詩)乖離(かいり)
覗き込んだ雲海の隙間から光は漏れ出していた
遠くに見える山は輪郭だけがはっきりとして
決してその素顔を見せる事はない
私は自らが築き上げた“らしさ”の檻の中
賢者を装い外に出る事も叶わず
己の中へと進む旅さえも良しとせず
何者にもなれぬまま探求も理解も嫌い
宛先のない愚痴をさえずっては
偽物の光に充てられた羽虫を嘲笑っていた
偉い人になりたいと
青さの残る戯言を宣っていた頃の愛らしさは消え
卑屈な笑い方を誰から学んだと言うのか
ヘラヘラと嘘で固めた厚顔を晒す
こんなはずではなかったと
重いため息が偽りと本音の間に落ちていく