発達障がいの子どもの不登校(6)
お母様はお子さんの発達障がいを受け入れられますか?
今から5年くらい前のことです。
Kくんは、よくお母様とか学校の先生から”落ち着きがない”と言われていたと、話してくれたことがあります。
中学校に進学したのですが、その頃から、よく落ち着きがない、と言われていて、確かに教室でじっと座っていることが少なかったようです。
そのうちに、学校に行けない日が多くなり、不登校になってしまってフリースクールに見学に来ました。
見学・面談に来たときに、スタッフが対応しているのを近くで聞いていると、落ち着きがないなあという感じでした。
が、しかし、面談の途中で、他の生徒の様子とかを見に出てきた彼をじっと見ていた時に、落ち着きがないのは、もともとなのではなくて、別の要因があるのではと感じました。
しばらく、体験入会ということで、お試しに来てくれていました。
彼が来るたびに見ていると、落ち着きがないというよりは、見通しが立たず、不安がものすごく強いのだということに私が気がついたのです。
そこで、特別支援教育士の先生と一緒にKくんと話をしていて、彼に簡易検査をしてみようということを思いつき、お母様にもお伝えして、別の日に簡易検査をすることになったのです。
Kくんも勉強もしたいということだったので、簡易検査によって、より特性がはっきりわかるだろうということで、これまで医療機関でWISC、K式などの検査、アセスメントをたくさんして来られているこの特別支援教育士の先生に簡易検査をしていただいたところ、はっきりとした特性がわかってきました。
そのことをお母様にお伝えする必要があり、面談をさせていただいたのですが、発達障がいの可能性があることについては、お母様もずっと意識の中にあったので、やはりそうか、という思いだったとのことでした。
具体的な対応方法や勉強のこと、家庭でのことについて、いろいろとお話をさせていただき、ご納得いただけたと思っていたのです。
そこで、WISCなどの検査も一度行った方がいいということをお伝えしたところ、それは必要ないとはっきりと断られたのです。
お母様も何らかの発達の特性がはっきりあることまでは、生育歴、日頃の行動からも理解をされているのですが、正式な診断は必要ないとおっしゃるのです。
お母様がそうおっしゃるのであれば、それ以上はどうこう言えることではありませんし、実際に療育的なことをしながら、学習をしていくこともできるので、私としては、無理強いする必要はないと思いましたから、それ以上はお勧めしませんでした。
必要だとわかっていながら、実際には検査、診断は求めない。
そこには、子どもが発達障がいだとはっきりと診断されたくない、認めたくない、という思いがあるのではないかと思います。
なぜそう思われるのかはわかりませんが、認めたくない思いというのがあることはわかります。
ここに大きな壁があるのです。
発達障がいは、病気だとか障害とかではなく、脳の使い方の違いで、左利きと右利きの違いのようなものだと、私は思っています。
ただ、その時に、多くの人ができるルールやマナーを守れなかったり、違う方法でやろうとしたりすることがあるので、それについて、同じようにしないと困ることがあるので、それは身につけた方がいいだろうと思うのです。
そうすることで生きやすくなり、子ども達で言えば、学校生活が楽に送れる可能性がいっぱいあるのです。
そこを上手に伝えてあげるためにも、検査をして、何ができて、どういうことが苦手かがわかると、それは生きていきやすくするための大きな材料だと思うのですが、「はっきりする」「診断がおりる」ということに、ご家族が向き合えないでいるのです。
学校という場で、支援を受け、多くの人の中で、自分がみんなと同じようにはできなくていいけど、生きやすくするために、頭で理解をし、一応、同じような感じではできて、みんなと一緒に過ごすことができることが、発達障がいや同じような特性を持つ子ども達には、必要なことだと思うのです。
ところが検査、診断を受けることによって、自分のできること、苦手なことがわかるのに、検査を受けないことによって、必要な療育や支援を受けられないまま、不登校になり、自宅にいるままになり、結果的に、生きる知恵を身につけられないことになってしまっているように思うのです。
お母様だけでなく、ご家族が特性があることを受け止め、検査を受け診断をもらうことは、障害者であるというレッテルを貼ることではないのだと、一番理解をしてほしいと思うのです。
検査・診断は、必ずしも必要だとは限りません。必要な場合があるというだけなのです。
その検査・診断も、ご本人が生きる知恵を身につけるために、本人の状況を理解する一つの手段でしかないのです。そのことをご理解いただきたいと思うのです。
そうすることで、発達障がいの子ども達が不登校から元気になり、学校復帰や、新たな道に進むことができる材料になるのです。
そのためにも、まず、ご家族がしっかりと受け止めてほしいと私は思います。
(つづく)
谷 圭祐
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