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【農】麹菌
概要
はじめに・・
食用ではなく、有機肥料(ぼかし肥料)を製作に使用するカビを培養するために調べ集めたものをまとめたメモ書きです。
内容は今後も添削や変更する可能性があります。
麹菌とは
麹菌とは、麹をつくるための糸状菌の総称。コウジカビとも呼ぶ。
黄麹菌
古くから利用されており、味噌、醤油、日本酒、酢、味醂などを醸す代表的な菌種。 各醸造に適した分類では、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの3酵素力のバランスにより決められる。 色素による分類では、純白黄麹菌、青麹菌なども存在する。そもそも黄麹菌と呼ばれる菌種は多数存在する。白麹菌
河内源一郎が沖縄泡盛黒麹菌からアルビノの突然変異体として単離した菌種。九州地方の焼酎文化に貢献し、昨今の全国的、世界的な焼酎ブームは、この白麹菌によって広まった。黒麹菌
一般にアワモリコウジカビで広く知られている。古くから沖縄で泡盛の醸造に用いられてきたコウジカビである。クエン酸発酵が盛んで、もろみをpH3程度の比較的強い酸性に保つことができる。したがって、発酵途中での雑菌の繁殖を防ぐ効果があり、比較的気温の高い地方でのアルコール醸造に適している。
カビの生態
酸素との関係
麹カビ菌は、増殖するためには酸素が必要な好気性菌です。
温度
繁殖適温は30~35℃で、47℃度前後で死滅していきます。 甘酒つくりでは60度前後で米を糖化させますが、それは麹カビ菌のアミラーゼなどの酵素の働きを利用したもので、その温度帯では麹カビ菌本体は生きていくことができません。
30~35℃ 発芽最適温度
※発芽は栄養分・温度・湿度の三条件が揃えば発芽する。栄養分は穀物以外に特に添加する必要がないが、添加すれば発芽の誘導期を短縮できる。穀物以外では、パントテン酸やイノシトールが発芽率を高めるとされる。25~30℃ プロテアーゼ等のタンパク質を加水分解する酵素の生産
30~50℃ プロテアーゼ酵素が最も活性化する。
35~38℃ 繁殖する。
35~40℃ アミラーゼ等のデンプンを加水分解する酵素の生産。
40℃~ 酵素の生成量が減る
45℃~ 増殖が止まる
47℃~ 徐々に死滅する
60℃ アミラーゼ酵素が最も働く
60℃~70℃ 多くの酵素が活性を失う
酵素
プロテアーゼ
タンパク質をより小さなポリペプチドやアミノ酸に加水分解する。プロテイナーゼ
タンパク質内のペプチド結合を切断する。タンパクの可溶化
ポリペプチドの生成
(豆臭の除去)
ポリペプチドとは10個以上のアミノ酸がペプチド結合により繋がった分子です。
ペプチダーゼ
遊離アミノ酸の生成
アミラーゼ
グリコシド結合を加水分解することでデンプン中のアミロースやアミロペクチンを、単糖類であるグルコースや二糖類であるマルトース及びオリゴ糖に変換する酵素群α-アミラーゼ
α-アミラーゼはデンプンを加水分解して、デキストリンやオリゴ糖を生成する酵素。デンプンの液化
デキストリンの生成
オリゴ糖の生成
グルコアミラーゼ
グルコアミラーゼは糖化酵素と呼ばれ、可溶化されたデンプンの非還元末端からグルコースを一個づつ加水分解して生産します。グルコースの生成
リパーゼ
大豆油脂から脂肪酸に加水分解する。ペクチナーゼ
ヘミセルラーゼ
大豆(米・麦)組織の分解セルラーゼ
セルロースをブドウ糖が数個つながったオリゴ糖に加水分解する酵素。チロシナーゼ
麹の褐変ホスファターゼ
リボ核酸の分解フイターゼ(ホスファターゼの一種)
大豆・米のフィチン酸からイノシトールの生成ホスフォリパーゼ A・B・C・D
大豆のレシチンからコリン、イノシトール・リン脂質からイノシトールの生成エステラーゼ
エステルを酸とアルコールに分解、POBB分解酵素などグルタミナーゼ
グルタミンをグルタミン酸に変える。
pH
pH4.6~7.5はまでは差がないが、pH3以下では明らかに発芽率が減少するのが確認されています。
麹菌の自己消化
麹菌の生育が盛んな時期には菌体成分が合成され菌体が増加していく。しかし、菌体の生育が最高に達し生育が止まると菌体成分が酵素によって分解され始め可溶性の分解産物となって菌体外に出て行き、遂には菌体の中味が空になってしまいます。これを ″ 麹菌の自己消化 ″ と呼びます。
自己消化は45℃以下では、温度が高いほど盛んになることが確認されています。これは、以下の理由が考えられる。
温度が高くなるほど酵素の反応が早くなる。
基本的にエネルギー源(糖分)が欠乏するために自己消化がはじまるが、温度が高くなるにつれ菌体内の代謝が促進され菌体内に貯蔵されている糖分が早く消化されてしまい、その結果自己消化が早くおこってしまう。
高温になるほど酵素の力が強くなり菌体が負けてしまう。
低温では不活性化している酵素が高温になると活性化する。
製造(乾燥米麹)
材料
種麹 100g
白米 500g
道具
笊
ボウル
トレイ 二つ
テトロンの蒸し布 二枚
パイレンの敷布 二枚
綿の晒し布 二枚
工程
洗米
笊に白米を入れる。
ボウルに水を溜めながら米を2、3回洗う。
ボウルの水は廃棄する。
浸け置き
笊に入れた白米がしっかり浸かるまでボウルに水を入れる。
雑菌などが入らないようにラップなどする。
浸けたまま、置いておく。
水につけておく時間は気温にもよりますが、春・秋は6~12時間、 夏は3~5時間、冬は15~20時間ほどが目安。
水切り
ボウルから白米の入った笊を引き上げ、優しく軽く攪拌して水をきる。
笊を激しく振ったり攪拌すると米が割れてしまい米粉ができてしまうので注意すること。笊を傾け、20分置き水を切る。
笊の角度を反対に傾け、さらに20分置き水を切る。
米を蒸す
蒸籠の鍋の水を沸騰させ準備します。
白米を蒸し布で包みます。これを二つ作ります。
それぞれを蒸籠に入れて、下段は空にして中段と上段に重ねて三段を蒸籠鍋の上にのせます。
まだ蓋はしない。
※下段は蒸気が強すぎるためびちゃびちゃになりやすいので空にする。上段から蒸気が貫通して出てきたら蓋をします。
20分間蒸したら、中段と上段を入れ替えてさらに20分間蒸します。
米を捻り潰すと ″ ひねり餅 ″ ができたら蒸し米は完成。芯が取れて最大限に水分が少ない固めの米が理想です。少ない水分で仕上がれば雑菌が繁殖するリスクを軽減できます。
種切
清潔なトレイに敷布を広げ、そこに蒸しあがった白米(以下、蒸し米と呼びます)を広げます。
これを二つ作ります。
それぞれの蒸し米をしゃもじで蒸し米を切るように熱や水分を飛ばします。温度計を設置し、温度をモニターしながら45℃まで冷まします。
時々、攪拌する程度にして自然に冷ますこと。熱がひいたら、種麹を茶漉に入れて二つの蒸し米にまんべんなく振りかけます。
蒸し米の塊をほぐし、全ての蒸し米に種麹がいきわたるように攪拌します。
引き込み
蒸し米の温度をモニタリングするため蒸し米に温度計をセッティングします。
敷布で小さく丸くなるようにテンションをかけて強く包み、口を輪ゴムで縛ります。
さらに敷布の上から、晒し布で包みます。
敷布と晒し布で包まれた蒸し米を醗酵器の上段と中段に入れます。
下段には水の入った受け皿トレイを入れておきます。設定温度を35~42℃くらいに設定し、品温が35~40℃を保つように随時チェックしながら24時間ほど保温する。
切り返し
温度が40℃まで上がらないようなら、そのまま保温を継続し、温度が40℃を超えそうになったら、醗酵器から取り出して保温していた米を攪拌して、温度を下げます。
塊をほぐします。
元通り戻し再び醗酵器に入れて品温が35~40℃を保つように保温する。
盛り
切り返しをしてから、三時間以上経過したら、布をほどいて麹蓋に移します。
平らに慣らします。
品温をモニターしながら、麹蓋を醗酵器に入れ再び40℃に上がるまで保温します。
中仕事
すばやく取り出して、攪拌し塊をほぐし、38℃くらいまで下がったら再び醗酵器に戻し保温します。
これを数時間繰り返します。
仕舞い仕事
すばやく取り出して、攪拌し塊をほぐし、38℃くらいまで下がったら再び醗酵器に戻し保温します。
これを数時間繰り返します。
出麹
乾燥器から麹蓋を出します。
塊は解します。
米麹としては、ここで完成です。
乾燥
出麹で完成した麹を乾燥させます。
参考文献
奈良原英樹「麹菌と麹」
魚住武司・有馬哲(東京大学農学部)
「麹菌の自己消化」Wikipedia「麹」
安藤ゆりえ「米麹の作り方」