くっしー(#インカメおじさん)

#インカメおじさん で検索すると、出てくる人です。https://twitter.com/k_kushiya 以後お見知りおきを

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最近の記事

進水式

大切な友人が、とても苦しんでいる 気持ちだけでも寄り添って また会う日が来たら、笑顔で 「お帰り」が言いたい。 今は見守ることがしかできないけど 最後の一節に、想いを込めて 進水式

    • 嬉しさを感じる時

      僕が1番 仕事中に 幸せを感じる時って スタッフが お客さんと 楽しそうに笑いあっている 笑い声を聞いた時です。 最高の時間だと思ってます。 https://twitter.com/k_kushiya/status/1313505520053936128?s=19

      • 今 大切な仲間が とても耐え難い状況になっている。 気持ちだけでも、寄り添ってあげたい。

        • アクアリウム

          無駄に長い歩道の幅に対して 申し訳ないくらいに、はじっこを歩いていた。 梶裕一は カシミアのセーターの二の腕をさすりながら 広い土地から 吹きぬける風をたどるように 瞬きをしている。 枯葉が乾いた音を立てて横切った。 秋の気配に、憂鬱になってくる。 目標は明確なのだが 生産性のない毎日に、ふと寂しくなる (浪人生と名付けたのは一体誰だよ まったく。 もっと、ポジティブな名前にしてくれれば、もう少し気は晴れたのに キャンパス予備軍とか プレアカデミリアンとかさ) 誰かに文

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          白衣を翻し、リノリウムの床を足に馴染んだサンダルで 速足で歩く。看護婦の詰め所を通る時、照れ笑いで会釈した。 若い看護婦が、ニコリと笑う。 404号室 無機質な、直線で構成された病院の風景は いつも冷たく感じて、よそよそしいが 今日は違う。 数日前、脳外科手術を行った患者はギリギリのところで 一命を取り留めた。だが、まだ意識は戻らない。 部屋番号の隣に記された 患者の名前を右手で一撫でして呼吸を整えた。 ノックして、引き戸を静かに開ける。 燃えるようなオレンジ色。 誰

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          「そのままの意味なんだ。」力亜は僕の心を読んだように そう言った。 抱きかかえている彼女を横目で見ると 「彼女には時間がなかったんだ。」と言った。 すっと、自分の足で立ち始めた彼女から美しい声が聞こえたのは それからしばらくしてからだ。 「梶先生。驚かせてごめんなさい。どうしてもこういう形じゃないと 私、会えなかったみたいなの。今日の日をどんなに待ったことか。」 「先生って…。僕は親父じゃないんだけど。」 「まだ先の話なんだけど、私、事故にあってしまってね。 頭を強

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          この時、牧村は片耳で厚揚げが取り乱している声を聞いていた。 「あれ?あれ?どういう事これ!」 視線だけ、厚揚げに合わせた。 (どうした?) 「牧さん、牧さん。この力亜って子も同じように読めないのよ。 過去も未来も、全く読めないわ。それにこの子…何者?」 ザーーー 限りなく直線で雨が降り始めていた。 傘の先端から滴る雫は、もう糸のようになっている。 僕は導かれるように、スズカケの木へと近づいて行った。 近づかなくても分かった。やっぱり彼女だ。 彼女がまた、僕の目の前に

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          その日をきっかけに、僕は牧さんのおでん屋台に 通うようになった。半分は彼女にもう一度会うためだったけど もう半分は、素敵に美味しいおでんを食べながら 牧さんに、将来や恋の悩みを相談するためでもあった。 恥ずかしい話も、牧さんの前だと自然と話せてしまうのが不思議だ。 何よりもっと不思議なのは、牧さんは僕に関して いろんなことを言い当てる。占い師とか予言者みたいに。 医者の息子であるとか 友達にとんでもない変人がいるとか。 牧さんは底知れない人だ。 ただ、とても優しい心を持っ

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          「偉い!」 声が聞こえたので振り返った。すると 頭にバンダナを巻いた、おじさんが僕を見下ろして 感心した様に、腕を組んでいた。 「偉いよ、兄ちゃん。お墓の犬は、兄ちゃんの犬かい?」 どうやら悪い人ではなさそうだ。 「いえ、違います。さっき大通りでスクーターに轢かれてしまったみたいで。」 「あぁ、そうだったのかい。可哀想に。それで、お墓作ってあげた ってことかい。」本当に残念な顔をしている。 「そんなに大層なことじゃないですけど。」 「だって、こんなに立派な墓標がある

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          バスの一件から数日経って 未だに彼女の姿を心のどこかで探す日々を送っていた。 ただ、水族館へはもう行く気がしなかった。 なんだか、恥ずかしい出会いになってしまった上に 逃げるようにその場を去ったからなぁ。 今度、彼女を見かけたら 筆談でもいい。一人で声をかけよう。 あれから、一つ習慣ができた。 ポケットに小さい鉛筆のついたメモ帳を忍ばせている。 いつか、このメモ帳に彼女の言葉が書かれればいいな。 淡い想いに、ちょっとセンチメンタルになりかけている。 予備校の帰り道、力亜

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          揺れる尻尾を3本も見ていると、心が和む。 「ニィニィニィ。」陽気な黒い子猫達は、体を寄せ合って 冷える夜の中、足元ではしゃいでいた。 牧村は目を細め、今日も出汁の調整に余念がない。 「皆、美味しいって言って貰えるようにしてあげるからな。」 おでん鍋に声をかけると 「牧さんに味付けしてもらって、ホンマにワシらは幸せや、なぁみんな。」 とたこの長老が、しみじみと言った。 皆一様に頷いている。 立ち上る湯気に、温度を感じながら 牧村は今日も客待ちをしている。 最近、一つだけ習

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          眩しさに目を細めた力亜が、いつもの笑顔で言った。 「しっかし『ナンパとかそんなんでもない』ってさ。」 よく考えたら、僕は彼女と仲良くなりたくて 会いに行こうとした訳だから、立派なナンパだ。 今気づいた。自分でもそんなことやろうとしていたなんて驚いた。 「あ…そうだ。僕、嘘ついてた。」 力亜は僕の肩をポンポンと叩いた。 「嘘つき。」 「僕たちの顔、覚えてくれたよね?」 「覚えたのは、裕ちゃんの顔だけだと思うよ。」と言って 力亜は口髭を剥がし始めた。 示し合わせたよ

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          初めて会った時の印象が あまりにも幻想的であったせいか こうした何の変哲もない日常の中で、彼女を目にすることに 齟齬を感じる。なんとも不思議な感覚だ。 相変わらず線の細い美しさは、周りから際立ち 彼女の周りの空気だけ、静かに歪んでいく様な 錯覚に陥りそうになる。 胸打つ鼓動は、速度を増す。 あぁ。どうしよう。 臆病な僕はどうしてこうなのか? 今のこの状況をちょっとだけ後悔するという 矛盾する感情に揺さぶられる。 彼女が3つ前の席に座った。 雲間から光が差す。小雨はお

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          吐息のような音と共に、バスが到着した。 湿気のせいか、湿っぽい排ガスの匂いが鼻腔をついた。 バスの中に乗客は少なく、僕と力亜はバスの後方 二人掛けの座席に座った。曇りガラスに早速何かの数式を 書く隣の変装男を見ていると、気持ちのやり場に困ってしまう。 水族館までは、このバスに揺られること15分。 お尻に感じる振動に、ぼんやりしていた。 力亜は数式が解き終わると、バスの天井近くに貼ってある 水族館の広告を眺めていた。 白イルカが、可愛い顔でこちらに笑いかけているようにも見

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          せっかく時間をかけてセットをしたのに 淑やかに降る雨のせいで、緩い天然パーマの髪の毛は いつもよりカールしている。 父と顔を合わせないようにして、家を出ると 屋根付きバス停のベンチに座り 力亜を待った。早目に家を出たので、時間まで だいぶ余裕がある。 アイポッド操作して、この気分と風景に合う 音楽を探した。音もなく降る雨。 ミディアムテンポのドラムに 慎ましいギターサウンドが和音を醸し出す。 静かなハイトーンボイスで歌い出すボーカル。 “昨日見た夢の話でもしようか な

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          力亜はニコニコしながら、知香子が座っていた席に着いた。 「あのさ、力亜。頼みがあるんだけど。」 「珍しいね。俺にできることなら、なんでも。」 「一緒に水族館行ってほしいんだけど。」 「時速60キロで?」 「いや、そっちがメインじゃなくて。 実はさ、物凄い美人に会ったんだ。水族館で。」 「ほぅ。どんな塩梅の。」 「儚げというか、華奢というか。繊細な美しさなんだ。 あの人はもしかして、人じゃないかもしれない。」 「何言ってるんだよ。」 「なんとなくね、もう一度水