見出し画像

AIベンチャー Laboro.AI退職エントリ〜AI未経験でアーリーなベンチャーに飛び込んだ話〜

2023年2月28日をもって4年間在籍したLaboro.AIを退職しました。

本記事では、私がLaboro.AIで4年の間に強い想いを持って取り組んだこと。アーリーなフェーズのベンチャーという環境で「組織の成長=自分の成長」で何を学んだのかをお伝えします。アーリーなベンチャーに挑戦してみたい方、AI業界に興味がある方に参考になれば嬉しいです。

※ 2023/3/12 時点の記事のため現状と乖離がある可能性があります

記事が長い!!という方は、↓の投稿がダイジェストです。


Laboro.AIに入社するまでと入社した理由

はじめにLaboro.AIは、AIに関するコンサルティングや受託開発を行うAIベンチャーです。ブティックファームのようにコンサルできるAIベンダーというのがシンプルな説明です。
Laboro.AI入社までの経歴や入社の経緯、具体的にどういう企業なのかは、概略をLiigaさんに掲載しています。興味のある方は、読んでみてください。

Laboro.AIへの入社の決め手は、4つあります。入社後は、深く考えずにとりあえずやれるだけ全力でやりまくろう!!と決めて入社しました。

  • 代表であるCEO椎橋とCTO藤原がすさまじく高い思考力と経験を持ち、これまで会ったことのないタイプ

  • 利益追求よりも腰を据えた取り組みを重視している

  • アーリーなステージで会社と共に成長ができそう
    ※ その時点は代表2名、取締役1名、社員が4名

  • AI人材はニーズが高く可能性に満ちている

Laboro.AIの4年間で何をしてきたのか

Laboro.AIでの役割

  • ソリューションデザイナとは
    ソリューションデザイナは、リード獲得後の営業から提案、受注後の実行、保守までを担う非常に広い役割をもつ職種です(無茶苦茶)。分かりやすいイメージは、BCG出身でアカデミア知見もある椎橋・藤原の代表2名と似たことをして欲しいという恐ろしい役割です(直接的に言っていないけどロールはそう)。

    ソリューションデザイナは、Laboro.AIの尖った企業というイメージの根幹となる職種です。提案営業とコンサルならたいしてAI詳しくないんでしょ?と思うかもしれませんが、とんでもない。。論文も読むし、どの程度のデータでどの程度の精度が出るかを理解しているヤバい人達です。

  • 部門責任者としての役割
    ソリューションデザイナは、会社の全売上を担うため、その部門の責任者は会社の売上責任者になります。非常に重い役割です。もちろん代表やリードジェネレーションのチームと協力するので、全責任を追求されるわけではないです。

    部門責任者としては、経営に近くなければ実行できない組織の基盤作りをしました。典型的なベンチャースタイルの泥臭く何でもやるハードワークですね。

    • 協業先との事業展開の戦略策定

    • 自部門の評価制度や等級再設計

    • 自部門の採用の企画と実行(エージェント対応・媒体からのDM・認知向上のためのイベント開催 etc.)

    • ISMS資格取得によるセキュリティ体制構築
      ※ 担当していたお客様からの要請

Laboro.AIでの4年間でのマインドの変化

入社後の4年間は、私のマインド変化から3つのフェーズに分かれます。

  • フェーズ1 個として磨く時期
    ニーズ理解、AI技術とAIプロジェクトの進め方、周辺技術、事業作りを学ぶ

  • フェーズ2組織の安定とAI活用を考える時期
    大口顧客の獲得・AI活用への興味・組織力の拡充に目覚める

  • フェーズ3 組織と経営を考える時期
    組織拡大によるマネジメント、組織間の連携や再現性の試行錯誤

フェーズ1 個として磨く時期: ニーズ理解、AI技術とAIプロジェクトの進め方、周辺技術、事業作りを学ぶ
この時期は、スピード感を持ってAIへのニーズ理解、AIと周辺技術を急速に学んだ時期です。一言でいうとあらゆる部位の筋トレを膨大にこなしたイメージです。

私が入社した19年は、AIブーム真っ盛り。ニーズとしては、AIを試してみるスタンスの企業が多い時期。大チャンスですね。一方、Laboro.AIは売上がなく受注しないと経営がやばくないか?という状況。ニーズは多いので、必死に量をこなし学びました。具体的には、月平均30回の商談、多い時は週に何度か提案というやり方です。前職までの商談や提案のスピード感覚は、完全に破壊されました。どうやら類似のベンチャーに入社した元コンサルは、同じ感触を持った方も多いようです。

知識無くして提案できないため、日々ヒマがあれば学習です。私は、AIはもちろんのことAWS等のクラウド、Python、API、Gitなど何も知らないため、かなり必死でした。個人的には、コンサル時代も銀行業務やリスク計算、IFRSなど何も知らないけどお客様と会話するために死ぬ気で学習していたので、学ぶことはそこまで苦痛ではなかったです(題材が変わっただけ)。
この分野は、進化が激しく誰も答えを持っていません。プロジェクトでの実践を通じてエンジニアと学んでいきました。エンジニアだって何でも知っているわけではありません。とにかく泥臭く。お客様のサーバ環境構築もするし、アノテーションもやるし、データのクロールもする。時には、エンジニア不足により自身でPythonを使ってデータを可視化、モデル開発や評価もしました。

フェーズ2 組織の安定とAI活用を考える時期:大口顧客の獲得・AI活用への興味・組織力の拡充に目覚める
この時期は、フェーズ1の基礎トレの実践と応用をしたイメージです。小ぶりな新規営業から脱却し、億を超える大口顧客の獲得に注力。多くのAIを活用した事業化プロジェクトにチャレンジしていました。

世の中では、コロナにより、AIのお試しから本気の活用に変化した時期です。受注には、産業×AIの知見が必要となり、技術に詳しければ大きく稼げる時代は終焉。PoCニーズが急速に低下し、ビジネス効果がある提案に限定する動きが目立ちました。一方、今こそチャンスとAI投資に踏み切る企業においてAIを活用した事業化ニーズが増加しました。

Laboro.AIも事業化の検討からご支援させて頂く機会が増えました。私のAI活用への解像度もかなり上がったように思います。その結果、AIを活用した事業化のポイントは、シンプルに3点と感じるようになりました。

  • データを持つものが勝つ(獲得し続けるエコシステムを確保し上手く活用したものが勝つ)

  • 技術を理解した上で有効なデータを収集する仕掛けや戦略を素早く描き、実践を通じて成長させる

  • AIがアウトプットした結果をユーザーに伝えるサービスのUXやデザインとの融合する一気通貫での対応力

AI活用の解像度を上げることが出来た事業開発の実行は、当然ですが一人のPMで対応できません。採用強化の必要性を感じ、前職のPwCでの経験を活かして注力し始めました。特にエージェントとのリレーションは、一日にしてならずです。広告やSNSのインプレッションと同じくエージェントの限られた時間を奪い合うため、わかりやすいターゲットと強い訴求力が必要です。当時のLaboro.AIには、中途採用の企画と実行経験があるメンバーが不足していたため、強くコミットして対応を開始しました。

フェーズ3 組織と経営を考える時期:組織拡大によるマネジメント、組織間の連携や再現性の試行錯誤
この時期は、大口のお客様が複数存在し、チームの核となるメンバーもいる状態。採用も機能しメンバーが増えてきました。経営としても成長加速を狙い30人と50人の壁突破を図った時期です。私は、部門責任者や最終的に執行役員として経営に近い立場で未経験の組織マネジメントにチャレンジしました。

世の中では、AIベンチャーが続々と上場。DXの流れでベンチャーやコンサル会社が急速に拡大し、人材と案件の獲得競争が飛躍的に激しくなっていました。売上拡充・メンバー育成・採用、同時に先の戦略を行う挑戦です。この頃からは、フェーズ2までの行いを強く後悔したり、自身のマネジメントや思考の透明性不足、アウトプット不足など力不足を痛感。これまでの私は、明らかなプレーヤータイプ。組織マネジメントをする意思で準備をしてこなかった人間が、実績から我流でマネジメントをしているパターンです。この場合は、属人性が高くなりがちで30人の壁までは超えられますが、50人くらいから厳しくなってきました。繰り返しますが、過去の自身のやり方に後悔が多くありました。

そんな状況での大きな転機は、妻が入院し小さな子供二人の育児をワンオペで対応が必要となった事態です。妻は、年間30人程度がなる病気になり、非常に深刻な状態でした。深刻度合いは、1ヶ月程度の記憶がないレベルとご理解ください。非常に幸運なことに日常生活ができる程度に回復。4ヶ月間で戻ってきてくれました。この時は、はっきり言って仕事どころではないのですが、回復するか未知数のため、時短勤務で業務継続をしました。当然ながら満足に責務を果たせなくなり、回復後も元の働き方に戻すことは難しくなりました。

なぜ退職するのか

ここまで読んでいただければ、私がLaboro.AIに魂を込めてコミットしていたこと、最終的には困難にぶつかった事をお伝えできたと思います。退職を決めた理由は、主に2つの限界を感じたことです。

  1. 働き方のシフト
    私個人の家庭環境の変化により、サステナブルな働き方にシフトしたいと強く感じました。アーリーなフェーズのベンチャーあるあるですが、常に早い成長が必要であるにも関わらず組織力やブランドも脆弱なためやることが多い。まして、育児と両立することは、変化の激しい環境では難しいため、安定的な環境にシフトすることを望みました。

  2. AIのビジネス活用に対する限界
    2つ目の理由は、自社で好きに使えるデータとサービスです。
    私がやりたいことは、AIの浸透による生活変化です。実現するためには、データと投資体力が不可欠。そのため、どうしても受託になりがちなAIベンチャーのビジネスモデルに限界を感じました。自社でデータ・サービスを持っており、さらに生み出せる事業会社で活動するべきと強い考えを持ち始めました。

Laboro.AIの4年間で学んだこと

Laboro.AIでは、色々なことに自由に挑戦可能であり、成果を出せば評価される環境がありました。私は、AIは勿論の事、経営未経験・組織を作り未経験・戦略コンサルや事業企画未経験にも関わらず様々なことを任せて頂き多くを学ぶ事ができました。汎用的ではないAI観点以外を抜粋し、参考になりそうな一部をお伝えします。

  1. 誰よりも当事者意識を持つこと
    あらゆる組織で言われていますが、当事者意識が最重要です。さらにいうとメンバーやお客様に伝播させるくらいの意識が欲しいです。私のLaboro.AIでの当事者意識は、アーリーフェーズ特有の珍しい状態のため、通常の組織の方より非常に高いと思います。理由は、初期メンバー特有の「組織=自身」の状態です。
    ・組織のチャレンジ=自身のチャレンジ
    ・組織の収益拡大=自身の収入拡大
    ・組織の成長=自身の成長
    という状況のため、当事者意識を持つのは当然です。自然と経営にも目線が近付いていきます。

  2. 自分がやりたいことを追求すること
    誰もがやりたいことを追求して欲しいという代表椎橋の想い(あまり言ってないですが)。その想いのもとで、私のやりたいことを実現することは、会社の成功と一体だったと思っています。また、当然ですがやりたいことをやるには義務を満たす必要があります。あらゆる手段を駆使してやりたいことの実現を目指しました。
    ・挑戦するために必要なベースの売上を効率的に確保したい
    ・とにかく人が欲しい
    ・やりたいことを一緒にやってくれる企業やキープレーヤーを探す
    ・企業が我々と組むメリットを感じるための事例積み上げ
    結果的に企業成長が必要なピースが揃っていました。デメリットとして属人化や思考の透明性不足が発生したことは、後悔をしています。

  3. 組織文化とブランディングの重要性
    やりたい事があってもAIは、データが必要です。我々だけで実現不可能です。「やりたいことを一緒にやってくれる企業やキープレーヤーを探す」が必要になります。そのためには、「認知」「自社が何者かの追求」が必要です。AIは技術なので、技術が重要なことは前提ですが、それだけではありません。中長期的なパートナーとなるためには、私たちが組織として何者なのか高い解像度が必要です。カルチャーの具現と言うかもしれませんが、その重要性を痛感するのは、カオスな環境ならではの学びでした。

  4. オープンなマインド
    Laboro.AIは、コンサルタント・大手事業会社・ベンチャー・SIer・エンジニア・研究者など多様なカルチャーで構成されています。Laboro.AIのAIエンジニアは、研究者にやや近いため、コンサルタントと混じる難易度が非常に高いです。互いのリスペクトやオープンマインドがなければトラブルが起きます。率直に考えていることをコミュニケーション出来る関係性の構築、気づきや情報を公開し、自律的に拾いあうことの重要性を非常に感じました。カルチャーが統一され言語が通じやすい大手企業では、真の意味で感じることができない感覚だと思います。

  5. 経営の苦しみ
    私は代表ではありませんが、非常に近くで見る事ができました。私は、経営の成功可否を経営者次第と思っています。経営者はサイコパスでなければ出来ないんじゃないかと思ったことがあります。経営者以外の経営関係者も苦しいです。外部ステークホルダーと会社メンバー、ビジネス環境の全てが変化する中で、素早く柔軟に変化し、変化した思考のアウトプットが求められます。マネージャー以上は一定求められますが、経営者はやはり違います。メンバーが増えると本音で会話できるメンバーや自分の悩みと同等レベルの解像度で考えられる人は限られます。伴走してくれる仲間の重要性を非常に強く痛感しました。

最後に

こうして振り返ると非常に刺激的で本当に大変でしたが、思い出深いことばかりだったと思います。Laboro.AIには、感謝しかありません。私が誇れる唯一の成果は、チームメンバーと思っています。あの知名度でよくこのメンバーが集まったな〜と思います。そこだけは、頑張ったと自分を褒めたいです!その他では、大した成果を残せなかったので引き続きチャレンジをしたいです。

このような経験を今後にちゃんと活かし、世の中にもお伝えしたいと思っています。
今回の記事を皮切りに引き続き発信していきます!!

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集