不登校と中学受験(12)
志望校合格は目標にしてはいけない
絶対に志望校への合格を目標にしてはいけないことをわかっていただけないご家族がいらっしゃいます。
そもそも、なぜ、その中学を受験する、させる、のですか?
何を基準に受験する中学校を考えるのですか?
偏差値や学校名、大学合格実績だけで選んでいませんか?
その中学を受験するのはなぜか、その学校に通うことになれば、学力以外の部分で、ワクワクするのか、楽しい中学校・高校生活が送れそうなのかなどを、志望校選びの基準にしてほしいと思うのです。
そうすると、その中学校に合格した後、こんなことをしたい、ということが浮かんできて、合格した後、学校生活を楽しむことを目標に、受験勉強を頑張れるのです。
ところが、合格することを目標にしてしまうと、志望校には届かないとわかっていても、ご家族も本人も、たとえダメでも受けたいのです。
「ひょっとして・・・」とほとんど望みのない、最初から負け戦と分かっている戦いでも挑んでしまうのです。
そこには、ただ偏差値の高い中学、単純な憧れだけの受験になってしまいます。
武士の戦ではありませんから、見事討死がわかっているならば、潔く志望校を変えてほしいと思います。
なぜなら、作らなくてすむ心の傷を、わざわざ作ってしまうからなのです。
届かない、合格の可能性がほとんどない、とわかっていても受けたい、受けさせたい気持ちは、長年、現場にいるので、十分にわかるのです。
ですから、100歩譲って、記念受験でも構わないですが、その学校の教育の良いところ、本人にあうかどうかや、学校の教育方針、雰囲気などをしっかりと見て、こういう学校に行きたいよね?と親子で話せるようにしておいてください。
その時に、偏差値を基準にし、合格を目標にしていると、成績が届かないから志望校を変えるというのは、志望校を「下げる」ということになり、自分はダメだというレッテルは貼られてしまった気持ちになるのです。
そんな気持ちで受験をすれば、変更した受験校も不合格になってしまうことがあるのです。
偏差値はあくまで指標としてお考えいただき、お子さんにどんな教育を受けさせたいのか、どんな学校生活を送ってほしいと願っているのかなどを基準にして、お子さんとどこの中学校がいいのかを一緒に考えておけば、志望校の変更や、第二志望校、第三志望校を決めるときでも、お子さんは入学後の学校生活を楽しみんして、入試に向けて頑張れるのです。
偏差値が高い学校を目指すことがいいとは限りません。
なぜなら、子どもにあわずに不登校になり、辞めてしまえば、何にもならないのです。
偏差値の高い学校に行きたい気持ちもわかります。
だからこそ、偏差値だけで志望校を決めることはしないでほしいのです。
進学塾だけでなく、不登校の子ども達の通うフリースクールでも子ども達をみてきて、中学受験で最難関中学に合格しても、「あんな中学に通いたくなかった」と言って、その学校を不登校になった子ども達をたくさん見てきた立場として、はっきりと言えるのです。
「偏差値の高い学校が良い学校ではない。お子さんが、心から学校生活を楽しめて、心身ともに成長できる学校が、そのお子さんにとっての良い学校である。」
もう一つ、考えておかないといけないのは、入学後の学習のことなのです。
勉強がわからない
みんなについていけない
子どものこの苦しみ、辛さははかり知れないものがあるのです。
今までは塾の中だけだったのが、これからは学校が塾と同じ、常に競争の場になり、そこに勝ち続けないといけない、最低でも対等でなければならないと子ども達は思うのです。
これは、たまらなく、辛く苦しいと感じるのです。
このことも、志望校選びの大切な要素としてお考えいただきたいと思います。
その時に、実は、中学受験大手の進学塾は、学校のことをあまり知らないことが多いのです。
中学校の中のことを、最難関中学だったり、難関私立大学の附属中学校だったりについては、ある程度、は知っていても、それ以外の学校について、知っておかなければいけないことを、意外と知らないのです。
大手塾が学校の中の情報を持っているとは限りません。担当講師ですら、学校の偏差値以外のことをあまり知らないことが多いのです。
そのことには十分に注意してほしいと思います。
谷 圭祐
https://ktani.info
進学塾TMC池田 講師(数学・理科担当)
パーソナルアカデミー カウンセラー、講師