事だ。

仕事を奪われたこともあって、私はドキドキしていなかった。怒られるのは上司だ。でもきっかけを作ったのは私だから、会社の体制の不備(ではないんだけど)を上司に代わって謝ろうと思った。


スイーツ大名の城であるその企業に着いて、私たち3人は社長室に通された。上司と部下はチワワのような目をして震えていた。


厳かな社長室で、その社長はスーツを着て黙っている。上司が開口一番謝罪をした。すると社長は徐々にスロットルを上げて怒り出した。

「我が社が創業してから誇りにしていることがある!何かわかるか!」

「な、なんでしょう?」

「取引先を一度も変えたことがないということだ!しかし、今回ばかりは考えざるを得ない!」

「も、申し訳ございません!」

なんてところから始まって、延々怒られた。

左に上司、真ん中に私、右に部下である。
上司も部下もうつむいている。

「人手不足は今もこれからも大問題だ!」

「お、おっしゃる通りで」

「私がこの会社をどんな企業にしたいか分かるか!採用において目標にしている会社はどこか分かるか!」

上司は、
「ト、トヨタでしょうか?」と
スットンキョーなことを言うと、

「違う!」


部下が
「い、石屋製菓ですか?」と言うと

「ちがーう!」


と言うので、
真ん中に座っている私は

スターバックスですよね。求人募集なんかしなくても働き手が集まるような組織にしたい、と昔の記事で拝見しました」

と言った。すると、

「そーーーう!!!」

と言われた。満足そうだった。


そこから社長の怒りのボルテージがだんだん下がってきて、結果的には取引は続行という形になった。よかったよかった。


最後にその社長が
私たち3人にこんな質問をしてきた。


「凡人が成功する秘訣はなんだと思うか!」

「えっ…」

「特に取り柄がない私のような人間が、社長をやっているわけだ!私は成功の秘訣について、人生で確立した確固たる法則を持っている!それはなんだと思うか!」

「…い、一生懸命がんばるとか…?」

「違う!」

「コツコツ継続して取り組むことですか?」

「違う!」

私は、皆目見当がつかなかったので、

「分かりません」と答えた。



(なんだろう、成功の法則って…)




たしかにその会社は札幌の有名なスイーツ企業である。会長と社長、専務の3人で小さなお店からスタートしたが、今では道内10店舗以上だ。


成功の秘訣…。

社長の口からなかなか聞けるものではない。

集中して私は次の言葉を待った。

なんだろう、成功の秘訣…。

社長が口を開く。








「運のいい奴について行くことだ!!」





思わずズッコケそうになった。

なんて他力本願なんだ。

でも、社長はこう言った。



「うちの会長はな!ずぬけて運がいいんだ!決断が間違っていたことはないし、運の良さだけでここまで来た!」

「ほう!」

「私は若い頃に会長に会って確信した!なんて運のいい男だ!こいつと一緒に仕事をすれば間違いなく成功する!そしてここまで来た!」

「なるほど!」

「だから運のいい奴を見つけろ!!」




清々しいまでの他力本願にズッコケそうにはなったのだが、でも妙に説得力のある話だった。運の良い人についていくだけでここまで来た人がいま目の前にいるのだ。いや、絶対に運だけでなく血の滲むような努力をしたと思うんだけど。


私がこの話を聞いて、この社長が言う法則に少し肉付けをするとしたら、ただ運がいいだけではダメだと思う。付け足すとすれば、


・正しく清らかで

・何があっても物事を前進させ

・努力を惜しまず

・少し頭のネジが外れている

・それでいて運がいい


こういう人は、一時的にではなく、永きに渡って成功すると思われる。だから、こういう人を見つけて、その人と一緒に仕事をすると、これ不思議なことに、その周りにいる人も成功すると思う。ただのコバンザメではダメだ。あなたも正しく清らかで、努力を惜しまない人間である必要がある。



そんな話を聞いて会社に戻る時、上司は

「あぁ、よかった…。でもさぁ…」

と続けようとしたから、私は聞き流した。



うーん、申し訳ないけどこの人は運が悪そうだなぁ、と思ったこともあり私は2回目の転職を決意することになるのだった。





〈あとがき〉
運のいい人というのは一定数いるもので、有名な話ですがあの松下幸之助も採用面接の際に「あなたは運がいいですか?」と聞いていたそうな。自分は運がいい、と信じ込むことから何もかも始まると思いますが、私もそれを実践しています。運のいい人についていけ、と言っていましたが、自分自身が運がいい場合、さらに運がいい心の清らかな人を見つけるのがいいでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。





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