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記事一覧
創作小説(21) ミントガムとコーヒー
人を下(げ)に見る者、死に方汚し(きたなし)
意味:他人を馬鹿にする者は、円満な人生を歩めないという教え。
文例:「子どもの貯金崩して、その金で博打を打つなんて『人を下に見る者、死に方汚し』だよ。」
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「そういえばミント味のガム、好きだったね。」
久保大和が場を取り繕うためにガムを噛み始めると七川四葉が言った。
四葉から突然、喫茶店に大和が呼び出された。
創作小説(20) 夏、眠るまでの特別な時間
夏。
日光で熱せられたアスファルトが熱を帯びる。
鈴木一美(すずき かずみ)には特筆する趣味や特技はない。
休日は彼氏の小野とデートをすることもあるが、それ以外は読書をしたり、ジムで体を動かしたりして過ごす。
唯一、好きなのは夜、眠るまでの時間である。
特にこの夏は「夜、眠りに落ちるまでの特別な時間」を大切にしつつ、毎日を過ごした。
今年の夏は、小野との仕事の都合が全く合わず、一人で過ごした。
創作小説(19) ハバネロババヘラ
単身赴任の旦那の英彦が夏季休暇のため帰ってきた。
娘の桜も夏休みだ。
ということで一家三人、久々に川の字で寝ている。
娘の桜は明日、ショッピングモールに連れてってもらうので大はしゃぎだ。
一向に寝る気配がない。
すると、英彦が「そんなに寝ないのなら、いっそのこと怖い話でもするか」と言い出した...。
ババヘラというアイスをご存じだろうか。
秋田県の道端でお婆さんがヘラでアイスをすくって、花の花
創作小説(18) 朝焼けの爆食い女
「夕焼け」という言葉はよく聞くが、「朝焼け」という言葉はあまり聞かない。
でも、ちゃんと辞書に載っている言葉だし、実際に使われてもいる。
今、三山桜は朝焼けの中にいる。
コンビニでアイスとビールを買い、川沿いのベンチに座って一心不乱に食べている。
もう少しで6缶目のビールを飲み終わる。
市役所から民間企業に転職して3ヶ月。
未だ職場の空気になじめないでいる。
「聡美は明美と彼氏を奪い合った
創作小説(17) 血液型占い
宏美は雑誌を読んでいた。
すると桜が寄ってきて「血液型占いが見たい!」と言い出した。
宏美は、今度の桜の興味は血液型か、子どもの好奇心は無限に広がっているな、とこの時はぼんやりと考えていた。
加えて、ははーん、さてはまた何かオリジナルの血液型でも作って、騙そうという魂胆だな?とも。
「お母さん、AB型のRhマイナスは?どこに書いてあるの?」
「え?」
宏美はドキリとした。何を言い出したの?
創作小説(16) 戦闘服はポロシャツで
「もう少し、お薬を続けてみましょうかね。」
心療内科の医師が山田に言った。
係長に昇進して2年。
仕事はさっぱりで、誰が何の担当業務なのかがよくわからない。誰が事務職で誰が専門職なのかもわからない。
ショートの作業依頼が多く、多忙な毎日を送っている。
寝つきが悪かったり、たとえ薬の効果で眠れても2時間程度で目が覚めてしまうことがほとんどだ。
そんな山田の口癖は「やむを得ない。」だ。
山田は
創作小説(15) 蚊!子!丑!寅!卯!辰!巳!
「6月17日土曜日っと。」
娘の桜が日記を書いている。
「ちなみに今年の干支は何か知ってる?」
母親の宏美が尋ねる。
「今年は、寅年!」
桜が元気よく答える。
「残念でした、今年は卯年。」
意地悪そうな、それでいて優しい目をして宏美が答える。
「え、そうかな?蚊!子!丑!寅!卯!辰!巳!でしょ、午!羊!…。」
え...?
「え、何か変なの混ざらなかった?
もう一回言ってみてよ。」
「蚊
創作小説(14) 爪と種無しぶどう
人を下(げ)に見る者、死に方汚し(きたなし)
意味:他人を馬鹿にする者は、円満な人生を歩めないという教え。
文例:「盗人ばっかして、その金を博打に注ぎ込むなんて『人を下に見る者、死に方汚し』だよ。」
「このブドウ、皮ごと食べられる?種無し?」
七川四葉は突然の質問に戸惑っていた。
ネイルアーティストとして働いていたが、仕事を抱え込み過ぎ、疲れてしまった四葉は一旦はネイルアーティストの夢をあきら
創作小説(13)「私の正義が悪を討つ」
ある市役所で働く鈴木一美はソーシャルワーカー枠での採用だ。
しかし、近年の人材不足の煽りを受け、窓口応対や経理など本来は事務職枠採用者が行う業務も一美にまわってくる。
以前、窓口で暴言を吐かれた経験のある一美にとって、窓口応対はアレルギーとなっていた。
しかし、誰かがやらなければならない。
そう言い聞かせて、今日も窓口応対にあたっている。
「すみません、正義の通報です。」
初老の男性だ。
誰
創作小説(11)「変わらないね」
「変わらないね。」宏美が言った。
「当たり前だ。1ヶ月くらいで変わる訳ないだろ。」夫の英彦が答えた。
元気そうだ。
お互いにそう思った。
宏美は紅茶を啜る。
そしてチーズケーキを頬張る。
1ヶ月前、英彦の単身赴任が決まった。
地方都市に1年間の任期で赴任する。
単身赴任といっても、住んでいる街から新幹線で2時間程度の地方都市で割と近く、宏美は1ヶ月経って英彦の様子を見に来たのだった。
「久し
創作小説(9)「ハンバーガーと侵撃」
「宏美の手料理が久々に食べたいな。」
英彦は宏美が作る手料理が大好きだ。
付き合っていた頃、宏美の手料理に胃袋を掴まれたといっても過言ではない。
しかし、宏美はというと「ハンバーガーで良いじゃない。桜も好きなんだし。」という。
安くて手頃で子どもも大好きなハンバーガーは、家事に追われる主婦の身としてはうってつけなのだ。
宏美と桜が寝静まった頃、英彦は考えた。
英彦はライターの仕事をしている。
「