【自由貿易の恩恵💎】最適関税論から考察する貿易メカニズム:日経新聞解説📰2023/07/20
日本経済新聞の記事で
注目したい内容がありましたので
記事にしたいと思います💖
長いですが、目次をご活用いただきまして
どうぞ最後までご覧ください!
貿易黒字23カ月ぶり 6月、資源高一服で輸入額減
1~6月は6.9兆円赤字
記事に対するコメント:「TPPについて思うこと」📝
自由貿易を守る一線や基準はしっかりと築かなければならないと考えています
環太平洋経済連携協定(TPP)が英国の加入で12カ国体制になることは先日の記事で着目しました
国際貿易において、その自由化の質を落とさずに、加盟国のさらなる拡大をめざすべきだと私は思います💖
高度な自由化を掲げてきたTPPは新たな段階に進んでいることに間違いはないでしょう
なぜならば、アジア太平洋を中心とした地域に限られていた加盟国が欧州にも広がるためです
TPPがよりグローバルな枠組みに向かう一歩を着実に進めているのです
しかし、最大の焦点は
中国への対応であると考えます
マレーシアなど一部の加盟国は
14億人の巨大市場を抱える中国の取り込みに前向きな姿勢を示す一方で、日本やオーストラリアは慎重な立場を崩していないのが現状です
その主たる原因としては、他国に貿易で圧力をかける「経済的威圧」を、中国がやめようとしない姿勢に対する懸念があるからですね📝
TPPは関税の撤廃だけでなく
投資やデジタルなどの分野でも高水準の自由化を目指しています
だからこそ、中国のような存在は
国際貿易の秩序を乱しかねませんので、一定のルールや、自由度を抑える制度の構築は必須となるのです
しかし、本当にここまできてハイレベルでの国際貿易自由化の実現を諦めてしまうのでしょうか?
日本は率先して他国を仲間に引き入れ
TPPの拡大を主導すべき役割を担う責務があると思います🌏
国際経済政策:最適関税論
以下では、発展的な内容として交易条件が
可変である場合、大国による輸入関税率の
引き上げが当該国の経済厚生を改善させる
可能性を示します
米中貿易摩擦の理解につながる点が
たくさんあるのではないでしょうか??
この投稿でお伝えしたことは
1国中心主義的な観点からの「最適関税率」
の特徴付けについて、正しい認識を共有することにあります
関税率引き上げの効果✨
ある国が(関税を賦課している状況から)さらに関税率を引き上げる場合を考えてみましょう💦
まるで、米中貿易摩擦における関税戦争のような状況です
関税率を引き上げる(Δt > 0)と輸入国の
国内価格は上昇する(Δp > 0)ことになります
そのため、輸入数量は減少します(Δz < 0)
加えて、当該財の世界価格も低下する
(Δp∗ < 0)ことになります
なお、関税収入の変化については
①関税率は上昇するものの
②輸入数量が減少するので
一義的には確定しないことをご理解くださいね
そこで、以下の部分均衡分析を示した図解を
考慮して、その効果を考察しましょう
ある水準の関税率のもとでの輸入需要曲線は描いてはいませんので、お見知りおきください
関税率が高いほど、関税がゼロのときの輸入需要曲線のより下方に位置することになります
例えば、そのときの貿易均衡点が
e点だとすると、輸入量はzで、輸入国の
国内価格はzに対応する関税率がゼロの
輸入需要曲線の高さpに該当します
ここで、関税率が引き上がる(Δt>0)と
貿易均衡点は、輸出供給曲線に沿って
左下方(eʼ)に移動することになります
ここで、着目すべきポイントは、輸入量は
減少(Δz < 0 )して、世界価格も同様に
低下(Δp* < 0 )しているということですね
しかし、輸入国の国内価格は
上昇(Δp> 0 )しています
よって、輸入国の民間部門は、領域DE分の
余剰を失うという厚生の損失があります😅
次に、関税政策によって得られる収入についてもその変化を考察しましょう
関税率引き上げ前の関税収入は、ACの領域になります
しかし、関税率引き上げ後の関税収入は
BCDの領域です
輸入量は減少していることに伴っていることを確認しましょう
なお、関税率引き上げ後、関税率t引き上げに伴って国内価格と世界価格の乖離の拡大していることが図解からわかりましたね
最後に、輸入国の余剰、についてまとめますと
領域D(±)において、輸入国の民間部門が損失した余剰は、関税収入となって取り戻されていることがわかります
しかし、輸入国の民間部門における
余剰(領域 E) は損失したままです
(加えて、領域 A が示す関税収入においても
減少が伴います
ただ、関税率は引き上がっていますので
領域 B は関税収入において新たに獲得した
一国経済の余剰となります
ここで、大切なポイントは
上記の図解において「もし、E+A<Bなら
関税率引き上げによって輸入国の総余剰は
増加する」ことになる、ということですね
詳しくは議論できませんでしたが輸出供給
曲線、輸入需要曲線の弾力性によって
この条件を求めることができそうです📝
関税率引き上げの厚生効果
輸入国の民間部門の余剰は
減少することになりますね
民間余剰の減少分(D+E)を
定式化することにしましょう
$$
D&E: (z +Δz)Δp-\frac{1}{2}Δz Δp
$$
なお、関税収入を反映する余剰は
税率の上昇と輸入数量減少という二つの異なる影響を受けますので、一様に増加するか
どうかの判断はできかねます
引き上げ前の関税収入は(A+C)の領域
引き上げ後の関税収入は(B+C+D)の領域になります
そして、関税収入の純増加分は(B+D+A)なることを確認し、これらの変化を定式化すると以下のようになります
$$
Tariff Revenue\\≡-(z+Δz)Δp^*+(z+Δz)Δp+tΔz
$$
輸入国の総余剰の変化ΔWについても同様に考えることができ、次のような定式化が可能です
関税率の引き上げ幅が十分に小さければ
価格の変化と数量の変化の積で表される項は
きわめて小さな(オーダーの低い)数となるのでゼロとして近似し、無視して考えます
$$
Total Welfare:W\\≡ΔW = -z Δp^* + t Δz\\-ΔzΔp^*+\frac{1}{2}ΔzΔp\\ \\※-ΔzΔp^*+\frac{1}{2}ΔzΔp=0
$$
総じて、私たちは関税率の変化に伴う経済厚生の変化は「交易条件効果」と「貿易量効果」とに分解される
というインプリケーションを得るのです
$$
ΔW = -z Δp^* + t Δz\\ \\Trade Condition
effect:-z Δp^*\\ \\Trade Quantity effect: t Δz
$$
まとめますと、厚生変化分解の含意は以下の通りになると思います
①小国の場合、関税率を引き上げると経済厚生は悪化します
②大国の場合、自由貿易状態からあまり高くない関税率で関税を導入すると経済厚生は改善する可能性があります
③大国、小国に関わらす、「禁止的関税率」から関税率をわずかに“引き下げる“と経済厚生は改善します
$$
Welfare Decomposition\\
①Small Country \\
Δp^* = 0, t >0 \to Δz < 0 \\
⇒ΔW < 0 \\ \\②Big Country \\z > 0 , Δp^*< 0 , t=0 \\⇒ΔW > 0 \\ \\③from Prohibited Tariff Revel \\z=0 , t>0 , Δz > 0\\⇒ΔW > 0
$$
「関税率引き上げ」がもたらす影響は以下の通りです
まず、世界価格に影響を与えることのない
「小国」の仮定の場合、直面する世界価格は変わらないので(Δp*=0)輸入量は減少(Δz<0)します
したがって、効用は低下することになるのです
一方で、自国の経済活動が世界価格に影響を
与える「大国」の場合、輸入量は増加します(z>0)なお、自由貿易状態では関税はゼロです(t=0)
ここで、関税率導入により
直面する世界価格は低下することになるのです
よって、大国経済の厚生は改善されることになるのです
関税率と輸入国(大国)の経済厚生
一国のGDP関数を最大化させるような
t*の水準が、最適関税率となります
また、禁止的関税率とは、自給自足経済(autarky)の状態の経済厚生を下回ってしまうほど、高い水準の関税を賦課する
ということです📝
関税率引き上げと貿易均衡点
まずは、以下の図解をご覧ください
A国、B国間の貿易を対象として
それぞれのオファーカーブを導出することで
貿易均衡点の変化を図示しました
この図におけるインプリケーションは
以下の通りです
まずは、自由貿易均衡:e 点(t=0)から議論はスタートします
第1財の輸入国であるA国が、第1財にかかる関税率を引き上げるとA国のオファーカーブは縮小することになります
A国の関税率引き上げに伴って
貿易均衡点はB国のオファーカーブに沿って
原点方向に移動することを確認しましょう
あまり高くない関税率であれば
A国の経済厚生は自由貿易の場合よりも高くなることがわかります(u'の水準 > u )
しかし、十分に高い関税率を賦課したとなれば、A国の経済厚生は自由貿易の場合よりも
低くなることがわかりましたね
(u''の水準 < u )
したがって、A国の関税賦課によって
B国の経済厚生は、税率が高いほど
より悪化することが読み解けるのです
では、一国経済の経済厚生を最大化させるような「最適関税率」のもとでは、どのような貿易均衡点が実現するのでしょうか?
最適関税下の貿易均衡点に関する図解は、以下の通りです
A国の関税率引き上げに伴って
貿易均衡点はB国のオファーカーブに沿って
原点方向に移動することは、同じです
したがって、B国のオファーカーブ上で
A国の経済厚生が最大となるような点(e ^)を
貿易均衡点として実現できるような
関税率(=最適関税率)を導入することが
A国にとって最善となるのです
最適関税率のインプリケーション🌟
ここで「最適関税率」について
今一度より詳細に解説したいと思います
「最適関税率 optimal tariff rate」とは
貿易相手国からの報復的な関税引き上げがない場合に自国の経済厚生を最大にする関税率です
A国による最適関税率の下での貿易均衡点は「B国のオファーカーブとA国の貿易無差別曲線との接点」として特徴付けられることを抑えておきたいですね
最適関税率の導出における定式化
2財(1,2)、2国(A,B)から構成されるモデルにおいて、A国は第1財を輸入しているとします
ここで、従量税率を従価税率へと変換し、貿易均衡条件と考慮します
また、A国の経済厚生に対する要素分解を考慮した結果、A国の経済厚生がもうこれ以上増加することのない水準である最適関税率が以下の定式化として求められるのです
$$
Optimal Tariff Rate\\
\\\tau^A = \frac{1}{[\frac{p^*}{Z^B}\times{\frac{ΔZ^B}{Δp^*}]}}…(1)\\ \\---------\\
Country A : x_1^{IM} ,x_2^{EX} \\ \\Country B :x_1^{EX},x_2^{IM}\\ \\t^A= \tau^A \times{p^*}\\ \\
Trade Balance Condition\\
z^A+ z^B =0 \to Δz^A+Δz^B =0 \\ \\Welfare Decomposition\\
ΔU^A=-z^A Δp^* + \tau^A p^* Δz^A(=0)
$$
(1)式より、ある国(A国)の最適関税率は
貿易相手国(B国)の輸出供給の価格弾力性の逆数に等しい、ことがわかります
A国が、世界価格に影響を与える力の無い「小国」ならば、貿易相手国(=世界市場)の輸出供給の価格弾力性は無限大になります📝
よって、「小国」にとっての
最適関税率はゼロとなります
すなわち、小国にとっては
自由貿易が最適政策なのです🎊
最適関税論の問題点
私たちは、これまでメリットのみについて考えてきました
しかし、経済学を学ぶ上で、そのモデルや概念のデメリットまでしっかり学習してこそ、真の理解であると思います
よって、以下では最適関税論の問題点について考察します
まず、最適関税率の“最適性”は、輸入国(A国)の観点からのもので
あって、貿易相手国(B国)にとっては不利益となります
また、世界全体の国際貿易における効率性を阻害する可能性が大いに考えられるのです
また、最適関税率を正しく算出するためには貿易相手国のオファーカーブ全域にわたる情報が必要であり、これは高い情報費用が掛かることになりますよね
また、世界価格の操作可能性は現実的であるのか?という点にも疑念が残ります
この理由は、ある国が世界市場に対して「買い手独占」としての影響力を広範に及ぼすことは困難であるからです
なお、最適関税率を計算する際には
貿易相手国からの報復的措置がとられることは考慮されていないので、あくまで机上の空論になるのです💦
本日の解説は以上とします
最適関税論についてご理解いただけたら幸いです
またこのような貿易のニュースをもっと楽しく理解できるようになれば、きっと見える世界が広がるのではないでしょうか?🥺
なお、参考文献は以下の通りです📝
マガジンのご紹介🔔
こちらのマガジンにて
エッセンシャル経済学理論集、ならびに
【国際経済学🌏】の基礎理論をまとめています
今後、さらにコンテンツを拡充できるように努めて参りますので
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます📚
最後までご愛読いただき誠に有難うございます!
あくまで、私の見解や思ったことを
まとめさせていただいてますが
その点に関しまして、ご了承ください🙏
この投稿をみてくださった方が
ほんの小さな事でも学びがあった!
考え方の引き出しが増えた!
読書から学べることが多い!
などなど、プラスの収穫があったのであれば
大変嬉しく思いますし、投稿作成の冥利に尽きます!!
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