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息子の内定

こんにちは、ぱんだごろごろです。

この度、ありがたいことに、息子が就職の内定を頂くことができました。


思えば長い年月でした。

三歳児健診のときから・・・、

だと、長くなりすぎるので、端折りますが、

端的に言えば、私の息子は猫だったのです。

人類ですらない。

まず、何を言っているのかわからない。

理由を聞いても、どうしてそういう思考経路をたどることになるのかが、わからない。

▼空気が読めない
▼コミュニケーションを取るのが苦手

集団生活を余儀なくされる、我が国の教育制度においては、

我が息子は、異邦人でした。


人語を解する猫、

と思っておけば、親も悩まずに済むかな、

こう割り切って、

息子の嫌がることは、無理にはさせずに生きてきました。


結果、本人の希望で、大学の学部を卒業したあとは、

大学院の修士課程(博士課程前期)に行き、その後博士課程(後期)に進みました。


いよいよ、博士課程(後期)三年目となる今年、

TA(Teaching Assistant)として、大学側から給与も頂きながら、博士論文に取り組んでいましたが、

諸事情により、担当教授が奨めて下さっていた就職先は、募集がなくなり、

それなのに、危機感のかけらもない当人の姿に、

まず、夫がキレました。

「これ以上、あいつの学費は払えない。
就職して、自分で働け」

ごもっともです。

その時、私は、垣谷美雨の小説、「七十歳死亡法案、可決」を読んでいました。

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その小説に出てくる、主人公の息子は、優秀で、東大を卒業し、誰もが羨む大企業に勤めるのですが、

職場での人間関係が上手く行かずに退職してしまい、

その後は、次の就職先が見つからず、引きこもりになっている、という設定です。

その小説の中で、強調されていたのが、

日本の就職制度における、新卒カードの威力でした。

どんな学生でも、「新卒」という、一生に一度の切り札さえあれば、正社員になれる、というものです。

逆に言えば、

今年、新卒、という、この万能カードを使い損ねたら、この先一生、息子は、正社員にはなれないかもしれない。


正社員と契約社員(非正規労働者)との格差の大きさは、いまだ日本では、縮まっておらず、

ニュースでも、連日のように取り上げられています。

小説が面白ければ面白いほど、

私は、焦るのでした。

この、身体は大きいけれど、しぐさは猫そのものの、何を言っているのかわからない、可愛い可愛い息子が、引きこもりになったら、どうしよう。


私は、ちょうど、ランチの約束をしていた娘に、レストランでチキンを食べながら、相談しました。

娘はすぐさま、ネットで、今からでも(その時、11月上旬でした)従業員を募集している企業と職種を探し出し、リストにしてくれました。

面接の受け方、という、就職活動に一番おすすめだという本の概要を、息子のラインに送り、買って読むように言ってくれました。

私は、息子に、大学に行き、就職の相談に乗ってくれる窓口を訪ね、話をしてくるように、言いました。

結果、息子はその日のうちに、面接の本を注文し、

大学の就職相談室を訪ね、

顔写真を撮って来て、

いくつか、履歴書を書いているようでした。


家族からこぞって言われたことで、さすがに、本人も、まずいと思ったのでしょう。

数日後には、着た形跡のあるスーツが部屋にぶら下がり、ワイシャツがクリーニング用の袋の中に入っていました。

聞いてみると、面接を受けて来た、と言います。

エントリーシートを送ったあと、

筆記試験はネットで受け、

面接に来るように言われたから、行って来た、という話でした。

そして、息子は、驚くべき発言をしたのでした。

「すごく話しやすい人たちだった」と。


いまだかつて、このような評価の言葉を、息子の口から聞いたことはありません。

ええぇ、面接官の人たちは、息子が何を言っているのか、わかったっていうの?

つまり、その、会話が成り立ったと言うのですか? マイ・ボーイ(猫さんや)。


この息子の発言には、夫もいたく驚き、

「あいつと話のできる人が、この世にいるんだなぁ」

と感心していました。


結局、息子は、この会社から内定を頂き、来春から入社することになりました。

あぁ、良かった。


それが、11月下旬のことで、

私が危機感を抱いてから、息子が実際に内定を頂くまで、同じ11月のなかで起こった出来事なのでした。


このスピード内定の原因は、

▼正社員になれること
▼ブラック企業ではないこと
▼休みをもらえること

という、三つの条件を満たせば、息子の就職先はどこでもいい、という、

家族全員の割り切りだったでしょう。


もともと、大企業など、望むべくもない、息子だったからこそ、

家族も、

本人が働きやすいところが一番、

と考えることができたのだと思います。


あとは、息子が社会人となり、

ちゃんと働き続けることができるのか、

心配の種は尽きませんが、

そっと、見守りたいと思います。

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