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エッセイ)超氷河期に

私が就職活動をした時は、就職超氷河期と呼ばれる時代で、100社にエントリーしても全滅したなんて話がザラにあった。

そんな中、私は真面目に就活をしなかった。
なりたいものがあるわけでもなく、塾講師のバイトをしていたからという理由で教育系を中心にエントリーし、リサーチもほぼする事なく、取り敢えず聞いた事のある会社を受けていた。それでも運良く、某英会話スクールのN社と学習教材を扱うT社から内定を貰った。
就活に苦労している友人を横目に、たいした努力もせずに、有名な会社から内定を貰った事で、有頂天になっていた。
就職超氷河期と時代環境が悪くても、能力さえあれば就活も楽勝だったなと思っていた。

どちらの会社に行くかを決める時期になって、私が選ぼうとしていたN社が、かなりのブラック企業であると言う噂を聞いた。
それでも、学生人気が高い事が決め手となり、ミーハーな私はN社に行く事にした。
噂は気になったが、新たに企業を探す気にもなれず、入社したらなんとかなるだろうと思っていた。
そして、T社へ内定を断りに行った。

T社は私が内定を断る事に対して、怒る事もなく私の話をきちんと聞いてくれた。
T社の担当が
『いったい何処の会社に行くの?』
と質問をしてきたので私は素直にN社ですと答えた。
すると、T社の担当は、
『N社は凄くいい会社だから、それなら仕方ないね。N社に行っても頑張って下さい』と言ってくれた。
こんなに感じのいいT社の人がそう言うなら、悪い噂はあくまで噂であって、N社はいい会社なんだと安心した。

そして、N社に入社。…N社はブラック企業のお手本の様な酷い会社だった。
(N社の話については、良ければ下記記事をお読み下さい。)
入社後に知ったのだが、東海地区のブラック企業ランキングで1位がT社、2位がN社だった。
T社の担当は嘘をついた訳ではない。
ただ、少し言葉が足りていなかった。
“N社はいい会社”ではなく、正しくは、“ウチよりはいい会社”だったのだろう…。


おわり

前職で苦労した話↓