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遠くで聞こえる小さな花火
遠くからセミの鳴き声。
首をかしげるパンの味。
出かけるまでのうたたね。
予感が当たって逃げ出した。
静かにまどろむ時間。
読み終わり、あくびの気配。
なくても満たされている。
ぐへへと思わず出たおかしな笑い声。
甘いものの後にチョコバッキー。
季節のものに焦がれている。
夏になると、うるさいなぁと思いながらもセミの声を聞きたくなる。真っ赤でジューシーなスイカが食べたくなる。ひんやり冷たいかき氷が食べたくなる。暑い暑いうんざりすると思いながらも、暑いのが少しうれしくなる。
そしてお腹の底に響くような大きな花火を間近で見たくなる。
近くでは大きな花火大会が2ヶ所で開催される。小さな頃から家族で、どちらかの花火大会には必ず見に行っていた。両方見に行くこともあった。
目の前近く、そしてほぼ真上に広がる大きな花火。砂浜に寝転がって、芝生の上に寝転がって、ドンドンと大きく響く花火を見た。
花火大会には行くと必ずりんご飴を買ってもらった。花火大会とりんご飴はセットだった。甘くてつるりとして、噛むとシャキシャキする見た目もかわいいりんご飴。大人になってからもあのおいしさを忘れられず買って食べてみたことがあったけど、久しぶりに食べるりんご飴は、あまりおいしいものではなくなってしまっていた。だから、もう今はりんご飴は思い出の味。
子どもが小さな頃は、毎年どちらかの花火を見に行っていた。大きな音が苦手だった息子。小さな耳を手でぎゅーっと押さえながら見る花火。
もう今は花火大会には一緒に行きたがらなくなった息子。そして、子どもが小さかったから花火に行くのに付き合ってくれてた夫。暑い中人混みに出ていくのが億劫で、花火大会には行きたがらなくなってしまった。
花火大会に行きたい、大きな花火を間近で見たい、と強く思うけど、1人で花火大会に行く勇気はないので、去年はベランダから見える小さな花火を1人で見た。小さすぎて迫力がないけど、やっぱり小さくても花火はうれしい。
声をかけてみるけど、今年も家から見える小さな花火かな。車を走らせて、少しでも近くで見ようかな。