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【読書感想文】小学6年生の女の子が殺処分について書いた作文を絵本にした作品『78円の命』

愛知県豊橋市の当時小学6年生だった女の子が動物の殺処分について書いた作文が絵本化された作品。

小学6年生の女の子が近所で可愛がっていた野良猫を通じて「保健所」という存在を知り、犬や猫が殺処分されている現実を目の当たりにして大きなショックを受けたことから、命や命の尊さについて作文を書くこととなった。

動物の殺処分について僕が知ったのは、記憶が定かではないが大人になってからだったと思う。僕自身、犬や猫をはじめ動物全般が好きなので、殺処分が行われていること自体がすごくショックだった。

そして僕はカナダに行っていた時に、日本とカナダの動物の扱い方の違いに驚いた。

カナダでは、そもそもペットショップでペットを売っていないのだ。売っていいのはペットフードやペット用品だけで、ペットショップでペットを売るということがそもそも法律で禁止されている。

カナダでペットを飼う場合、保護施設にいる動物を迎え入れるか、ブリーダーから直接買う必要があり、日本のように誰でもお金を払えば買えるものではない。

保護施設でも適切な飼い主であるかどうかを見るための面接があったり、収入や家庭環境等の厳正な審査があってそれにパスした人にのみ動物が譲渡される。ブリーダーから買う場合も、ブリーダー自身が「この人になら売っていい」と思える人物にしか売らない場合がほとんどで、動物を非常に大切に丁寧に扱っていることがよくわかる。

一方で日本ではどうか。殺処分自体は年々減少傾向にあるが、動物を「物」のように扱っている人が時折いて、信じられないような気持ちになる。

それはやはり、誰でもお金を出せば買えるからではないかとも思う。そもそも商売として繁殖させたりしている時点で論外なのだが、殺処分が0になっていない国がペットを売ることを許可しているのは順序としておかしいと思わざるを得ない。

殺処分が0になってから、ペットを売るのであればまだわからないでもないが、現状として誰かに飼ってもらえれば助かる命があるのに、当たり前のようにペットを売ることを許可すれば、助かる命も助からないではないか。

僕が一番悲しかったのは、この話を知っていた人、つまりは保護施設に犬猫がいて誰かに飼われないと殺処分になってしまう現状を知っていた人が、
「猫をペットショップで買ったよー」なんて話してきたことだ。

知らずに買うのならまだしも、知っているのになぜ……?
とショックを隠しきれなかった。すでに縁が切れた人なのでとやかくは言わないが、動物が好きな人たちは動物を「命」と「家族」と思っているが、そうでもない人たちは「物」と思っているのだということを痛感させられた出来事だった。

さて、ネガティヴなことばかり書いてしまったが、僕自身も殺処分の現状を知らなければペットショップで購入していたかもしれないわけで、ペットショップで購入した人が悪いわけでは決してないのだ。

とにかく現状を知れば「買うのではなく保護施設から迎え入れよう」と動いてくれる人が多いのも事実で、本書はまさにそのために絵本化されたと言っても過言ではない。この絵本の値段が極端に安いのも、商売のためではなく普及させるためという思いを感じる。

ぜひ一人にでも多くの方に読んでいただけたらと思う。命は売り物じゃない。

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