入院中に出会ったこどもたち
子どもの入院につきそう親の心境って、実は心臓が潰れそうな思いなんだけど、潰れちゃしょうがないから、とりあえずなんともないふりをして日々過ごす、というのが多かれ少なかれのところだと思います。
子ども病院のすごいところは、弱っているはずの子ども達に、いつも親が助けられてしまうということ。自分の子だけじゃなく、病院にいる全ての子どもの力強い生命力から、近くにいるだけで癒され元気がもらえてしまう。
そしてそこで働く看護師さんや先生も、もちろんそのパワーを十分に感じていて、実は子どもたちには頭が上がらない。。ということを理解して子ども達に接している。
子ども病院は色々な悲しみや思い、不満が複雑に絡み合い、混沌が渦巻くけど、常にどこかに無償の「与える」エネルギーが流れている。それにどれだけ助けられていたか、わかりません。
息子は産まれてから半年ごとに、心臓→口→心臓→口の順番で手術し、その間にカテーテル検査が2回あり、計6回入院していたのですが、入院のたびに新しく出会う子、ずっと入院生活をしている子など本当にいろいろな子に出合いました。
最初に入院した病棟には、心臓や内蔵の病気・疾患の子が集まっていました。その病棟にはその後4回お世話になりましたが、その間ずっと入院しているらしきある男の子がいました。期間だと2年間ほど。
その男の子は、お母さん似の大きな目をした小学校低学年の子で、院内学級に通い、帰ってくると大きな機械を使って毎日心臓の処置をしていました。
段々顔見知りになると、気さくに息子の名前を呼んで、「前も来たよね!」「アンパンマンすき?」とか、泣いていると「おなかへったかな?」とか声をかけてくれるようになりました。
多くを話したわけではないものの、その男の子が日々声をかけてくれたおかげで、息子だけでなく私もパッと明るい気持ちになり、ずいぶんと救われていました。
夜になるとベッドの上でお母さんとトランプをやったりボードゲームをして、昼間は看護師さん達に可愛がられたり、たまにしかられたりしながら、元気でかわいい姿にみんなが癒されていました。
ある日、入院病棟の入口に向かって看護師さんたちが騒然となっていました。視線の先で、その男の子が泣いて叫んでいました。
「いつまでここにいなきゃいけないんだー!」
「外に出せ!!」
「もうこんなところは嫌だー!!」
その子のお母さんや看護師さん達が10m位先で、これ以上近づけない、といった様子で立ち尽くしており、私も同じく動けなくなり、涙があふれました。点滴の本体が外れていたから、本当ならすぐ繋げないといけなかったと思うけども、パジャマ姿の彼の全身から、全員動けなくなるくらいの何かがほとばしっていました。
次の日、また病室の前で出会うと、少しニコッとして手を振ってくれました。いつだってそうして、息子にも、私にも、変わらず優しさを与えてくれてしまうのでした。
その後、彼の病棟が変わり、入院しても会うことが無くなりました。
私には、彼がどうか元気でいてくれますようにと、お祈りするしかできなくなりましたが、あの時叫んでる彼から感じた、大きな大きな生命力を、一生忘れないだろうと思います。