「和」で終わってはいけないチームビルディング
私たち日本人の心に根付く文化とも言える「和」。
まずは意味を共有しましょう。
1 仲よくすること。互いに相手を大切にし、協力し合う関係にあること。
2 仲直りすること。争いをやめること。
3 調和のとれていること。
(デジタル大辞泉より抜粋)
上記の他に「和」には「やわらぐ やわらげる なごむ なごやか」といった言葉も含まれています。
「調和の取れていること」という意味からも窺えるように、一見すると、ある種の完成形が「和」であるかのように錯覚してしまいます。
しかし、五十音の「わ」のあとに「を」や「ん」があるように、「和」という概念にも続くものがあるのではないか?
そんなことを考えてみたので、今回は人間関係の一つである「チーム」を例にとって記事にしてみようと思います。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
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スポーツの世界などでは、チームを「互いに相手を大切にし、協力し合う関係」にすることで、たとえ個の力が劣っていようとも補い合って勝利に結びつけるという考え方があります。
この考え方を象徴するエピソードの一つが、陸上男子400mリレーでのメダル獲得ではないでしょうか?(気になる方は検索してくださいね)
一般的に考えれば、4人の選手が走るこのリレー、単純に4人の100mのタイムが、そのまま順位に影響を与えると思います。
しかし、日本の場合はバトンパスに着目し、リレーを個人競技とは一線を画した団体競技として捉えることで、選手間に協力が生まれ、4人の選手のベストタイム以上のタイムが生まれることがあるのです。
また、日本の義務教育では集団行動の規律を守ることを「和」とし、「仲直りすること。争いをやめること。」を法として生徒の精神に植え付けます。
賛否あるでしょうが、この教育によって日本の治安が一定水準を保っていられることもまた事実なのではないでしょうか?
このように、ある集団に対し「和」という共通認識を持たせることで、集団はチームへの変容し、一つの目標に向かって進んで行くための基盤を形成します。
それでは、話をビジネスとしてのチームに置き換えてみましょう。
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ビジネスでのチームとは、利益追求のための集団であり、チームの立ち上げから解散までには5つのステージがあるとされています。
「タックマンモデル」というプロセスなのですが、それぞれのステージは下記のようになります。
①形成期:メンバーはお互いのことを知らない。また共通の目的等も分からず模索している状態。
②混乱期:目的、各自の役割と責任等について意見を発するようになり対立が生まれる。
③統一期:行動規範が確立。他人の考え方を受容し、目的、役割期待等が一致しチーム内の関係性が安定する。
④機能期:チームに結束力と一体感が生まれ、チームの力が目標達成に向けられる。
⑤散会期:時間的な制約、事態の急変、目的の達成等の理由によりメンバー間の相互関係を終結させる。
(人材マネジメント用語集「タックマンモデル」の解説を元に一部改編)
今回のテーマでもある「和」ですが、これは上記の③や④の期間に必要とされる共通概念だと私は思います。
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ここからは私見です。
私は「和」のもつ「やわらぐ やわらげる なごむ なごやか」といったモノだけでは良いチームにはならないと考えています。
確かにチームの仲が良いことは、相互信頼につながり、モチベーション維持には不可欠な要素でしょう。
ですが、人間は「慣れ」という機能を持っている生物ですから、いつしか「調和」という概念が外れ、「和やかさ」という「なあなあで居心地の良い」ことを主眼にしてしまうリスクがあると感じています。
混乱を経て団結をしたばかりの頃のベストパフォーマンスをチームの散会期まで「和」の力だけで乗り切るのは不可能だと思うのです。
それでは、何を足せばチームビルディングは機能し続け散会を迎えることが出来るのか?
それは「厳しさ」です。
チームが形成され統一されるまでに存在している厳しさとは違う、信頼関係が成立しているからこその厳しさ。
チームメイトのため、チームそのもののために必要な劇薬。
私はこれを「凜(りん)」と呼びたいと思います。
1 態度・容姿・声などが、きびしくひきしまっているさま。
2 寒さのきびしいさま。
3 身がひきしまるように寒い。
4 きりっとしている。りりしい。
(デジタル大辞泉より抜粋。一部改編)
この概念もまた、私たち日本人の心に根付く文化だと思います。
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「和」には、私たちの住んでいる日本という国を指す意味も含まれています。
調和、という言葉からも、つい「和」に完全性を求めてしまいますが、人間は成長しても退行しても変化する生き物です。
一つの言葉を信条にできる人は稀でしょう。
「ストレッチゾーン」と「コンフォートゾーン」のような概念もありますが、ある種の刺激があるからこそ、人は向上できるのだと思います。
しかし、厳しさは劇薬です。
調和を乱し、築き上げてきたものが壊れてしまうリスクもあります。
ですが、それでも本当の信頼とは、厳しさに含まれている想いをお互いに信じることなのではないでしょうか?
「和」と「凜」を備えたビジネスパーソンでありたいものです。
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ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の投稿は以上です。
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