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【小説レビュー】無慈悲な強さの物語!『さよならの言い方なんて知らない。9』

「さよならの言い方なんて知らない。」の新刊が上梓されたので、早速読みました。もう9巻まで出たのですが、スピード感やおもしろさはずっと同じでした。感想を綴ります

賢者の円卓。通称「PORT」の頂点に君臨した男、ユーリイ。架見崎で最強のチームを率いた彼は、常に「王」だった。優雅で、強く、美しく。しかしまったく本心を見せない、謎の王様。ゲームの勝者に最も近いとされた彼は、心の奥底では何を求めていたのか。ユーリイの「生きる意味」とは? その過去を知るタリホーと対峙するとき、王の真実が明らかになる。
孤独と自覚の青春劇、第9弾。

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架見崎シリーズ全体を通して、本心が見えない謎の強キャラであった男・ユーリィに焦点があたった物語でした。また、終盤の雰囲気が感じられ、物語の終わりが少しだけ示唆されたようにみえました。

終盤の準備回という位置付けかもしれませんが、物語の面白さは健在です。チーム同士が戦ったり、能力の拡張など初期から続く、「戦い」のルールを使って新しい展開が続きます。9巻も続いて、だれずに、展開し続けているので、新刊が出るたびに追いかけてしまいます。

この架見崎シリーズの好きなところは、いろんな種類の「強さ」を書いていることです。特に強さの裏側を丁寧に書いているところが好きです。9巻でいえば、水上恋として生きたユーリィの過去に焦点があたっていました。この回想シーンが強さの由縁を語っていました。

強い人の思考って、正当なルールの上でも狂気にみえることがあります。そして、勝っても空虚な感情になるようです。強いからみえる感情や景色が新鮮でした。

主人公・香屋が架見崎にきたときから、ユーリィは無慈悲な強さを誇っていました。そんなユーリィには右腕がいました。タリボーです。
タリボーが過去のユーリィを語るシーンがあり、ある意味今回はタリボーの物語でもありました。「なぜ裏切ったのか」がわかると、おぉ、、と変に納得してしまいました。

また、現在架見崎最強の白猫さんの苦悩の見どころです。
最強であるから責任が発生し、白猫さんの肩に重くのしかかっていました。自分の強さがチーム戦略に影響を与えているという、極まっとうな分析と、まっとうな感性を持っていて、人間らしさをみました。

白猫 「創世部というか、戦うことに飽きた」
 略
トーマ「もしかして、プレッシャーを感じているんですか?」
 略
白猫「当たり前だろう。私が死ねば何人死ぬ?」

「さよならの言い方なんて知らない9」P225

そして、物語の終わり方を示唆する展開もあって、どう終わるのか楽しみです。特に、架見崎の優勝者へ送られる景品は誰が何をもらうのか、物語は現実を変えられるのか、が焦点です。次回も楽しみにしています。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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