落ち込んだ気持ちを克服するための方法と心理的アプローチ
ミス、失敗、他者からの批判。気分が落ち込むことはいつでも起こります。
特に自己評価が低かったり不安定な人は、「失敗して落ち込んだ自分」を絶対視して引きずってしまいます。
落ち込みを引きずるのは、変えられない要素とショックを結び付けてしまうからです。
変えられる要素への対処行動を続ける中で、自分と周囲の変化を感じ取り、変えられた事実を成功体験に変えていきましょう。
1.落ち込んだ時に違いが出るのは行動・心理・感情
①行動:他の行動に取り掛かれるか
心が落ち込んだ時、心や思考ではなく行動に意識が向くかどうか、がポイントです。
行動とは、何か意味があるかどうか、はあまり関係ありません。
手足を動かすこと、場所を移動して環境を変えることでもOKです。
他の行動に取り掛かれることで、必要以上に落ちこむことを防止できます。
②心理:落ち込んだ原因を相対視出来るか
例えば仕事でミスをして上司から注意された時に、注意された事実やその原因だけを元にして自分を評価してしまうと、落ち込みが更に悪化します。
「相対視」とは、他の要素も含めて全体を見渡せることです。
落ち込みを絶対視してしまうと、他の良かった点や問題なかったことを全部忘れてしまいます。
自分には良いところや出来たことは何もない、という間違った思い込みに繋がります。
③感情:否定的な感情を肯定できるか
落ち込んでいる時にはあらゆるネガティブ感情が去来します。
恐怖、悲しみ、不安、怒り、後悔、恥ずかしさ。
これらは、感じないようにしようとすればするほど囚われます。蟻地獄のように深みにはまっていきます。
落ち込んでいるのだからネガティブになるのは当たり前、と自分で肯定できると、「感じないようにしなきゃ」という焦りから解放されて少しずつ気持ちが落ち着いていきます。
2.落ち込んだ気分から抜け出せなくなる仕組み
①その出来事だけが絶対の事実に見えてしまう
「目の前が真っ暗になる」「頭が真っ白になる」という比喩表現がありますが、強いショックを受けるとこれに近い体験をしたことがある人は多いと思います。
落ち込んだ気分とそれを引き起こした出来事で思考も感情も占拠されてしまいます。
そこまでは誰でも同じ経過を辿りますが、上述したような行動・心理・感情の違いによって落ち込みを悪化させてしまう場合があります。
自己評価が低い時です。
自分だからこんなに落ち込んでいるんだ(他の人なら違うはず)、と考えて、そこで納得してしまいます。
②自己批判的な意見を重視する
自己評価の低さのせいで落ち込みを受容すると、「落ち込んでいる状態」をキープしようとしてしまいます。
そのため、周囲の人から励まされたり慰められたり、「あなたのせいじゃないよ」と否定されても、その情報をスルーします。
「自分だから落ち込むのだ」という定義に当てはまる意見を優先します。
③自己批判が更に自己評価を下げる
自分を否定したり落ち込みを強化するような情報ばかり受け入れることで、更に自己評価が下がります。
否定的な評価だけを絶対視して、否定的な感情が「正しいもの」と誤解してしまい、何か他のことに取り掛かろうとする気力も奪われてしまいます。
3.【対策】次に活かせる意見だけを取り入れよう
①落ち込んだ理由を「変えられる」「変えられない」に仕訳ける
落ち込んでいる時に励ましてもらっても、すぐには元気になれないかもしれません。
どうしても自己否定的な情報に意識が集中してしまうなら、その情報を更に区別していきましょう。
ポイントは
自分で変えられる
自分では変えられない
か、です。
例えば年齢、人種、性別、体格、家族構成は変えられません。
しかし習慣、優先順位、関わる相手、判断基準などは変えられます。
変えられないものをを変えようとするとまた別の問題やストレスが生まれます。
変えられるものであれば、前向きに悩むことも誰かに相談することも出来ます。
②「変えられるもの」の中から「すぐできること」を1つ選ぶ
次に「変えられる」ものの中で何から手を付けるか、を決めましょう。
この時のポイントは「やりやすさ」です。
落ち込んでいる時はモチベーションもほぼゼロに近いです。そういう時に難易度の高いものに手を付けると、上手く進められないことでまた自己評価を下げてしまう恐れがあります。
すぐできる
今の(落ち込んだ)状態でも出来る
一人でできる
ものを選びましょう。
③取り組む→成功!
何から変えていくか、を決められたら、早速取り組んでみましょう。
この時のポイントは「元気になったら」を条件にしないことです。
「○○になったら」が、例えば時間や日付などならわかりやすいですが、「元気になった」と自分で判断できる人はほとんどいません。
多くは「気が付いたら元気になってた」です。
それまで何もしないでいることは、落ち込んだ気分を深堀してしまう悪循環を招く恐れがあります。
せっかく落ち込んだ状態でも出来るものを選んだのですから、今すぐ取り掛かりましょう。
小さくてもそれが成功体験です。
落ち込んでいる時に「出来た!」体験は特効薬です。
≪事例≫夜、友人と電話でケンカして「あなたが悪い」と言われた場合
心理:自分「にも」良くなかったところがあるかもしれない
↓
感情:あなたが悪い、と言われて悲しい。でも相手も悲しいからつい言ってしまったのかもしれない
↓
行動:他の人ならどうするのかな?(⇒相談する)
↓
ケンカを繰り返さないためにはどうすればいいだろう?
↓
【変えられないこと】
もうあの人とは関わらない
今後は相手の言い分に全面的に従う
4.落ち込んでいる時にやってはいけないこと 3つ
①一人で悩む
自分の感情が整理出来ないまま誰かに相談してしまうと、相手も話が理解できず混乱します。こちらもつい誰かに対して攻撃的になったり、必要以上に自己卑下してしまいます。
しかし何時間も何日も一人で悩み続けることは堂々巡りにしかなりません。
他者の意見は参考情報です。一人で悩み過ぎて材料不足になる前に、信頼できる人に相談しましょう。
②落ち込んだ自分を責める
落ち込んでしまう状況になっていることそのものを自分で責めると、二重の落ち込みになります。
落ち込んだ大元の状況が改善されても、「あんなことで落ち込む自分は情けない」と考えてしまうことで、完全復活できなくなります。
ショックなこと、辛いことがあれば落ち込むのが人間です。当たり前の反応をしているだけなのですから、責める必要は無いことを思い出しましょう。
③SNS
SNSはとても便利です。しかし不特定多数の人の意見が入り乱れて入ってくるので、自分のメンタルが不安定な時は要注意です。
何か一つでも改善策が思いつくまではSNSには接しないほうが無難です。
5.落ち込んで一番辛いのは?→自分
①感情受容は5段階
ショックな出来事があった時、人は5つの段階を経て自分の感情を処理します。
抵抗→耐える→探索→許す→消化する、です。
最初は出来事に対しても、それに付随して発生した自分の感情にも抵抗します。ここが一番辛く、人によっては時間がかかります。耐える期間が続きます。
抵抗しつつ「抵抗しきれない」ことを悟ると、抵抗以外の手段を取ります。それが「探索」です。「どうすればいいか」を考え始めます。感情に対して「在っていい」と許容することが出来ます。
最終的に、自分で受け入れられるような「見方」が出来るようになり、一つの経験として消化することが出来ます。
②反省や自己批判は後回し
自己評価が低い人は、何かネガティブな状況になるとその原因を自分に探す傾向が強いです。
反省や自己批判自体は間違っていないのですが、タイミングが重要です。
落ち込んだメンタルは視野を狭くします。他の要素が見えない状態で反省を続けると、自分を追い詰めるだけの結果になります。
メンタルが回復し、落ち込んだ事実以外も広く検討材料に入れることが出来るようになってから反省しましょう。
③元気になることを自分に押し付けない
ポジティブ思考とか自己肯定感を高めるということは確かに大事な心掛けです。
しかしいつでもどこでも24時間365日ポジティブでいる人などいません。波があって当然ですし、あるべきです。
今元気になりたくても元気になれない、その相反する状態は辛いですが、「どっちつかず」な不安定さの中にい続けられることもまた強さです。
今元気じゃなくても、いずれ元気になれる、と自分を信じられることが必要です。
6.落ち込んだ気分を回復させる、すぐできること3選
①副交感神経ケア
副交感神経は、リラックスを促進する自律神経です。
落ち込んだ状態は危機回避に失敗した状態ですから、全身が緊張しています。
心の落ち込みはすぐに解消出来ませんが、身体のケアはすぐに取り組むことが出来ます。
深呼吸
ストレッチ
水分補給
を試してください。
②セロトニンケア
セロトニンが正常に分泌されると、気分が安定して感情をコントロールできるようになります。
セロトニンケアには
散歩
15分の昼寝
日光浴
を試してください。
③オキシトシンケア
オキシトシンとは「愛情ホルモン」と呼ばれ、他者と接することで分泌が促進されます。
他者への信頼感を高め、愛情や絆を形成する助けになります。
落ち込んでいる時に他者へ愛情を感じることが出来ると、「自分だけ」という孤独感を解消できます。
ハグ(家族、パートナー、ぬいぐるみ)
マッサージ
動物の動画
などで促進されます。
7.まとめ
落ち込んだ時は、行動・心理・感情にその後の違いが現れる
落ち込んだ気分から抜け出せなくなるのは「落ち込んだ状態が自分にとって正しい状態」と思い込んでしまうせい
批判的意見も思考も「次に活かせるもの」だけ取り入れよう
落ち込んだ時にやってはいけないことは「一人で悩む」「自分を責める」「SNS」
落ち込んで一番辛いのは自分であることを忘れない
すぐできる対処法:副交感神経・セロトニン・オキシトシンのケア
心が落ち込んだ時、中々立ち直れず引きずってしまう人は変えられないものにこだわって行き詰ります。
変えられないものを変えるより、変えられるものを変えましょう。
変えられるものは具体的な対処行動を思いつけます。思いついたら実行しましょう
その対処行動に取り組んでいる間に、周囲の状況や環境も変わります。そして周りにいる人からの反応も変化します。
その変化をマインドフルに感じ取りましょう。
そうすれば、最初に抱え込んだ「絶対的な落ち込み」は「絶対不変のものじゃない」と実感できます。
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