忙しない現代社会に必要な小説 ミヒャエル・エンデ『モモ』
ドイツの作家、ミヒャエル・エンデによって、今からおよそ50年ほど前に書かれた児童文学作品。半世紀前に書かれた児童文学作品だが、現代の忙しない社会を予見するかのように風刺しており、今の時代だからこそ読まれるべき作品である。
『モモ』のあらすじ
孤児の少女のモモには不思議な力があった。それは人の話を「聞く」力で、モモが何をしなくてもモモに話をしていると、みんなよいことを思いついたり悩みがなくなったりするのだ。そんなある日、モモの周りで灰色の男たちが人々の時間を盗んでいることが知られていく……、というお話。
灰色の男たちは、「時間銀行」に時間を預ければ将来それが増えて返ってくると説明し、人々から時間を盗んでいく。
たとえばお客さんと話をしながら楽しく髪の毛をきっていた理髪師に、話などせずにさっさと髪を切るように仕向けると、理髪師は時間を節約するために話をせずにさっと仕事をするようになる。
一見、効率が上がり良くなったかのようにも思えるが、今まで楽しそうに仕事をしていた理髪師は、不機嫌になり、くたびれて、怒りっぽくなったのだ。
というように、街の人々がどんどんそういう風になっていく。ひとり、またひとりと仕事の効率は上がりお金は稼ぐが、精神的に余裕がない人間になっていくのだ。
これはまさに、仕事に追われ時間がなく不機嫌でくたびれて怒りっぽい人ばかりになってしまった現代社会そのものだと言える。
便利さや効率の良さと引き換えに、失ったものがあまりに多すぎるのではないか。働くために生きているような人々が多過ぎはしないか。
現代社会へ警鐘を鳴らす『モモ』は、今こそ読まれなければならない。