ドラッカー 政府への処方箋4
「マネジメント」より
・企業にせよ公的サービス機関にせよ、具体的な目標なしに目的を達成することは至難である 目標が具体的であって初めて資源を配分し、優先順位と期限を定め、成果をあげるべき主体を明らかにすることができる
・公的サービス期間の問題の根本は、効率の欠如ではなく、成果の欠如にある
・問題はシステムにある 人にあるのではない
・予算型組織では、成果とはより多くの予算獲得である 仕事ぶりとは、予算を維持ないし増加させる力のことである
・より少ない予算やより少ない人間で成果を上げても業績にはならない
・公的サービス機関にとって、自らの成果と重要度を図る尺度は予算である
・公的サービス機関は集中できない あらゆる関係者を懐柔しなければならない
・明治維新のわずか30年後には、階級制度に縛られた極東の貧しい農業国が近代国家となり、ロシア帝国を破る軍事強国となり、一大貿易国となった
・明治維新の目的は、西洋の帝国主義が支配する世界にあって、日本の独立と文化と伝統を守ることにあると定義されたら、それらの目的は富国強兵と要約され、軍事力増強、経済発展、識字率向上、地方自治、裁判制度の五つの分野に力が入れられた
・農民救済、社会政策、民主化が十分でなかっととの指摘もある 明治の人たちは気づかなかったわけではなかった しかし、彼らは、彼らの優先順位にこだわり、勤勉な人材をそれらの問題に集中的に投入した
・公的サービス機関にせよ企業内サービス部門にせよ、昨日を棄てるどころか、昨日にしがみつく その結果、最高の人材をもはや意味さえなくなった仕事に縛りつける
・新たな活動、機関、計画は、期間を限り、その間の成果によって目的と手段の健全さを証明できた場合のみ、延長を認めることとしなければならない
・先進国において、今日のような高等教育が可能となったのも企業のおかげだった 企業が教育に必要な費用を生み出し、教育後に必要な職場を生み出した
・政治的に分裂し細分化された世界にあって、国境を越えて最も活動しているものが企業である
・一般的に官僚主義と呼ばれているものは、自分たちが目的であり、組織は手段であると錯覚したマネジメントのことである これは、マネジメント、特に市場の試練にさらされていないマネジメントがかかりやすい病である
・戦略計画において最初に行うべきことは、あらゆる種類の活動、製品、プロセス、市場について、「もし今日これを行なっていなかったとしたら、改めて行おうとするか」を問うことである 答えが否であるならば、「それではいかにして早くやめるか」を考えることである
・昨日を体系的に廃棄しようとすることが、すでに戦略計画である それは思考と行動を強いる しかも、新しいことに必要とされる人材と資金をもたらす 行動への意欲までもたらす
・陳腐化したものの廃棄抜きに新しいことに取り組む戦略計画は、いかなる成果も生むことがないと言って良い
・レーヌが考案した方式は、欧米の他の諸国の施策とは対照的に、企業や産業界に対し雇用の維持を要請するものではなかった それどころか逆に、技術開発や経済活動によって、どの程度の過剰雇用が生じるかを予測するよう要請した 同時に、将来の労働力とスキルの需要を予測するよう要請した
それらの情報は、政府、経営者ら労働組合の三者で構成される半官半民の組織、レーヌ委員会に提出された このレーヌ委員会が過剰となる労働者の所得を保障した 彼らを再教育しら新しい仕事を見つけた 必要とあれば引越しさえ助けた もちろんレーヌ委員会が費用を負担した
・「企業活動は企業人に任せ切ってしまうにはあまりに重要である」とする しかし、重商主義が企業を指導、誘導、補助するのに対し、立憲主義は企業に「何々するなかれ」という
・重商主義においては、政治的、軍事的能力を強化する方向にある限り、企業活動を支援する 立憲主義においては、いかなる状況下にあろうとも、企業は政府から遠ざけておこうとする
・ヨーロッパ大陸が重商主義の地であるのに対し、立憲主義の地はアメリカである
・アメリカでは、政府部内にあって企業を代表し企業の利益を代弁する省、すなわち商務省が設置されたのは、1913年、ヨーロッパ大陸の諸国に遅れること100年から150年後だったという事実がある
・政府以外の組織は、もはや重商主義における国家政策のツールではない
・倒産が許されず、生産がほとんど行われないことこそ、国有国営の経済システムにおける最大の弱みである 社会と経済の健全性には新陳代謝が不可欠である
・変革が社会にもたらすインパクトにはスウェーデンのレーヌプランのような緩衝策が必要である レーヌプランの強みは、一人ひとりにとっては破局となりかねないものを、市場メカニズムをフルに動かすことによって、保険数理的な対応の可能なリスクに転化したことにある